史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

赤いドレスの女

超高層ビルにある
美しい夜景が見える高級レストラン。
全面ガラス張りの窓の向こうには、
街のネオンがきらめいている。


「いやぁ、今日はいろいろありましてね」


鳴門なるとは言っていた通り、デートの真っ最中。
この場にふさわしい背中が大きく開いた
赤いナイトドレスを着た妖艶で美しい女。


「弁護士のお仕事で大変ですものね」


ワイングラスを片手に女は微笑む。


「今はお仕事は忘れて、楽しみましょ」


「乾杯!」


鳴門と女はグラスを合わせ、ワインを口にする。


女とスマートに歓談し、
ワインを何度も口に運ぶ鳴門。


しかし、しばらくすると体は痺れ、
眩暈がし、吐き気を催すようになる。


「大丈夫ですか?」


「ええ、大丈夫です」


鳴門はそう言ったものの、
体の痺れ、眩暈、吐き気などの
症状は酷くなるばかり。


「本当に大丈夫ですか?」


我慢する鳴門だが、


「だ、たいじょうぶ……」


上手く呂律ろれつが回らなくなっている。


「ならよかった、
本当によかった、
私の毒があなたに効いているようで」


女は微笑みながら本性を現す。


「私が魔神・髑髏スカル用につくった毒が効くのか、
本当に冷や冷やしていたのよ。
普通ならとっくに死んでいる筈なんだけどね」


「でもあなたが
噂通りに女に弱くて、本当に助かったわ。
まさかこんなに簡単にあなたを倒せるとは
思ってなかったもの、うふふ」


「裏切り者には死を。
今までは少し甘く見ていたみたいだけど、
遂にあなた達には
本格的に刺客が送り込まれることになったのよ」


「今度ばかりは魔王様も
本当にお怒りなのよ、わかるでしょ?」


「だって、タケシに続いて、
あなたまでもなのよ?」


「有栖川博士の設計にミスがあるか、
それとも博士が残した遺伝子操作技術の中に
故意に我々を裏切るような仕掛けが
隠されているんじゃないかという話になってるのよ。
究極魔神の計画はこれで頓挫もしくは凍結かしらね」


鳴門は身動きが取れず、
遠のく意識の中で女の声を聞いていた。


女はすぐにとどめを刺さずに、
完全に毒が回って動かなくなるのをじっと待っている。


まるで世間話をしているかのように、
魔王軍の話をしながら。




通常であれば髑髏に毒は効かない。
効いたとしても瞬時に血清や抗体が
体内で生み出され自動的に無効化されていく。
すでに毒に侵食されている箇所は、
再生能力で毒に侵されていない状態に再生される。


有栖川博士はどのような状況にも、
体が自動で完全に対処出来るよう髑髏を設計していた。


だが今回髑髏専用につくられた毒は
毒無効化や再生機能を著しく低下させる効力があり
すぐに回復することは見込めず、
しばらくの時間が必要だった。


「そろそろ、いい頃かしらね」


女は座っていた椅子から立ち上がる。


「うふふ……」


なんとか体を動かそうとする鳴門だが、
ぴくりとも動くことが出来ない。
むしろ意識がどんどん遠のいて行く。


『今日一日で三回目とか、
本当に勘弁してよ、もう』













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