非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

屍を待つ持久戦

「ここから先は持久戦ですね」


司令室で、
財前、一条、真田ら幹部連と、
戦略・戦術担当の
『チーム非道』のメンバーと共に、
戦局を見つめていた進士司令官。


「しかしこちらが
これ以上不利になることは決してない。
両軍で死者が増えれば増えるほど、
こちらの兵力は増えていく。
ゾンビによって拮抗した
戦力バランスが崩れるのがいつか。
後は向こうがこのからくりに気づいて
撤退してくれるのを待つばかりですね。」


「決して勝ちとは言い切れませんが、
負けたわけでもありません」


進士司令官は眼鏡を軽く指で押した。


「我々の目的はあくまで
人類滅亡の回避ですから、
我々の負けは人類が滅亡した時です。」




爆撃機やドローン部隊が
空中散布していたのは、
兵力増強会議で博士が話していた
『宇宙ウイルス』であった。


このウィルスは、
生物の死骸を餌にしており、
死骸に寄生してそれを操って、
自分の巣穴まで移動させる
という習性を持っている。


生きている人間に感染することはないが、
死骸には感染する。


ただ攻撃を加えて来た相手には反撃するので、
敵軍が屍を攻撃をしていたのは
むしろ逆効果であった。




進士司令官は、兵力増強会議で
この存在を博士から聞いた時、
内地決戦の際の最終手段として
利用出来ると判断し、
博士の協力の下、
このウイルスの培養を進めて来ていた。


この分野に造詣が深い一条女史が
責任者としてプロジェクトは進められていた。


ドローンに関しては、
やはり操縦者の人員確保を
『チーム餓鬼道』が担当した。


今回は事前に空路をプログラムされており、
ほとんど自動操縦になっていたため、
実際に動かしたのは、
ムショ内の非戦闘従事者ばかりであった。


それこそ事務員から、
土木・建築作業員、清掃員、
食堂のおばちゃんまで、
約千人が参加していた。




進士司令官の言う通り、
この後は約十万の残存敵兵が、
約二十万前後のゾンビに蹂躙されるのを
ひたすら待つことになる。


ゾンビは武器を持たず、
ひたすら多勢で襲い掛かるだけではあるので、
時間が掛かった。


欠損している個体も多いため、
数の差にしてはそこまでの戦力差はなかった。
序盤は。


ただメンタル面が大きく違っていた。
ゾンビには魂のようなものはないため
当然メンタルは存在しない。


一方この世界の人間に近い
メンタルではないかと想定される半魚人兵は、
ゾンビに恐怖を感じ、
臆してしまっていた。




そして何より死者が出れば出る程、
ゾンビ側の数が増えていくのである。


序盤拮抗していたバランスはやがて崩れ、
そのまま大きく決壊した。


敵兵士には逃亡する者が現れ、
防衛軍に投降する者も出始めた。


大崩れした敵軍は、
戦意を失い撤退する。


撤退と言っても、疲弊した状態で、
クジラによる輸送もなく、
海中のゲートまでひたすら
自力で泳いで帰るしかなく、
どれぐらいの数が
無事に帰投出来たかは定かではない。


防衛軍は敗残兵狩りはせずに
むしろ投降を呼び掛けた。


下手に交戦してしまっては
自分達もゾンビに襲われる可能性がある。
ゾンビの活動が鎮静化するまでは
大人しくしていた方が得策だった。











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