【胸糞注意】なテロリスト勇者、異世界を蹂躙す

ウロノロムロ

勇者と真実

勇者の首を掴み、
片手で持ち上げる魔王、
息も出来ずにもがき
宙に吊り下げられる勇者。


呼吸が出来ないため
勇者の顔は真っ青で、
今にもこと切れそうである。




しかし勇者の首から
魔王の手が離れ、
勇者は床に落ちる。


ハァハァと言いながら
空気を何度も吸い込む勇者。


対して魔王はその場に崩れ、
片膝を床に着く。


勇者の首を掴んでいた
魔王の手は鎧ごと腐蝕している。


「毒か……」


既に毒に侵された魔王の手は
変色し震えている。


「だから言ったろ、
相手に掛からないなら
自分に掛けるしかないって」


勇者はその言葉の通り
自分に能力を掛け、
自身を猛毒と化していた。


能力で魔王に毒を掛けようとしても
魔王が持つ無効化能力により掛からない、
だが勇者自身が猛毒となった場合、
勇者はただの毒として存在しているだけで
それを好き好んで長い間触っていたのは
魔王本人ということになる。


しかもそれはただの毒ではなく
鎧すらもあっという間に腐蝕させる猛毒。


暗殺にこだわっていた勇者、
魔王暗殺の方法は以前より
いくつか考えていた。


毒で魔王を倒すと言うのは
いかにも暗殺者らしいが、
状況的には暗殺からは程遠い。


-


次第に魔王の体にも猛毒が回って行く。


両膝を床に着いて猛毒に苦しむ魔王、
勇者はその仮面に手を掛け、
それを剥ぎ取ると、
仮面の下の素顔はやはり以前会った
大自然を愛して止まない爺さん
その人であった。


「冥土に行く前に、
教えてもらおうか、爺さん、
この世界の真実とやらを」




魔王、いや元人間の爺さんは
この世界で自分しか知らない
昔話をはじめる。


「もう今となっては昔のことだが、
この世界で疫病が流行ったのだ……」


その疫病は人間がもっとも
活力を持って生きている
十代後半から五十代の人間に
主に広まって行った。


そのウィルスは空気感染で
広まって行くタイプであったため、
瞬く間に感染者が膨大に増え、
パンデミックを引き起こし
数百万という人間が疫病で死ぬ。


元人間の大司祭であった魔王は、
寝食を忘れ昼夜を問わず
神に祈りを捧げ、ようやく
神からその治療薬を授かった。


既に自らも感染初期であった司祭が
自らにその薬を試すと、疫病は治ったが、
肉体が変貌し魔族の者へと成り果てる。


だがその治療薬は
既に疫病に苦しむ人々の手に
渡ってしまった後で
特定の年代の人間達はすべて
魔族へと変わってしまったのだった。


『完全に神の医療ミスじゃねえか、
神が魔族を大量生産してどうすんだよっ』


その後、神々は
魔族となった人間たちの
人間であった頃の記憶を消したが、
圧倒的に魔力が強かった
現在の魔王だけはこれに抗い
人間だった頃の記憶を
今もなお持ち続けている。


『おいおい、
医療ミスに、記憶改鼠で、ダブル役万かよ、
事実隠蔽も入れればトリプル役万だな』













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