史上最凶の通り魔、異世界に転移す

ウロノロムロ

有栖川博士

有栖川博士は元々タケシと同じ人間世界の住人であり、
二十歳にして、医学、生物学、遺伝子工学と言った
あらゆる分野を網羅する天才として
世の中から注目を集め逸材と呼ばれていた。


しかし、五十年前
タケシと同様に魔王の手先により拉致され、
異世界へと連れて来られる。


異世界の魔王は、究極の魔神を創り上げるべく、
様々な手段を講じていたが、どれもことごとく
失敗に終わり成果を得ることが出来ないでいた。


現状を打破すべく魔王は、
自らが住む世界以外の別世界の知識や技術を導入することで
魔神を誕生させることを目論み、
その白羽の矢が博士に立てられる。


異世界に連れて来られ最初は困惑をしていた博士であったが、
未知なる異世界の生命や知識、
技術は博士の知的好奇心を大いに刺激し、
やがて魔王の命ずるまま魔神創造に着手することに。


当初、魔物を使い実験を試みる博士だったが、
全く見込みが立たない状態が続く。


だが、異世界での肉体強化術が、
人間世界で言うところの
遺伝子情報を書き換えているという事実をつきとめた時、
博士に転機が訪れた。
博士はこの術を応用し、
遺伝子情報を自由自在に書き換えられる
新しい技術を生み出す。


中でもこちらの世界で戦闘に欠かせない魔法や魔術、
これを無効化する魔力キャンセラーを
遺伝子レベルに刻み込むことで研究は大きく進展し、
後は如何に物理攻撃に耐えるか、物理攻撃力を上げるか、
そこに心血が注がれる。


しかし、異世界の住人では生命エネルギーが弱く、
尚且つ存在自体に何かしら魔力の影響を受けているため、
魔力キャンセラーを組み込むと
これに耐えられる者がいなかった。


そこで魔王は人間世界から
生命エネルギーが満ち溢れる者達を拉致し、
これを人体実験の材料としはじめる。


博士は同郷の人間を実験体にすることに
罪悪感を感じたものの、
異世界での生活は博士の人間としての
倫理観を壊すには充分な程狂気に満ちていたし、
感覚を麻痺させるだけの充分な年月も経っていた。


その後、博士は次々と人造魔神を創り上げることに成功、
さらに再生能力や、
敵の血から敵の力を取り込む能力を組み込むことで、
究極の魔神誕生はもう目前というところまで迫っていた。


その一方で博士はその褒美として、
表社会で生きることを魔王に許され爵位を与えられる。
博士は改造魔神の実験データを
異世界住人達の医療に応用した研究成果を次々と発表し、
名声を得、爵位を上げる。
そして当時まだ十九歳であった
名門貴族の令嬢を妻に娶り、娘をもうけた。


平穏な暮らしを知り、博士は
今まで自分が犯して来たことの罪深さに改めて震えたが、
今度は魔王が妻子の命を人質にして博士を脅し、
その後も人造魔神の研究を強制的に続けさせる。


そして、タケシという最高の素材に
これまでの研究の全てを注ぎ込んで、
究極の魔神を完成させたが、
そのあまりに強大過ぎる力に博士は再び震えことになる。













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