非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

パリピ幽霊

「はい、
我々はみなさんがおっしゃるところの幽霊です」


幽霊は幽霊である自覚が無いと
聞いたことがあるが、
そういうことなのだろうか、
と天野は思う。


「こんなところでどうされたんですか?」


天野の問いに返って来た答えを聞いて
天野は耳を疑う。


「ここに来たら
新しい肉体が貰えると聞いてきたもので。
そちこちの墓地や幽霊の間じゃ、
今もっぱらの噂になってるんですよ。」


「は?」


しばし事態が掴めず呆然とする天野。


『一体誰がそんな噂を流したのだろうか』


天野は思ったことを
素直に聞いてみることにする。


「一体誰がそんな噂を流したか
ご存じないですか?」


そこに聞き覚えのある声が割って入る。


「いやぁ、ごめんごめん、
その噂を流したのは僕だよ、ほほほ。」


天野が声の方向に目をやると、
そこにはサンタクロースによく似ている博士が居た。


『やっぱり、あんたかい!』


博士の後ろからは、
そのエロい愛人いや華月蘭教授、
そして博士のお世話衆である
通称ハニーちゃん軍団二十名がついて来ていた。


「君達が会議で幽霊について話をしていたからね。
この世界で、魂をきちんと形づくって
定着させることが出来た存在が
どんな人達なのか見に行きたくなったんだよ。」


「それでハニーちゃん達に、
心霊スポットだという墓地に案内してもらってね。
いやぁ、みんなと随分盛り上がってね、
非常に楽しかったよ。奇跡的だったね。」


後ろにいたハニーちゃん軍団は
顔をポッと赤らめる。


『なんだよ、そのポッっていうのは』


天野は嫌な予感しかしなかった。




「その場の霊のみんなと
コミュニケーションをはかってね。
高次元的な意味でも、三次元的な意味でも、
大変素晴らしかったよ。」


後ろにいたハニーちゃん軍団は
さらに顔をポッと赤らめる。


『だからなんなんだよ、そのポッっていうのは』


『俺この話、本当に聞かなきゃダメなのかな』


エロい愛人いや蘭教授は
体をくねくねさせながら博士の腕に絡みつく。


「もう、ダーリンたらすごいのよ。
この娘達に憑りついた
女性の霊をみんな昇天させて、
成仏させちゃうんだから。」


後ろにいたハニーちゃん軍団は
より一層顔をポッと赤らめる。


『やっぱりか、
やっぱりそういう話なのか、
お前ら墓地で何やってんだよ!』


「女性の霊が次々と成仏しちゃうもんだから、
男性の霊が怒ってね。
男性霊もこの娘達に憑りついたのだけど、
やっぱりみんな昇天させて、
成仏させちゃったのよ。」


後ろにいたハニーちゃん軍団は
より一層顔をポッと赤らめる。


『あー、それ中味男同士ってことだよね!
霊に性別があるのかよくわからないけど』


『だから、俺この話、
本当に聞かなきゃダメなのかな』


そちらこちらの墓地でそんなことを繰り返し、
ここに来たら新しい肉体が貰えると触れ回ったらしい。


「進士くんが
数百数千の霊を集めるのは
大変だと言っていたからね。
僕の研究も兼ねて、
微力ながらお手伝いをしたってわけさ、ほほほ」


『うーん、そういうことじゃないと思うぞ』


『しかしお前ら罰当たりにも程があるな』


しかし、
本当であれば罰を当てる側が
喜んで成仏しているのだから、
この場合はどうなるのであろうか、
罰というのは案外主観で当てるものなのか、
などと天野は思う。


そもそも天罰というのは
人の道を踏み外さないための
教えのようなものであり、
人の道を踏み外しまくっている
この組織の人達に当てはまるはずもない。


「それはまぁよいとしても、
霊感がない人にもこれだけはっきり霊が見えるのは
おかしな話じゃないですか。
しかもこんなに大勢の。
他に何かしたのではないですか?」


天野が尋ねると博士は笑って答えた。


「幽霊のみんながここに来ても、
君達が認識出来なかったら意味がないからね。
君達でもハッキリ認識出来るように、
みんなの霊力を上げておいたんだよ、ほほほ。」


幽霊達がここに辿り着くまでに
一体どれだけの人が彼らを目撃したことだろうか。


今晩の幽霊目撃情報の多さに、
今頃世間はパニックになっているに違いない。















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