非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

一瞬一瞬の奇跡

時を同じくして、
星空の下で博士は
元ゾンビ兵『Bros-408』であるシンヤに
今回の出来事の一部始終を
根堀り葉堀り聞き出していた。


博士の知的好奇心の探究は
未だ留まることを知らない。


「なんだって!?


君はこの世界の人類ではじめて、
元の体に元の魂を戻して
完全な蘇生を果たしたって言うのかい?


しかもそれであの黒い巨大兵器を
動かしたって言うのかい?」


博士は少々大袈裟なぐらいの
リアクションで驚いている。


事実シンヤは、そのプロセスは
変則的ではあったにせよ、
以前と同じ魂と肉体をもって、
完全に蘇生した、
人類初の人間ということになった。


そして魂を形づくり
定着させることが出来る者として、
人類の次のステージに
進んだ者でもある。


黒巨兵くろきょへいに関しても、
防衛軍基地の電力が落ちていたため、
およそ何のデータも取れておらず、
何故彼にしか動かせないのか、
防衛軍は把握できてはいなかった。
正直今防衛軍はサバイバルに必死なのだ。


「だからだよ!
だから僕は君達三次元人を
見続けることをやめられないんだっ!」


高次元人というのは
悟りを開いた
仙人のようなものであり、
だからこそ刺激や驚きに
飢えているのかもしれない。




「それで何故君は、まだ弟に
君の話をしていないんだい?」


「弟はまだ
自分に対するわだかまりを
完全には乗り越えて
はいないようなんです。


だから自分はもう少し
ゾンビ兵として
弟を見守っていようかと思いまして」


博士はまた驚いて、
興味津々と言う目で
シンヤのことを見ている。


「わお、そんな考え方があるなんて、
僕には全く思いもよらないことだよ」


「君達三次元人には
本当に興味が尽きないよ、僕は」


博士はしみじみと頷く。


「僕は
君達にこのまま滅んで欲しくはないんだよ。


百億以上の個体がいる種族でありながら、
どれひとつとして同じ個体が存在しない無二。


その個々の内面は一刻一刻変化し続け、
はるかに深く、
まるで一つの宇宙をも凌駕するような情報量。


この世界で発生している
音だけでもとてつもなく無限、
視覚情報と合わせると最早際限がない。


この世界は一瞬たりとも全く同じ瞬間がない。


僕から見ると君達は一人一人が奇跡であり、
この世界の一瞬一瞬が奇跡のようなものだよ。


研究者の僕からしてみたら、
君達と君達のこの世界に、
僕の興味は尽きることがないよ。」


博士はもう一度繰り返した。


「君達にはこのまま滅んで欲しくはない。


この三次元世界はとても素晴らしいからね。


そして、この三次元世界の女性は
最高に素晴らしいからね。


特に僕のハニーちゃん達は至高だよ。
君達この世界の住人が物質文明に執着し、
依存し続けたくなる気持ちもよくわかるよ。」




博士と元ゾンビ兵シンヤは
真っ暗になった東京の
夜空に輝く星々を見上げる。











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