非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

面接幽霊

ムショでは緊急会議が開かれ、
幽霊達にどう対応するかが検討された。


当然、新しい肉体とは、
再生ゾンビの魂が抜けた肉体のことを指している。


霊が再生ゾンビに憑依することで、
再生ゾンビがどうなるのか
試してみたいところではあった。


貴重な実験データも取れるだろう。


しかし今のところ彼らは
この世に未練を残している存在である。


肉体を与えたところで、
その未練を晴らそうとして、
人殺しや犯罪などを起こされては困る。


だがもし心残り、未練を解決してなお、
この世界に留まることが出来た場合、
それは真の意味で次の次元へ進んだ
人類である可能性も高い。
むしろみなそれを望んでいた。




そこで地球防衛軍日本支部は、
霊一体一体と面接して話を聞くことに決めた。


面接の中で、
幽霊から直接未練の原因を聞き出し、
新しい肉体を提供するに値するかどうかを
探ろうというのだ。


最初の面接は『チーム餓鬼道』の
リクルートチームが担当することになった。


彼らは例え相手が誰であろうと、
人材に真摯に向き合う
職業意識の高さを持っていた。




落ち武者の霊と面談を行っているのは
『チーム餓鬼道』のリーダー・山科だった。


山科は、
落ち武者の見た目に臆することなく、
堂々と胸を張って話を聞いていた。


「そうですか。
御嶽様は、関ケ原の無念を
晴らされようとしておられるのですか。」


「しかしどうでしょう。もう御嶽様も
薄々おわかりになっておられるかと思いますが、
既に関ケ原から四百年以上が経っておりますし、
ここは一つお気持ちを切替えていただく訳には
まいりませんでしょうか。」


「いつまでも過去に捉われていても何ですし、
是非前向きにお考えいただき、
我々にご協力をいただく訳にはいきませんでしょうか。」




『チーム餓鬼道』の他のメンバーも面接に忙しかった。


「なるほど。
自分を散々弄んだ挙句に
ぼろ雑巾のように捨てた屑男に復讐したいと。
いけませんね、そういう後ろ向きな動機は。
最終面接で一番嫌がられるパターンです。
最終面接を通過するためには、
もっと前向きな志望動機を語っていただきませんと。
ネガティブな発言は
面接官に悪い印象を与えてしまいますから。」


だが何故か、いつの間にか
最終面接に合格するための
アドバイスをする面接になっていた。
担当者が相手のことを
真摯に考え過ぎた結果であろうか。




「何もかも上手くいかなくて、
世をはかなんで自殺をしたら、
実は未練がたっぷりだったということですな。
環境のせいにして自分を省みないという姿勢は、
面接官の心象を悪くします。
また、新しい肉体を貰ったら、
自分は何をしたいのか、何が出来るのか、
具体的に前向きなビジョンを
語っていただく必要があります。
自分に自信を持って積極的にアピールしてください。」


幽霊に自分に自信を持ってというのも、
よく意味のわからない話だか、
これではまるで転職アドバイザーならぬ、
転生アドバイザーではないか。













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