非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

流浪の孤児

だけど運が悪いことに、
街から逃げる避難民を狩る
奴隷商人の難民狩りに追いかけられた。


子供だった僕達は逃げ切ることも出来ずに、
あっさり難民狩りに捕まってしまう。


とりあえず僕はマトと離れないように
ずっとくっついていた。


今ここでマトと離れてしまったら
もう二度と会うことは出来なくなるだろう。


僕達は縄で縛られ、
奴隷を運ぶ荷馬車に乗せられて移動した。


そんな時も
僕は黄金の国・ジパングのことを考える。


こっちの方角は
ジパングにつながるゲートがある方向だろうかと。


-


荷馬車は何日も大陸を移動し続けた。
僕は縛られている縄の一個所を
ずっといじり続けた。


朝昼晩ただひたすらに。
縄のその部分だけが傷んで、
後少しで切れるというところまで来る。


その晩僕達は脱走を試みた。


僕は縄をほどき、
マトの縄をほどき、
捕まっているみんなの縄をほどく。


脱走者は一人でも多いほうがよかった。
みんながバラバラに逃げたら、
それだけ逃げ切れる可能性が高くなるから。


僕は見張りに立っている男の頭を
大きな石で殴りつけた。


男は頭から血を流して倒れる。


僕はそれを見て突然怖くなった。
誰に教えらたわけではないが、
なんとなく人を殺すのは
よくないことだと思っている。


だから喧嘩はしても、
人を殺すようなことだけは避けていた。


でも今僕は人を殺してしまったかもしれない。


僕は怖くなって、
マトの手を握りしめ、
ひたすら走った。走り続けた。


-


どこをどう走ったのかも
よくわからなかったが、
気づいた時には森の中だった。


僕達は森の中で息をひそめて
じっと身を隠す。


森の中を探し回っている難民狩りの中に、
僕が頭を殴りつけた男の姿があって、
僕はその姿を見てホッとした。安心した。


男は頭に包帯を巻いていたが、
死んではいなかったようだ。


僕は人を殺してはいなかった。
なんだかよくわからなかったけど
涙がこぼれていた。


-


難民狩りから逃れると
僕達二人はひたすらにゲートを目指す。


その後しばらくは
森の中で集めた木の実を
少しずつ二人で分けて食べた。


川辺に出た時は、
魚を捕って食べることが出来た。
ついでに川で体を洗ったりもする。


途中で、人懐っこいグリフォンに
乗せてもらうことが出来たのは幸運だった。


この世界では人やエルフ、獣人、魔族よりも
巨大生物のほうが優しいのかもしれない。


僕もマトも歩くのが辛くて
仕方なくなっていたので、
グリフォンが乗せてくれたのは本当に助かった。


-


この先は寒冷地に入るので
グリフォンとはここでお別れだ。


僕達二人は雪の中を歩く。
寒さで凍える寸前だった僕達は、
行商人の一団に助けられた。


しかし結局彼らも
僕達を奴隷商人に売る気だとわかったので、
僕達は防寒服と食べ物を盗んで夜中に逃げ出した。


運良く降っていた雪が、
僕達が逃げた足音を消してくれる。


寒冷地を抜け、
そこからまた何日も何日も
僕達はひたすらに歩き続けた。


食べ物がなくなると
僕達は虫や草を食べて飢えを凌ぐ。


もう街を出てからどれぐらい経つだろう。


おそらくは数か月は
こうした旅を続けているはずだ。


ジパングにつながるゲートまで
後少しというところで、
僕達の前に最後の難関が立ちはだかった。


ゲートに辿り着くには
砂漠地帯を抜けなければならない。


僕達は事前に十分な水を準備していたが、
それでも途中でなくなると、
後は水なしで歩き続けなくてはならなかった。


僕達は何日も飲まず食わずで砂漠を歩き続け、
やがて力尽きて倒れた。


薄れ行く意識の中で、顔を上げると、
目の前にはゲートが見えた。


「マト、ゲートだ、ゲートだぞ」


「兄ちゃん、もうダメだ」


「何言ってるんだ、もう少しだ、
もう少しでジパングだ」


僕は最後の力を振り絞って、
弟のマトを立ち上がらせ、
肩を支え合いながらゲートまで歩いた。


そして僕達はゲートに
倒れ込むようにして入った。











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