非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

普通の地球防衛軍

東京のライフラインが麻痺し、
車や電気などが使えなくなって、
皮肉なことに夜空の星が
綺麗に見えるようになっていた。


薪を燃やし火の番をしている
天野と石動いするぎ


この生活がなんとかなっているのも
石動が戦場で培ったサバイバル術を
指南してくれているのが大きい。


「さすが、
ジャングルや中東で
サバイバルして来ただけあるな」


「まぁな、でもまさか
東京でサバイバルすることになるとは
思ってなかったけどな」


天野は美しい星空を見上げ、
自分が感じたことを
そのまま石動に話してみた。


「正直ちょっと意外なんだよ。


こういうサバイバルみたいな
状況になって、
もっと暴動とか
水や食べ物の奪い合いとか
そういういざこざが
起こるもんだと思ってた。


力で支配するとか
悪知恵が働く奴が得をするとか
弱い者が泣きをみるとか。


いや以前だったら
そうなっていたんじゃないか
と今でも思っているんだ。


俺が初めてここに来た頃に比べたら
明らかにみんな変わったように思うんだ」


石動は薪をくべる。


「まぁ、ゾンビやら魚人やら
ドラゴンやら幽霊やら、その他もろもろ
いろんな人間以外の奴らと暮らしてみて、
人間なんて小せえなとか、
この狭い日本の社会で
つまはじきにされたところで
それが小せえことだって
気づいたんじゃねえかな」


「あと、
子供の影響もデカいんじゃねえかな
まぁあれは反則だわ
みんなで家族ごっこしてたから
情が移っちまったってことじゃねえかな」


「それでこの先戦っていけると思うか?」


みんなが以前と
変わってしまったことで、
これまでのように
戦えなくなることを
天野は懸念していた。


みんなが全うな人間になったのならば、
戦争などやりたいと思うだろうか。


戦争などはどこか少し狂っているとか、
感覚が麻痺していないと
出来るようなものではない、
天野は今でもそう思っている。


「どうだろうな
牙を抜かれて、
骨抜きになって
そんなんで戦場で
戦えるのかってのは確かにある」


「それでも、あいつらみんな
その気になっちまってるからな」


「社会からつまはじきにされて
居場所もなくて、
一人で日陰歩いてた奴らが、


居場所貰って
世の中から必要とされて
いっちょ前に戦って
子供達がら尊敬されて
まるで自分が正義の味方、
ヒーローになったみたいな気分で
いやがるからな、最近


仲間のためとか、子供達のためとか
血迷って、変な気でも起こすんじゃねぁかな」


「なんだ、それじゃあまるで
普通の地球防衛軍みたいじゃないか」


非人道的だった筈の地球防衛軍が、
まるで普通の地球防衛軍みたいなことに
なってしまっているのだ、
石動の話を聞いて
天野はつい笑ってしまった。


「でも、子供達はいつまでも
ここに置いておく訳にはいかないな」


「そりゃ、そうなるわな」


それからしばらく
夜空に輝く星の美しさに
天野は見惚れた。













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