非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

続出幽霊

地球防衛軍日本支部基地、
通称ムショに幽霊が出ると噂になっていた。


深夜になると、


「誰か、助けて」


という声が聞こえて来て、
暗いムショの中を
黒い人影が徘徊ししているらしい。


気づいた者が廊下に出ようとすると、
夜間自動警備システムが作動して
レーザー光線が飛んで来るため
人影には近づけない。


しかし警備システムは
その人影には全く反応しない。
つまり人影は人間ではないのだ。




当初この話はムショの怪談として、
ムショにいる人々を震えあがらせた。


しかし会議での博士の話が広がるにつれ、
人々の反応は徐々に変わってきていた。


博士は高エネルギー生命体であり、
この世界の人間が言うところの魂に近い。


そして幽霊は、肉体の死後に、
魂をきちんと形づくり
この世界に定着させることが出来た存在であり、
この世界の普通の人間より、
博士に存在が近い。


魂を自らの本体として捉えて、
定着させることが出来れば、
肉体はいくらでも乗り換えられる。
それが博士の話であった。




女子職員の井戸端会議でも。


「なんかここ最近幽霊が出るらしいよ。」


「ああ、幽霊?博士みたいなもんでしょ。」


「博士見慣れてきたから、
そういうのあんまり怖くなくなってきたよねえ。」


男子職員のランチでも。


「最近なんかやたら幽霊見るんだよな俺」


「何お前、幽霊見えるの?すげえじゃん。
もうじき次の次元行けるんじゃね」


「いいじゃん、お前一人で先に
人類の次のステージ行っちゃう感じ?」


このような会話が頻繁になされるようになって来た。


-


そんなある日の夜、
ムショに大量の幽霊が発生する
という事件が発生する。


ムショ敷地の屋外で、
通常霊感が強い人しか見られないはずの幽霊が、
ほとんど誰の目からも見える状態で
百体以上は押し掛けて来ていた。


話を聞いて駆け付けた天野、一条女史、財前女史。


気が弱い真田はついて来すらしなかった。


その場には人間の野次馬も
数百人は集まって来ており、
その場は騒然となっている。


野次馬達は幽霊の集団と
数百メートル離れたところから距離を置いていた。


いくらなんでもあまりに近づくのは、
ちょっと躊躇われたのであろう。


「ちょっとこれはどういうことなんですか?」


天野が野次馬に尋ねても
みな首を捻るばかりであった。


「財前さん、
ちょっと幽霊に話しかけてみてくださいよ」


天野は若干薄気味悪さもあり、
財前に頼んでみた。


「いや、私はちょっとな。」


普段は男前な財前女史も、
人より信心深いためか少し躊躇していた。


「やっぱりさー、
ここは男らしく天野っちが行くしかないよねー」


こういうことにもっとも物怖じしない
一条女史が意地悪をして天野を押した。


「ちっ、まいったな。
普段霊感ないから
見るのも話すのもはじめてなんだが。」


なかなか普段幽霊と
話慣れている人はいないものだが。


-


「あのー、すいません」


「みなさん、幽霊の方ですかね?」


天野がおそるおそる声を掛けると、
幽霊達は人間の声に一瞬びっくと反応した。


幽霊達は集まって何やらひそひそ話をしている。


しばらくして代表者に選ばれたらしい
落ち武者が前に進んで来る。


落ち武者の霊は体中に何本もの矢が刺さり、
片方の目玉が落ちかけている。


『なんでよりによってこの人なんだよ』


天野は心の中で突っ込む。













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