非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

黒巨兵、起動

このかってない大ピンチ、
一大事に姿を見せぬ
進士司令官と博士。


二人は本部の地下深く、
防衛軍の動かせぬ最終兵器
と呼ばれている
巨大ロボット像のもとに居た。


いつ崩落して、
地中深く生き埋められるか
わからない状況であったが、
進士は己の天命を信じている。
ここで死ぬ訳がないと。


「これが動かせるかも
しれないんですか?」


非常用の懐中電灯で
巨大ロボット像を照らす進士。


「そうなんだよ、ここ最近
時々反応があったらしんだけどね」


「操縦者が目覚めたのかもしれないね」


博士の言葉と同時に
周囲は激しく揺れはじめ、
危険を察知した博士は
進士を連れ瞬間移動で脱出する。


-


地中深くから
地響きが地上まで伝わり、
その振動が段々と強くなって来ている。


地中からまたもや敵襲なのか、
それともこんな時に大地震なのか、
地上の者達は戦々恐々とするしかない。


敵襲ではなかったとしても
このような時に災害というのは
もはや収拾がつかなくなってしまう。


天野は最悪の事態を危惧する。




地中からの振動と轟音は
ますます激しくなって行く。


というよりは何かが
地中から近付いて来ている。


そう思った瞬間、
何かが爆発でもしたかのように、
地上の一部、その地面が吹き飛ぶ。




地上に開いた大きな穴、
そこから飛び出し来る
巨大な手。


地面の上に手を掛けると、
続いて穴から
その大きな上半身が
上がって来た。


「敵襲か!?」


身構える防衛軍の面々であったが、
天野はそれを知っていた。


「動いたのか!? あれが」


地中深くにある
地球防衛軍の最終兵器である筈の
巨大ロボット像。


「ほほほっ、敵ではないよ」


瞬時に地上に戻って来ていた
進士司令官と博士は兵を制した。




地上に立ち上がる
全長百メートルの巨大ロボット像。


いやもう既に動いているのだから
像ではない。


黒巨兵くろきょへい


防衛軍のメンバー達は
その巨神を遥かに見上げる。


黒巨兵は
ゆっくりとその巨体を動かし
振動と土煙を起こしながら歩を進めると、
トモヤと一緒にいる
ゾンビ兵『Bros-408』の前で止まった。


いや、もう彼は
魂を形づくり定着させることに成功した
シンヤであったが。


-


海底王国との戦いで
戦死したシンヤ、
その魂は肉体を離れ、
微かと言える程小さく
消滅寸前の危機にあったが、
引きこもりである弟のことが
未練となって辛うじて
この世界に留まっていた。


その後、両親が亡くなり、
ますます未練が強くなったシンヤは、
弟の元にバイオロイドとして
届けられた元の自分の肉体でもある
ゾンビ兵に再び憑依を果たす。


しかし消滅寸前まで小さくなった
彼の魂が元に戻るまでには
相当な時間が必要だった。


そしてトモヤとの
つながり無くしては
魂を元の状態に修復することは
到底出来なかった。


トモヤの脳波と同調する度に、
トモヤの音声で呼び掛けられる度に、
彼の魂は時間を掛けて
少しずつ修復し続けていく。


そしてようやく彼は
魂を形づくり
定着させることが出来る者、
人類の次のステージに進んだ者として、
完全復活を果たした。











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