非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

リクルーティング会議

リクルーティング会議には
司令官である進士、
真田、財前、一条、天野、
その五名の他に、幹部連と
人材リクルーティングチーム
『チーム餓鬼道』のスタッフが
二十名近く参加していた。


『チーム餓鬼道』の議事進行のもと
各担当者が現状報告を行い、
真面目に堅苦しく、
遠回しにマイルドに発言しているが、
その内容はどれもとんでもないものばかり。


簡単にまとめれば、刑務所や更生施設、
極道の組やマフィアなどから
反社会的な人材をスカウトしています
ということと、
洗脳や人格矯正プログラムは順調です、
という現状報告が延々と続くのだ。


さすがに天野もこれには辟易してしまう。


-


全担当者が一通り発表を終えると、
『チーム餓鬼道』の議事進行に戻り、
質疑応答が行われる。


その際に
『ニート』『引きこもり』と呼ばれる層が
再度クローズアップされる。


「ニート、引きこもりにつきましては、
経済的負担を親御さんがされていることが多く、
親御さんがご存命の間は問題ないのですが、
ご逝去された後、
自立が出来ないなどの問題が生じております。
是非そうした方々には、
我々がお力になれればと思っております。」


その発言を受けて進士司令官は
独自の使命・役割論を展開する。


「私は天涯孤独故に、
親や家族というものがよくわかりませんが。


親御さんは自分の子供に献身出来ることに
きっと喜びを感じておられるのでしょう。


自分の子供に身も心も捧げることにより、
得難い満足感、幸福感、愛情を
得られているのかもしえません。


そうであれば、ニート、引きこもりは、
そうした親御さんの
満足感、幸福感、愛情を満たすために、
必要な存在と考えられ、
ニート、引きこもりという状況は、
そうした親御さんの幸福のためには、
なくてはならい必須条件であるとも考えられます。


それが彼らの使命であり、役割であり、
現在、彼らはその使命、役割を
果たしている最中なのかもしれません。


そう考えますと、
我々が彼らを強引にリクルーティングしてくるのは、
本来の理に反するのかもしれません。


ですが、無事現在の使命・役割を全うされた暁には、
次の使命・役割として、
是非我々にご協力いただきたいと考えています。」


「今、すごそうに言い換えただけですよね?」


天野は冷静に小声で突っ込むが、
財前女史は顔を真っ赤にして、
目に涙を浮かべながら、
首を縦に何度も振りながらウンウンと頷いている。


『この人こそ洗脳されているのではないだろうか』


恋する女は
相手の男に洗脳されていると言っても
間違いではないかもしれない。




進士司令官の発言が
契機になったかはわからないが、
議論はヒートアップしていく。


特に引きこもりの自宅勤務、
オフサイト勤務、業務委託については
みなから様々な意見が述べられる。


「どうせ我々は
未成年には協力を仰げないのだから、
高齢者の親御さんと一緒に暮らしている
無職の成人男性・女性をリスト化して、
訪問面談すればよいのではないか?


事前に親御さんも交えて話しをすれば、
親御さんだって自分達の死んだ後のことを
気にせずに済み、安心出来るだろう。」


「現時点でも、
SNSなどを駆使したネット上での世論醸成にも
力を発揮してもらえるのではないでしょうか。


ここから先は『ピース9』との世論操作争いが
苛烈になっていくと思われます。


ステルスマーケティング要因として、
積極的に登用していっても
よいのではないでしょうか。」


「しかしやはり
自宅からということになりますと、
セキュリティの問題があるようにも思います。


もし万一我々とステルスマーケティング
関係者のつながりが露見した場合、
それこそ『ピース9』から
やり玉にあげられるのではないでしょうか。」


「セキュリティの問題が解決されるのであれば、
積極的に戦力として
活躍してもらうことも可能でしょう。


そもそもPC操作には強い人材なのですから、
自宅からドローンを操作してもらい、
空撮や諜報活動、技術開発部門次第では
敵異世界への偵察も可能となるかもしれません。


また戦時には戦闘行為に参加してもらう
という可能性も考えられます。
例えば、
ドローンによる化学兵器等の空中散布など、
限定した場所では爆撃機よりも
はるかに効率だと考えらえます。


現在ドローンの大幅なコストダウンが実現され、
大量生産が可能ですから、
それを操作する人材需要も
増大していくのではないかと思われます。」


「VRで、さもオンラインゲームを
楽しんでいるかのように、
現実世界のリアルアバターを使って
戦闘を行うといった研究も行っておりますし、
リアルアバター操縦者として
適しているようにも思いますが。」


「リアルアバターは、
アバター制作コストがかかりすぎる
という問題を抱えていますから、
ここでそれを論じるのは
場違いではないでしょうか。」


ストレートな一条女史は
この遠回しにマイルドな会議に
ウンザリしている様子。


「いつも思うんだけどさー、
うちの会議っていつも
国会答弁みたいになるよねー」











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