非人道的地球防衛軍とゾンビ兵

ウロノロムロ

司令官補佐、一条遥

「『一条さん』も『財前さん』も
お名前からして、
国防軍の名門閥のご出身ですよね?」


「そうだよぉー」


「どうしてここに来たんですか?
名門閥の出ならわざわざここに来なくても
いくらでもよいところがあったでしょうに」


「そうだよねぇー、
普通はなんでこんな掃き溜めみたいなところに
来たのって思うよねぇー」


「私はもちろん司令官殿のお力になるためだ!
あのお方に全身全霊を以てお仕えする、
それこそが私の至上の喜びなのだ!」


財前女史は司令官への熱い想いを
延々と語り続ける。


「私はねぇ、
家が家だけに、
小さい頃からかなり厳しく躾けられてねぇー。


その反動なのか頭の中で、
いろいろと悪いことを妄想して
楽しんでたんだよねぇー。


よく親に隠れて特撮やアニメを見たり、
ゲームをやってたんだけど、
主人公側のヒーローより悪役が大好きで、
この組織の話を聞いた時は、
もう本当にここしかないっ!
って感じだったよぉー」


「こんな可愛らしい見かけと
話し方をしているが、
こいつこそ真正のど変態だぞ」


財前女史が辛辣で過激な突っ込みを放つ。


「もうひどいなぁ、
そんなことないよぉー」


「ただ、人体実験とか
改造人間とか拷問とか処刑とか、
昔からいろいろと頭の中で
妄想してただけだよぉ」


その発言に
天野がドン引きしているのを察した
一条女史は慌てふためく。


「ほんとそんなんじゃないんだってばぁー」


「私の夢は、いつか改造人間を
つくることなんだからねぇー!」


ここまで突っ込みをためらっていた天野も
思わず突っ込みを入れざるを得ない。


「いやっ、
この流れでそんな夢語られても、
むしろ一般市民拉致して改造する
悪の組織しかイメージ湧かないっす」


「殉職しそうな刑事が、
改造手術受けて超パワーを手に入れる的な
ロボ刑事みたいなやつでもいいしぃー、
改造人間でも全然オッケーなんだからねぇー」


「それってまだ死んでない人間の体を
機械に置き換えたり、メカのボディに
脳移植する類のやつですよね?」


「正義のヒーローぽく話してますけど、
この流れだと非人道的にしか
聞こえないんですけど」


「うーん、
なんで改造人間って
悪の組織がつくることに
なってるんだろうねぇー」


「やっぱり正義の味方がやると
倫理的にアウトなのかなぁー」


天野はこの時思った
『この二人はまともな人達だと思っていたけど、
もしかしてダメな人達なんじゃないだろうか』と。


-


「それより貴殿こそ、
なぜここに来ようと思ったんだ?
なんでも志願して来たと聞いているが。」


財前女史は比較的落ち着きを取り戻していた。


「国防軍からこちらに移動では、
向こうの人間の考えからしたら
左遷の扱いだろうに」


「国防軍は、
他国からの侵略に備えるというのが、
本来の役割じゃないですか。


でもあの未確認飛行物体の侵略攻撃以降、
どの国も他国を侵略するどころの話では
ないですからね。


そもそも国連に参加している
国同士の侵略戦争なんて
もう何十年も起こっていませんから。


それよりも今は異世界住人達から
地球を守ることが
最優先ではないかと思いまして。


国防軍の人間は異世界との戦争に対して、
どこか他人事なんですよね、
地球存亡の危機だというのに。


それは自分達の役割ではない
という雰囲気が蔓延してますし。」


天野は軍人らしく真面目な締まった顔で語った。


「すごーい、
模範解答のようだよね、
面白味はないけどぉー」


辛辣な一条女史。


「いやぁ、感動したよ。
やはり軍人たるものこうでないとな。
司令官殿も貴殿のような方に来ていただけたら、
さぞ心強いであろう。」


「なにせここは非常識な輩ばかりで、
私達以外に常識人がほとんどいないからな。
常識的な考えを持った人間は大歓迎だ。」


『この二人は常識人ということで
本当にいいのだろうか』
と天野は疑念を抱いたが、
そこは敢えて口には出さなかった。











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