非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

制空権確保

地球防衛軍は敵約数万を
一網打尽に打ち取ったが、
敵軍勢は一向に減る気配を見せなかった。


巨大クジラが口の中から
定期的に数万単位の増援を
送り込んで来るからだ。


敵増援を止めない限り、
防衛軍の勝ち筋は見いだせなかった。




財前女史は、
対クジラ特殊任務のメンバーを集めていた。
敵勢力から寝返り、
戦闘訓練を受けていた半魚人や人魚をメインに、
暗殺や特殊任務を専門とする
『チーム鬼道』のコードネーム・カピパラ、
諜報・工作を専門とする『チーム修羅道』の
コードネーム・流をはじめとする
この世界の人間も呼ばれていた。


そしてなぜか、
以前天野に絡んでいた二人組と、
似非関西弁の『魚人さん』が志願して来ていた。


ステテコ姿に腹巻をした禿・多古と、
アロハシャツにサングラス、リーゼント姿の伊香である。


「お前ら居ても役に立たないだろう」


財前女史は容赦なく言った。


「やはり自分ら名前的に
この戦争参加しない訳にいかないと思うんすよ。
ムショでタコ・イカコンビで名前売ってる訳ですし。
ここで目立っておかないと
自分ら出番ないと思うんすよ。」


伊香は少しバツが悪そうに言った。


「まじすか、
自分兄さんらの男意気に胸打たれましたわ。
ねえさん、自分からもお願いしますわ。
兄さんらを男にしてやってください。」


すっかり自分は参加出来るつもりでいる魚人さん。


「死んでもしらんからな。」


時間が無いので、
財前女史は適当に流すことにした。
死ぬのはあくまで自己責任。
ここはそういう組織でもあった。


任務自体は極めてシンプルで、
クジラの体内に潜入し、
巨大クリオネと巨大クラゲを撃墜に追い込んだ、
バイオウィルスを注入してくること。


-


司令室では、敵航空戦力掃討の為、
エイ、トビウオ対策の準備が進められていた。


「事前に準備されていました
ドローン部隊のうち百機を
『チーム魔道』に改造してもらいました。」


真田が進士司令官に報告をしていると、
通信モニターに主任が映し出される。


「天才科学者である本田秀次にかかれば
こんなの他愛もないことです!」


続いて『チーム餓鬼道』山科がモニターに映る。


「こちらも問題ありません。
事前にムショ内の方々に
お願いしていたドローン操縦者のうち
百名を今回作戦に割り振りました。」


比較的簡単に素人でも操作が出来る
ドローンに関しては、操縦者の人員確保を
『チーム餓鬼道』が担当しており、
準備されたドローンは
ムショから輸送車で現場付近の敷地まで運ばれ、
現地で離陸準備が行われた。




戦闘機、爆撃機は一旦ムショに戻り、
その代わりに巨大エイ対策として、
ティルトロータ式垂直離着陸機が用意されていた。


垂直離着陸機は離陸すると
巨大エイのみを狙い追いかける。


巨大エイの移動速度はそれ程早くはないため、
ティルトロータ式の速度でも
十分に追いつけるものであった。


巨大エイの背後に回った垂直離着陸機は、
対巨大エイの武装を射出した。


垂直離着陸機より発射された
巨大針形状の射出物が巨大エイに突き刺さる。


巨大針は極真となっており、
超高圧電流が流される。


電流により全身が麻痺した巨大エイは
急速に落下して行く。


垂直離着陸機は
ケーブルを切り離すタイミングを逃し、
そのまま一緒に引っ張られる。


ビルに激突し、
その壁面を崩しながら、
巨大な音と振動と共に、
地表に激突する巨大エイ。


垂直離着陸機も
そのまま振り回されて吹き飛ばされる。


麻痺して動けなくなっている
巨大エイの両翼をレーザー光線で焼き切る地上部隊。


飛行能力を失った巨大エイは
まな板の上の鯉も同然であった。




トビウオ対策として、
準備が整ったドローン百機が地上を離陸する。


トビウオは敵航空戦力に突っ込んでいく、
追尾ミサイルのようなものであるため、
ドローン編隊に向かい次々と突っ込んで行く。


トビウオが衝突した際に、
ドローンからは電流が流される。


当然ドローンは当たった瞬間に吹き飛ばされるが、
流れる電気はわずかでよかった。


致死レベルである必要は全くなく、
十数秒程トビウオを
麻痺させることが出来ればよかったのだ。


麻痺したトビウオは
地上数十メートルの高さから落下する。


トビウオのサイズと硬度では、
その高さから地上に激突した時点で
ペシャンコであった。


敵が半自動的にこちらに向かって来てくれ、
避ける必要がないため、
操作は誰が行おうと全く関係なかった。
全くの素人でも問題なかったのだ。




魚類の体内水分量の高さを考え、
電撃も有効な攻撃方法だと考えていた防衛軍は、
電撃攻撃を攻撃プラン、
シミュレーションに加えており、
事前に武装は準備されていた。


トビウオ対策にドローンを使うという不測の事態、
垂直離着陸機の撃墜というアクシデントはあったが、
これでいよいよ敵航空戦力を掃討完了となった。











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