史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

人間の屑

その男は知り得る限り最低な人間の屑。


もともとは腕のいい漁師であったが、
大のギャンブル狂でもあった。


最初は朝暗い内に漁に出て、
漁から帰って来るとパチンコ店に向かう、
それぐらいのものであったが、
やがてどんどん夢中になり、
見境がなくなり嵌っていく。


そのうち、私財をすべてギャンブルに費やし、
多額の借金を抱えるようになるが、
それでもギャンブルをやめることは出来なかった。


ただでさえ借金を返さなくてはならないのに、
それでもまだパチンコが
やりたくてやりたくて仕方なく、
ついには家を売り、船も売った。


それでもまだ足りずに、
しまいには嫁をだまして売り飛ばして、
風俗に沈める。


さらにはまだ幼い娘を
裏社会の極秘ルートで売り飛ばした。


まさに屑中の屑。
典型的なギャンブル中毒であり、依存症候群。


-


ついに売る物が何もなくなり、途方に暮れ
公園でホームレス生活をしている男の前に、
白いタキシードに白いマントを羽織った
風変りな恰好をした初老の紳士が現れる。


「何かお困りのようですね、
是非、お力にならせてください」


男はギャンブルをする金を少しぐらい
老人に恵んで貰えるのではないかと思い、
事情を話してみる。


「素晴らしい、人間何かひとつのことに
そこまで夢中になれるものではありませんよ。
是非、我々にあなたの夢のお手伝いさせてください」


「その代わりと言ってはなんですが、
我々へのご協力をお願い出来ないでしょうか?」


そうして異世界で
改造手術を受けることになった屑男。


異世界で魔神となった男は、任務を果たしつつも
人間世界でパチンコ三昧の日々を送っている。


所持金が無くなると、
人間世界の銀行や宝石店を襲っては、
その金をパチンコの軍資金にする。
男にとっては金が目的なのではなく、
キャンブルそのものが目的なのだろう。


-


そんな男に人間世界での
髑髏スカル討伐命令が下った。


男は相変わらずパチンコを打っており、
その日は大当たりだったようで
いつも以上にパチンコに夢中になっている。


「お前が魔神か?」


横から誰かが話かけて来ているが、
男はパチンコ台に釘付けで見入っており、
そちらを見ることなく返事をする。


「あぁ、そうだよ、
あれだろ、あんた魔王軍の人だろ、
わかってる、わかってるって、
これ打ち終わったら、髑髏っての倒しに行くから、
今すごいいいとこなんだよね……」


バァァン!


まるで何か撃たれたかのような音ともともに、
パチンコ店の店内を何かボールのようなものが、
物凄い勢いで転がっていく。


キャァァァァァ!


壁にぶつかり床に転げ落ちたのは男の生首。


「処刑、完了」


どこかでかすかに声がした。


男がいたパチンコ台の前には、
首のない男の体が
動くことも倒れることもなく座っている、
血しぶきを上げながら。
そして、その手はずっと
パチンコ台のハンドルを握ったままだった。











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