非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

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「ただ、
今回の件に関しては『ピース9』は
動物愛護の立場を取るでしょうから、
現時点で我々と敵対することはないでしょうね。」


進士司令官は眼鏡を押しながら言った。


『ピース9』は『海底王国』戦で、
過激派の多数が死亡したことで
以前よりは多少弱体化していた。


天野は時々思うことがある
『海底王国』戦で過激派が死亡したことで
『ピース9』は弱体化し、
多数の死亡者をゾンビとして
大量発生させたことで
ゾンビ兵の大幅増強が成された。


『海底王国』戦以降、
防衛軍には都合の良いことばかりなのである。


もしかしたら、
すべてはじめから進士司令官が
計画していた通りなのではないかと。


そうであれば辻褄が合うことが多いのだ。


もしそうだったとしても
人類存続という大局で見れば、
苦渋の決断として仕方がないのかもしれない。


しかし天野にとっては『海底王国』戦で
多くの民間人を死なせてしまったことは、
心に深い傷を残していた。




しかし今回に限っては
『ピース9』の弱体化は裏目に出た
と言ってよかった。


『ピース9』は動物愛護団体系が主となって
巨大ドラゴンの保護を世論に訴えていたが、
世論は野放図にされている
巨大ドラゴンに恐怖を抱き、
排除の方向に傾いていった。


『ピース9』の動物愛護よりも、
ドラゴンに対する人々の恐怖が上回った、
勝ったのであった。


確かに、尻尾まで入れれば
体調が百メートル近くはあろうかという
巨大なドラゴンが、
頭上を飛び回っていたら
人々が平静で居られる筈もない。


しかも運の悪いことに、巨大ドラゴンは
先の仮称・ファンタジー異世界との戦いで
傷を負っており、
高空を飛ぶことが出来ない状態であり、
かなりの低空をゆっくりと飛び回っていた。


空が巨大な物体で隠され、
地上が巨大な影で覆われれば、
人々はあの未確認飛行物体の襲撃の時の
恐怖を思い出す。


それが群衆心理となって、
巨大ドラゴン排斥の大きな世論となっていった。


巨大ドラゴンも常に空を
飛び回っているわけではないので、
時折山の上など人がいないところに降りて
咆哮を上げたりしていたのが、
その響き渡る鳴き声は
人々の恐怖をより一層煽った。


その後、航空機と巨大ドラゴンが
危うく接触しかけるという事件が発生。


巨体であるが故に小回りが効かず、
攻撃の意志がなくても、航空機やビル、
船舶に接触する可能性があることも判明した。


極め付けはやはり餌で、
お腹が空いた巨大ドラゴンは海に潜って、
海中の魚を食べまくった。


人や家畜を襲って食べなかったのは
救いではあるが、
お陰で一部エリアの漁場から
魚が全くいなくなるという被害が出た。
当然生態系への影響も懸念された。




やはり人間と巨大生物の共存は難しいのか、
人々からはすっかり危険生物として
認識されてしまった。


防衛軍としても
もはや攻撃をせざる得ない状況に
追い込まれていた。


-


「やはりだめですね。
ドラゴンが来たゲートには
結界が張られているようです。」


財前女史が
現場のゲート観測班からの報告を伝えた。


「外交交渉が裏目に出てしまいましたかね。」


気の弱い真田が申し訳なさそうに言う。


「よほど送り返されたくないと見えますね。」


進士司令官は眼鏡を押しながら言った。


「現状の我々の航空戦力、
対空攻撃力で倒すには、
また相当の被害が予想されます。


前回の『海底王国』戦以降、
立て直している現在、
無用の戦闘は避けたいのですが。


バンカー・バスターなどで突き刺すか、
核兵器でも使えば別かもしれませんが。」


「痛そうー、ドラゴンちゃん可哀想ー」


一条女史はまだ
ドラゴンを何とか出来ないかと
考えているようだった。


「核兵器は当然無理でしょうが、
バンカーバスターは
良い策ではないでしょうか?」


財前女史の発言に天野が口を挟む。


「仕留め損なった時、
反撃で大惨事になる可能性が高いので、
一撃で確実に息の根を止める必要があります。」


「そもそもドラゴンの鱗ってー、
どれぐらい硬いんですかねー」


「うーん、この子、
物を壊さないように注意してるしー、
知能が高いんじゃないかなー」


一条女史はまだ捕獲に未練があるようだった。











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