非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

動かせない最終兵器

高次元エネルギーの話がひとしきり終わると、
進士司令官は次の話をはじめた。


「今日は、もう一つ天野特務官に
お見せしておきたいものがあるのです。」


「今はまだ動かせない最終兵器が。」


北條に案内されて進むと、
再び重厚な扉の前に辿り着く。


それはもはや巨大な鋼鉄の門。


さすがに最終兵器が
格納されているだけのことはあると
天野は思う。


北條が時間を掛けてセキュリティを解除し、
ロックを外す。


その扉の奥にあったのは、
巨大な黒い人型の像。
天野はその雄大で壮観な光景に
驚きを隠せない。


「こ、これが、最終兵器」


全長百メートルはあろうかという
巨大な像を天野は見上げる。


「ロボットなんですか?」


天野の素直な質問に
北條は再び説明をはじめる。


「いやそれすらもわからないんです。


我々も形状からして
当初巨大人型ロボットだと
思っていたんですが、
内部がほとんどわからない。


人が搭乗するのではないかと思われる
空間があるんですが、
それ以外全く何もない。


『仮称・高次元エネルギー集約砲』同様に
内部構造が全く存在していない。


他次元をつなぐための
ゲートの痕跡が見られるため、
起動の際に内部構造が
ゲートから出現する可能性もあるし、
内部構造は多次元に置かれたまま
動くのかもしれない。」


「もしくは全く別の使い方をする
可能性もあります。


高生命エネルギー体が憑依して
動かすのかもしれないし、
搭乗者の鎧になるのかもしれない。


搭乗者と生体的に
融合や癒着する可能もある。」


要するに本当に全く何もわかっていない
ということだった。


「しかし、博士が持って来たのではないのですか?」


その天野の問いには進士司令官が答えた。


「正直博士もよくわからないで
持ってきたようですね。
別次元で滅び去ってしまった文明の遺産を
持ってきたと言っていましたから。」


適当な話しではあるが、
あの博士ならやりそうだとも天野は思う。


「でも博士はここまで動かして
持って来たんですよね?」


「博士の場合は、
分子・量子レベルで分解して、
別次元で再構築するぐらい出来ますからね。
あてにしてはいけません。」


「本当にわからないことばかりなのですが。


これを構成する物質も、
我々が近づくと非情に硬くなったりする。
おそらくは
この地球上にはないぐらいの硬度にまで。
ただ普段はものすごく柔軟性がある、
それこそ人の皮膚と同じぐらいまで。
そして硬質化と柔軟化を定期的に
交互に繰り返す。
まるで呼吸でもしているかのように、
緊張と緩和を繰り返すんです。」


北條の言葉に今度は進士司令官が問う。


「生きている金属ですか?」


「金属かどうかすらもわかりません。


我々には金属のように見えるだけで、
もしかしたらすべてが未知の生命体で
構成されている可能も考えられます。


すべてがナノマシンで構成されている兵器が
研究されているように。


ただ、起動した際には、
表面は硬質化したまま、
間接に当たる部分が柔らかくなり、
手足が動くのではないか
と推測はされています。


先ほどの緊張と緩和を
定期的に繰り返すことから考えましても、
戦闘においても
何かしら時間制限があるとも考えられます。」


天野はここまで聞くと、
そう尋ねざるを得なかった。


「つまり、これを動かす術はないと?」


それに関しては進士司令官が答えた。


「博士が言うには、
動かせる人間がいるそうです。
この世界のどこかには。


もしかしたら平行世界の人間かもしれない、
とも言っていましたが。
今我々も血眼になって探してはいるのですが、
雲を掴むような話ですからね。」


進士の答えに天野はさらに疑問を抱いた。


「特定の人間なら動かせるということですか?」


「そうです。


別次元で滅んだ文明の子孫が
この世界には居るそうです。


自分達の次元で文明が滅ぶ時、
この世界に移住して来たのでしょう。


正しくはこの次元の平行世界のどこかに、
ですが。」


「何かわかりやすい
目印的なものはないのですか?」


「この世界で言うところの超能力を
持っているはずだ、ということでしたね。


ただまだ能力に覚醒していない可能性もあるので、
見つけるのは至難の技でしょうね。」


実際に人材担当の『チーム餓鬼道』などが
血眼になって該当する人物を探していた。


この最終兵器自体の存在は
知らされてはいないが。


「次の戦いには
まず間に合わないでしょうが。
しかしいずれこの巨人の力が
必要となるでしょう。


特に大型生物、大型機械兵器との戦いでは。」


天野は進士司令官の言葉を聞いて気づいた。


『そうか、巨大人型ロボット兵器ではなく、
光の巨人という可能性もあるのか。』











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