非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

『チーム外道』リーダー・石動不動(2)

『チーム外道』リーダー・石動不動。
まず一目見て驚いたのは、
その圧倒的なデカさであった。


二メートル五十センチを超える
その身長もさながら、
上半身裸のその体に
鎧のように纏われた筋肉。


顔も体にも無数の傷があり、
傷がない箇所はないようにすら見える。


目の前に巨石がそびえ立っているか、
巨大な熊が出現したかのようだ。


その経歴もまさしく傭兵中の傭兵。
十五歳で単身戦場に赴くと、
もっとも過酷な戦場を自ら好んで渡り歩き、
ひたすら戦場で十数年を過ごして来ている。
今後最も苛烈な戦場となるであろう
地球防衛軍にも自ら志願してきていた。


「次の作戦、
現場総指揮をとることになった特務官の天野だ、
よろしく頼む。」


石動のほうが年上なのだが、
天野は今回は上官らしい口調でいくことにしていた。


「かぁーマジか、
こんな青瓢箪あおびょうたんの青二才が上に立つとか、
そりゃねえだろ」


掌で顔を覆い天を仰ぐ石動。


「随分と青々しいなー」


石動のほうがはるかに実戦経験が多いのだから
こういう反応になることは天野もわかっていた。


「真田さんのほうがいいというのかねー君はー」


「あぁ、ありゃだめだ。
あれは政治屋タイプだ。
政治屋が現場に出てくると
ロクなことにならねえね。」


「しかしだな、
よくわからない青っ白いあんちゃんが来たから、
言うこと聞けと言われてもな、
はいそうですか、という訳にいかねえだろう。」


「お前、青好きだなー」


「まぁここの奴らはな、
敵見ると勝手に突っ込ん行くような
奴らばかりだからな。


勝手に突っ込んで、
勝手に死んでくような自殺志願者は、
俺も放置しておきたいとこなんだが、
そういう独断専行するような奴らは、
大概部隊を危険に晒すからな。


だから俺の言うことはちゃんと聞くように
躾けなきゃならねえんだよ。


まぁやっぱり一番わかりやすいのは、
圧倒的に絶対的な力で相手をねじ伏せて、
力で押さえつけることだよな。
力による恐怖支配ってやつだな。」


「そこでだ。
俺はここに入って来た奴とは、
最初にサシで勝負するんだよ。


力じゃ俺には絶対敵わないってことを
身をもって知ってもらって、
俺の命令には絶対服従だってことを
覚えてもらうためにな。


あんちゃんがいた国防軍のいい子ちゃんみたいに、
言って頭でわかるような奴らじゃねーんだよ、
ここに来る奴らは。


まあそれを新入りいびり、リンチみたいに
言う奴もいるんだがよ、
俺としてはちょっと違うんだよな。」


天野も軍人だから
石動が言うことはよくわかった。


「いやあんたが言ってることは正しいよ。
だから俺もあんたの言うことを否定する気はない。」


石動はニヤリと不適な笑みを浮かべる。


「じゃあ、あんちゃんが
俺に命令をする立場にあるってなら、
ここはやはり俺と勝負してもらわないとな。」


今回はこういう展開になるだろうと
天野も思っていた。


石動不動、
この通常の社会生活から
極端にはみ出した無法者、
アウトローを従わせるには、
確かに一度力の勝負で勝つしかないのだろう、
と天野は考える。


『勝てる気は全然しないけどな』


「格闘技で体重の差は致命的だからな。


武器を使ってもいいぜ。


あんちゃんが立ち上がる限り何回でも続けてやるよ。
そうだな、十回勝負でもいい。
十回やって一回でも俺に勝てたら
あんちゃんの勝ちでいいぜ。」


「いや一回勝負でいい。」


「ほう、随分と舐められたもんじゃねえか。」


「いや誤解しないでくれよ。
二回目以降があるってことは、
一回目はあんたの攻撃食らって負けたってことだ。


あんたの攻撃一回でもまともに受けたら、
身体能力はがた落ちだ。


そんな体で二回目以降やったところで、
俺の根性見せるってだけで、
嬲り者にしかならないしな。


それこそ他の奴等が見たら
リンチにしか見えないだろう。


勝てるとは思えねえが、
俺が勝つなら一回目しかないってことだ。」


「へえ、随分と冷静な判断じゃねえか。」


確かに石動と天野の体重差には
致命的な差があった。


格闘技においては
体重がその破壊力を決定すると言ってもよい。


天野と石動の体重差は
七十八十キロ差はゆうにありそうであった。











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