非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

異世界難民

平行世界がつながって以降、
異世界からの亡命者や難民が、
頻繁にやって来るようになっていた。


異世界は内部では争いが絶えない
修羅の国であるらしく、
戦争を嫌った異世界住人達が
この世界に亡命してくるのである。


そもそも内戦が後を絶たない状況で
日本侵略を目論むのも
いかがなものかと思うが、
それは内戦がなければ
すぐにでも日本に侵攻してくる
ということでもあった。


この世界の住人からしたら
創作物程度でしか馴染みがない異世界だが、
異世界住人達からすれば
アニメ等でよく見た
非常に馴染み深い場所であり、
異世界で移民先スポットとして
密かに人気が出はじめているらしい。


地球防衛軍日本支部も
そうした亡命者や難民を保護して、
彼らから異世界の情報を収集していた。


場合によってはスパイとしての教育を施して、
潜入させたりもする。


-


しかし、異世界からの難民は
日に日に増える一方であり、
日本政府は認定した異世界からの難民を、
地球防衛軍日本支部に押し付けて来る。


敵勢力について不明な点が多く、
人材に不足していた当初の防衛軍は、
敵勢力のデータ収集、
研究調査と人材確保のために、
異世界からの難民を積極的に受け入れたが。


現在、
地球防衛軍日本支部の拠点基地である、
通称ムショも人口が数万人を超え、
小さい町の自治体レベル規模。


この世界の人間に加え、半魚人・人魚、
戦争で死んだ人間を再生させたゾンビ兵、幽霊、
そして巨大生物を小型化させた
異世界生物達がムショ内に居住するようになり、
敷地もどんどん手狭になって来ている。


そもそも大型兵器を管理運用するために、
広大な敷地が用意されていたが、
それでも居住エリアに人材が増えて行くに連れ、
増改築を繰り返して来た。




また難民受け入れには、
スパイ・工作員の問題も付きまとって来る。


予てから難民の受け入れが、
ムショ内への敵勢力のスパイや
工作員の流入を招いているのではないか
という疑惑もあがっていた。


疑わしきは罰という組織だけに、
明確な疑惑の対象者が
ハッキリすれば処分されてしまうのだが、
現在はまだそこまで至っていなかった。


これらの理由により、
地球防衛軍日本支部は難民の受け入れを
一時的に制限することにし、
まだデータが充分に取れていない
異世界住人のみを対象として
受け入れることにする。


そのことを日本政府に伝えると、
日本政府も異世界からの難民を
拒否するようになり、
日本に亡命、移民を希望して来た異世界住人は、
元の異世界に強制送還されて行く。


それは異世界内戦による
戦争被害者、難民も例外ではなかった。


-


『ピース9』はいつもの如く
人道的立場からの支援、
難民受け入れ支持を表明したが、
過激派が多数死亡し
弱体化していたこともあり、
今回も世論はその逆に流れて行く。


社会は異世界からの
難民受け入れ拒否を支持した。


難民受け入れ拒否支持者は、
難民として逃げ出すよりも、
団結して自分達の力で
自らの世界を正しい方向に導くべき
という意見を建前としている。


だがもちろん
それだけが理由ではなかった。


見た目が全く異なる異形の者達と、
同じ国で一緒に暮らすことは
無理だという考えが多い。


人種差別でさえ
完全になくなってはいない人類に、
種族差別を今すぐ無くすことは
無理というものである。


巨大ドラゴンを
拒否した時と同じ理屈である。


例え言葉が通じたとしても、
外見が著しく異なり、
よくわからない者は心理的に受け入れ難い。


日本政府も同様に異形の者との共存は、
現段階では無理だと判断していた。


いつかは種族に関係なく
対等で平等な世界が実現されるのかもしれないが、
宣戦布告をされた敵対勢力である
異世界の住人達でもあり、
それを今すぐはじめろというのは
無理な相談であった。


だからこそ今まですべての異世界難民を
防衛軍に押し付けて来たのだ。


その防衛軍の受け入れが
これ以上無理であるとなれば、
日本への受け入れを拒否せざるを得なかった。


-


だが一方で
難民受け入れ拒否に同情を示す
防衛軍内部の者達も現れた。


今まで難民は大人達のみであったが、
孤児が難民として
この世界に辿り着くという事例が
出て来たためである。


戦争を逃れて来た難民孤児が、
元の世界に強制送還されるということは、
孤児達に死ねと言っているのに等しかった。


度重なる内紛によって住民の心は荒み、
食料の奪い合い、略奪、殺し合いが
当たり前の地獄のような過酷な環境に、
まだ幼く行く当てのない孤児を
再び戻すというのは
確かに酷い話ではあった。




意外なことに、同情の声は
『チーム色道』の女衆からが多く、
他にも龍之介を見て、
母性をくすぐられた
地球防衛軍日本支部の女性達が、
彩姐さんを筆頭に一致団結して、
異世界難民孤児の保護を
防衛軍幹部に何度も訴え続ける。


そして、防衛軍日本支部は
異世界難民の孤児に限り、
これを受け入れることにした。













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