非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

プラン『Z-02』発動

クジラを機能停止に追いやり、
敵の増援を絶つことが出来た防衛軍。


しかし地上の残存敵兵力は
既に十万以上を超えてしまっていた。


防衛軍側の被害も大きく、
損耗率は四十パーセント近くに達し、
兵達の消耗、疲労も激しく、疲弊した状況。


戦線も敵が上陸してきたポイントを中心に
約十キロ圏内まで拡大していた。


進士司令官はこの最終局面において、
プラン『Z-02』を発令する。


「あれを、マジでやるのか」


天野は耳を疑った。
しかし、確かにこの凄惨な
地獄絵図と化した戦場においては
最も有効な作戦でもあった。


「プラン『Z-02』の発動だ。
俺が合図したら全員後方に待機だ。
人体には影響がないとのことだが、
一応防護マスクを着用しておけ。」




もう何度も両軍の頭上を飛び回った
爆撃機が再び上空を飛ぶ。


しかも今回は敵の対空攻撃に
あたるのではないかと思うぐらい
かなりの低空飛行。


さらに今敵軍がいる
ポイントの頭上だけではなく、
敵の上陸地点から
行軍経路をなぞるように
広範囲に飛び回っている。


続いて千機近い
ドローン部隊が空を移動して来る。
約千機のドローン編隊は壮観なものがある。


ドローン部隊は超低空で、
敵軍を避けるように散らばって行く。
ドローンからは何かが散布されていた。
いや目には見えなかったが
爆撃機も散布していたのだ。


-


敵軍と抗戦していた地上部隊に
天野から移動の合図が入る。


地上部隊は銃撃しながら後ずさっていく。


半魚人はその後を追おうとするが、
何者かに足を掴まれる。


半魚人が目をやると
横に転がっている血塗れの人間の屍が
自分の足を掴んでいる。


半魚人は偶然足に絡まったのであろうと、
何度もふりほどこうとするが、
ふりほどけない。


やがて人間の屍は
体を小刻みにゆらしはじめ、
呻き声をあげながら、
ついに上半身を起こす。


恐怖に駆られた半漁人は
屍に向かって、銃を撃つ。


銃弾は屍の脳髄を吹き飛ばしたが、
屍はそのまま動きを止めない。


屍は呻きながらそのまま立ち上がる。


そして次の瞬間、
銃を撃った半魚人に襲い掛かった。




戦場の至るところで
同様の光景が広がりはじめた。


人間に限らず、
半漁人や人魚の屍も動き、立ち上がる。


肉体の一部を欠損している屍もいる。
片腕がない屍、片目が飛び出している屍、
頭部が吹き飛ばされている屍。
欠損が酷い屍には、顔がない屍、
内臓をまき散らしている屍もいる。
下半身を吹き飛ばされた屍は、
手を使って地面を這いずり回っている。


戦場の血塗れの屍すべてが動きはじめ、
敵にゆっくりと向かって行く。




敵地上軍は、
銃を乱射して屍の群れを吹き飛ばすが、
血塗れの屍は、倒れても倒れても立ち上がる。
何度でも立ち上がる。
気味の悪い呻き声をあげながら。


敵地上軍は、
倒れても倒れても立ち上がる屍に
徐々に後ずさりをはじめるが、
後ろにも横にも屍がおり周りを囲まれる。
それは当然のことでもある。
この戦場には彼ら以外は屍しかいないのだから。


周囲四方に向かって銃を乱射するが、
いくら撃っても、
いくら屍を吹き飛ばしても、
距離は縮まるばかりである。
次から次へその物量で向かってくるのだから
当然でもあった。


物量で押していた敵軍が
屍の物量で押し返されるのは
皮肉なことであった。


敵兵はついに屍の群れに捕まり、
首をへし折られる。


そして絶命した彼もまた
屍となって動きはじめる。




こうした光景が、
敵が上陸してきたポイントを中心に
約十キロ圏内で繰り広げれていた。


それがこの戦争で戦場となった範囲であり、
その範囲すべてが
屍で埋め尽くされていたといことでもある。


屍の中には、
これまでの戦いぶりがわかるような
黒焦げの屍や凍てついた屍の姿もあった。


世界のすべてが
屍で埋め尽くされたのではないかと思える光景、
永遠に続くのではないかと思われる屍の襲撃、
敵兵からすれば
その重圧と恐怖は計り知れないものであった。


今や東京の旧埋立地跡を中心とした
約十キロ圏内は
血塗れのゾンビの群れに埋め尽くされ、
その呻き声がどこに居ても聞こえてくる、
地獄の様相を呈していた。













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