非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

改造人間志願者

しかし意外なことに志願者は現れた。


異世界人のテロ犯を追跡中、
『チーム外道』のメンバーが
体中に銃弾を撃ち込まれて
瀕死の重症を負った。


石動はすぐに一条女史のもとに駆けつけた。


「どうせー
再生医療で治療されるんだろー」


これだけ再生医療が進んでしまえば、
即死でなければ大概は治療が可能であった。


今や死人でさえ、
肉体だけなら修復出来る。


「だがな、
そいつは改造人間に志願するという
遺言を残しているんだ。」


「ええー!」


一条女史は声を上げて興奮した。




一条女史はすぐに
ムショ内のデータベースにアクセスし、
その彼の遺言動画を見た。


『自分は生まれてこの方、
みんなからブサイク、ブサイクと
言われ続けてきました。


女子からも、
ブサイク、キモイ、ブタ、最低、死ね、
などという罵声を浴びなかった日は
一日もありませんでした。


おかげで女子とは
一言も話しをすることす出来ず。
当然ながら彼女などおらず、
結婚も出来ず、子孫を残すことも出来ず、
いやおそらく一生童貞で終わることでしょう。


せめて人の役に立ちたいと思い
防衛軍に入りましたが、
もし僕が死にかけるようなことがあれば、
ブサイクのまま延命して生きるよりも、
イケメンな改造人間になって生まれ変わりたい。
イケメン改造人間になって女子にモテたい。
イケメン改造人間になって人生を謳歌したい。
人々の役にも立ちたいです。』


『人の役に立ちたい』の
取ってつけた感が半端なかった。


「誰か、玉ネギ切ってないー?
目から水が流れてるんだどー
これ泣いてあげてもいいやつだよねー?
同情して泣いてもいいやつだよねー?」


「ああ、
俺も目から汗が出やがってるぜ、
筋トレして汗かき過ぎたな」


一条女史も石動も哀れ過ぎる彼に
同情せずにはいられなかった。


-


とりいそぎ素体候補の彼は
生命維持装置に移される。
一条女史は石動と
どういう改造人間にしていくかを話し合った。


「定番のモチーフとしては、
バッタ、蜘蛛、蝙蝠辺りかなー」


「おいおいもうちょっと
ましなもんにしてやれよ。
昆虫とか害虫みたいなのばっかじゃねえか」


「何言ってんだよお前はー、
ヒーローの定番じゃないかー」


「いっそ熊とかどうだ?」


「馬鹿野郎―!
熊とか見た目バッとしないだろうがー、
地味なんだよー」


「脳筋らしい、
パワータイプ推してきやがってー
どうせなら見た目重視して
パンダとか言いやがれー」


「パンダは大人しいだろ。
寝てるイメージしかないぞ。」


「じゃあ、いっそ
ライオンとか虎でどうだ?」


「ライオンとか虎のヒーローは
いまいちメジャーになれないんだよなー」




石動は発想を転換して考えた。
いや、そもそも
ここから話はじめるべきだったのだ。


「じゃあ、
もっと実用的に考えようぜ。
そもそもテロ対策用なんだろ?
じゃあ、犯人追いかけるのに、
そこそこ脚力が必要だな。
脚が早くないといけねえな。
となると、チータとか、
ジャガー、ピューマ辺りか。」


「いや地面走るだけじゃダメだろー」


「市街地なんだからビルの谷間を
ピョンピョン駆け回るぐらいじゃないとー」


「となると、インパラ?とかどうだい」


「パワーもそこそこあるんじゃねえかな、
よくは知らないけど。」


「インパラかー、案外悪くないかもー
名前はインパライダーだねー」


「お前も結構ギリギリなとこ責めるな。
俺でも知ってるやつだぞ、それ。
そもそもライダーって言ってるけど、
何に乗るんだよ。」


-


次は改造手術の手法について検討された。


「骨格強化してー、
細胞レベルで筋肉増強してー、
インパラの能力移植する感じかなー
人口強化骨格やら特殊強化細胞使う感じでー」


「なんだ、
手とか足とか切り離して、
メカニックなもん着けたり
するんじゃねえのか。」


「馬鹿野郎―、
いくらあたしでも
他人様の手足気軽にちょん切るのには
抵抗あんだよー、
医師じゃねえしー」


「なんだお前、
いつも改造させろとか言ってる癖に、
いざとなったらビビるタイプか?
それにちょん切って失敗したら、
それこそ再生医療で
また生やせばいいじゃねえか、
元の手足を。」


「お前、天才かよー」


石動の発言には一条女史も目から鱗だった。











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