非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

仮称・多次元クラウドシステム

理解を深めるために
北條に再度質問する天野。


「そもそも高次元エネルギーとは
何なんでしょうか?」


「博士によれば
高次元世界にある無限エネルギーということですね。
本来高次元にアクセスさえ出来れば
誰でも使用出来るということですが。」


「それを理解してもらうためには、
もう少し順を追った説明が必要ですね。」


北條は天野が理解出来るよう
分かりやすく順を追って説明をはじめる。


「博士は、他の次元から
自由に物を取り出したり、
仕舞ったり出来るんですが、
これはこちらの世界の概念では
クラウドネットワークが一番近いらしいんです。


ネットワークサーバーの
クラウド領域を利用すれば、
いろんな端末から
データをアップデートして保存したり、
データをダウンロードしたり出来ますよね。
ただしこれはデジタルデータに限る。」


「博士は別次元、おそらくは高次元の
クラウド領域に物質そのものを
アップデートして保存することが出来て、
自由にダウンロードしてくることが出来る訳です。
ただこの場合は、複製ではなくて
物質本体なんですがね。」


「それってもしかして、
猫型ロボットが便利なポケットから
便利な道具出すやつと同じですか?」


天野の物言いに、
北條は笑いながら答えた。


「そうそう、そんな感じです。
もちろんあんなに便利じゃないですけどね。


我々も今それを博士から学んでいて、
『仮称・多次元クラウドシステム』の
研究を進めているんですよ。」




「高次元エネルギーは、
本来高次元にアクセスさえ出来れば
誰でもが使用して構わないものらしいんです。


この世界で、そう、海に例えると、
国家単位で領海などはあったとしても、
この世界の海水は誰のものでもないですよね。
誰もが自由に使えるものです。
高次元エネルギーも
本来はそういうものらしいんです。
ただ高次元にアクセス出来る人間、
というか生命体が
今は高次元人しかいないですから。
高次元人しか使っていないということですね。」


「では博士は噂どおり、
高次元人なんですかね?」


「本人は何故かはっきり言及しないんですけど、
おそらくそうでしょうね。」


『本来はすべての次元の存在が
等しく平等に使えるという無限エネルギー、
すべての次元すらも生み出した
大いなる創造主の恵みということなのか?』


天野はそう感ぜずにはいられなかった。




今まで何度も聞いてきた説明を
進士司令官は改めて天野と一緒に聞いていた。


「今使える高次元エネルギーはないんですか?」


天野は次の戦いを見据え、
ストレートに聞いた。


「前回我々が使った量を、
水道の蛇口から
めいいっぱい出てくる水量だと例えると、
今我々が使えるのは、
水道の栓を閉めた後に
蛇口から垂れ落ちる水滴ぐらいのものですよ。」


「それでも少しでもあるのなら
使えないですかね?」


天野は一通りの説明を聞き腑に落ちたのか、
やっと軍人らしいことを言いはじめた。


天野は次の戦いにあたり、
漠然と考えていたことを話しはじめる。


-


「なるほど。」


進士司令官は天野の案に興味を示した。
北條も興奮気味に反応した。


「微々たる量を
防衛兵器に転用するんですね。
確かにそれであれば
量は少なくても可能かもしれない。


しかし問題は、
この世界の物質が高次元エネルギーに
耐えられるかどうかですね。


『仮称・高次元エネルギー集約砲』の砲身も、
この世界にはない物質で構成されていて、
砲の高出力には、この世界の物質では
耐えられないんですよ。


まぁそこも低出力であれば、
なんとなるかもしれないですけど。」


眼鏡を押す進士司令官。


「わかりました、
私から博士に手伝ってもらえるよう
依頼をしておきましょう。」











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