非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

地球防衛軍、出陣

約半日後、
再び『海底王国』の軍勢が探知された。
巨大な水棲生物が三体、
数十メートル級が十体、
数メートル級が約百。


発見後、直ちに航空戦力の出動が命じられた。
上空攻撃は命中精度が低いとしても、
敵に少しでもダメージを
与えておかなくてはならない。


CGによる再現映像が司令室に届くと、
三体の巨大な水棲生物はクジラである。
クジラの周囲は
巨大なタコ、イカ、エイ、クラゲ、
そしてなんとクリオネで構成さていた。


「やー、大きいクリオネ可愛いー」


この状況でもメンタルが強靭過ぎる一条女史。


巨大な水棲生物の周囲にはトビウオが群れており、
やはり先ほどのサメは部隊には加わっていない。
しかし半漁人や人魚の姿も確認出来なかった。


「おそらくは第一陣なのでしょうが。
この構成は不可解ですね。
陸に上がって来られそうなのが
タコ、イカぐらいしかいません。」


「やっぱり、
エイとクラゲが空飛ぶんだってー。
トビウオもかなー」


「その可能性が高くなってきましたね。
クジラも空を飛ぶためのものでしょうか。」


「空飛ぶ白鯨とかー、
確かに定番だよねー」


「今ゲートを通れたのが
これだけなのかわかりませんが、
二陣、三陣と後続が来る可能性もありますね。」




防衛軍の航空戦力は、
水中の魚群に向け爆撃を繰り返す。
クジラは前回のサメよりも
巨大でスピードも遅いため、
攻撃は多少当たってはいた。


こうなるとますます敵が
クジラ隊を出してきた意図が不明である。
クジラを先陣として
突っ込ませることに意味はあるのか、
盾にする気であろうか、
司令室の一同は案じていた。


幸いここまでは
敵の対空攻撃も見られなかった。
トビウオが水面を飛び跳ねてはいたが。


いかに彼らと言えど、
猛スピードを出しながら
対空攻撃するのが難しいのか、
そもそも対空攻撃の能力がないのかは不明だが、
今のところ制空権は確保出来ていた。


しかし案の定、
エイとクラゲ、トビウオが
水中から浮上しはじめ、空に浮いた。


「まずい、制空権が!」


続いて、なんとクリオネまでもが空に浮いた。
空に浮かぶ巨大クリオネは
まさしく天使のようであった。


「やー、
空飛ぶクリオネ可愛いー、
超萌えるんですけどー」


誰も口にはしなかったが、
進士以外全員同じことを思っていた。
ここまで来てまさか
萌えることになるとは思っていなかった一同。




しかし空を飛ぶのに慣れていないのか、
スピードは明らかに遅い。
トビウオ、エイはともかくとして、
クラゲとクリオネは明らかに
水中のほうが速かった。
空気抵抗と水の抵抗を無視した話ではあるが、
クリオネが空を飛んでいる時点でどうしょうもない。


クリオネはクラゲと共に
そのまま徐々に水中に沈んで行く。


「やー、失敗して、
顔隠すクリオネ可愛いー、
超萌えるんですけどー」


一条女史のメンタル強過ぎる問題。




エイはその巨体で戦闘機を追い掛け回す。
トビウオも戦闘機を目掛けて突っ込んでくる。
おそらく頭上を飛び回る
五月蝿いハエを追い払いたいのであろうか。


エイは速度が遅いとは言え、
その巨体にかすっただけでもお終いだろう。


「トビウオって、
形状的にはミサイルだよねー」


防衛軍としては、
この後の空爆作戦に支障が生じるため、
なんとしても制空権は
確保しなくてはならなかった。


「おそらくは前回戦闘を踏まえ、
急遽集めた敵の航空戦力なのではないでしょうか。
本能のままに追いかけているだけで、
統制が取れた動きではありません。」


千野はトビウオ航空部隊に対する見解を示す。


「統制の取れた
空飛ぶトビウオとかちょっとねー」




エイとトビウオと
ドッグファイトを繰り広げる航空部隊。
おそらく入隊時にはこんなことになるとは
微塵も思っていなかったはず。


「俺がよく知ってるトビウオと違うんだが」


パイロットの愚痴が通信で聞こえる。


「気のせいだよ、馬鹿野郎」
「お前が釣竿を忘れてきただけさ」


天野がいたら、
アメリカンジョークかよ、
と突っ込むところだろう。




敵部隊は確実に、
防衛軍が想定していた
上陸ポイントへと向かっていた。
現場で事前にスタンバイしていた
天野達にも緊張が走る。


「今のところ目標はイカとタコらしいぜ」


天野がそういうと石動が舌なめずりをする。


「美味そうな奴らじゃねか」


あくまで石動は食う気らしい。
世界各地の最も過酷な戦場を渡り歩き、
補給路が絶たれて
食料が無くなることは日常茶飯事、
爬虫類、虫、蝙蝠と、
動くものはなんでも食ったという
猛者だから本人的には
当たり前の感覚なのだろう。













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