【胸糞注意】なテロリスト勇者、異世界を蹂躙す

ウロノロムロ

海中の影

上空から海を眺めると、
透き通る海水の中に
幾つもの巨大な影が
進んで行くのがわかる。


魔王軍が用意した
巨大水棲生物の群れであろう。


転移で先回りして
敵の戦力を偵察に来ていた勇者。




進軍速度も速く、
水中のこれを捉えるというのは
なかなか容易ではない。


水の中を自在に動き回り
止まるも進むも思いのまま、
それと比べてしまうと
船舶の動きというのが
いかにも愚鈍に思えて来てしまう。


速度も劣り、小回りも利かない
そもそも傾いたら沈む、
浸水したら沈むという時点で
勝負になろう筈がない。




某超大国が誇る海上艦隊を
ごっそり転移強奪して来た勇者だったが、
さすがに前衛には出すことは出来ない、
後方から支援、
艦砲射撃ということになるだろう。


巨大水棲生物に
体当たりされただけで
おそらく艦隊の船は沈む、
それぐらいのサイズがある
巨大生物ばかりが揃っている。


となればこちらも
ビーストマスター能力を使って
前衛に巨大水棲生物を揃え、
後衛から艦隊の援護射撃、
上空から空爆と魔法
といったところか。


しかしそれだけではどうにも
勝てるイメージが湧かない、
良くてもイーブンか。


そもそも物理攻撃は
水の抵抗や浮力があり
水中ではその威力が落ちる。


それで果たして
この巨大水棲生物の大群に
致命打を与えられるのか。


-


偵察中の勇者にはもう一つ
腑に落ちないことがあった。


敵兵を乗せた船がない。


勇者はてっきり
海面を覆い尽くさんばかりの
大船団が来るものだと思っていた。


いやその方が
どれだけ有り難かったことか、
それならまだ
海上で戦うことが出来るが、
この編成であれば
海中戦になってしまう。


と言って水中に入れば敵の思う壺、
海中で水棲生物に敵う筈はない。




しかし海中では
いくら無敵であろうとも
巨大水棲生物ばかりでは
東側大陸の陸上に
上がって来ることは出来ない筈。


蟹などの足が生えている
水棲生物でもいれば別であろうが。


『まずは海上の航路を確保する、
ということか?』


どうにも納得がいかないし、
何かの罠と言う可能性も考えられる。


-


「やはり今回も
アンチ転移フィールドで来ましたな」


勇者が自軍に戻ると、
千里眼で敵の様子を見ていた
イヴァンがそう言った。


巨大水棲生物を包み込むような
フィールドが確かに見られた、
ゴーレムの時と同じものだ。


「海の魔獣なのに
アンチ転移フィールドを
発生させるのか?」


「おそらく、
装置的な物か何かを呑み込ませて
発生させているのでしょう、
アンチ転移石のような」


最初から予想はしていたが、
今回も転移系の技には
あまり期待出来そうにない。




前回とは根本的に
発想を変えなくては
今回ばかりは厳しいように思える。


さてどうやって戦ったものか。


勇者はしばし考える。











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