【胸糞注意】なテロリスト勇者、異世界を蹂躙す

ウロノロムロ

子作り推奨

「お前ら、子供作れっ!」


人間エリアの集落にやって来た勇者は、
少年少女魔道士団の子供達を集めて
いきなりそう言いはじめた。


「ちょっ、ちょっと、
勇者様、いきなりなんてこと
言うんですかぁっ」


顔を真っ赤にして
恥ずかしがっているテト。


「ぼ、僕達まだ子供ですよ」


「何言ってんだっ、
昔は十五歳ぐらいで
みんな結婚してたし、
子供だって作ってたんだ」


ちなみにこれは
日本の昔ということなのだが、
勇者は興奮してその説明を忘れていた。




「だから、僕達まだ
十五歳じゃないんですってば」


テトは賢くはあるが、
まだ十歳ぐらいの少年で、
他の子達も似たり寄ったりの年齢。


「えっ、ど、どうしよう、
あたし来月で十五になるんだけど……」


少年少女魔道士団のメンバーで
割と年長である少女は震えながら
小さい声で告白する。


「よし、じゃぁ、お前、
来月十五になったら子作りしろっ!」


「えーっ!あ、相手は?」


「その辺の爺でいいだろ、この際」


「えーーーっ!! 絶対ヤダっ!!」


少女が十五歳になったところで
適齢期の丁度良いお相手がいない。


さすがに相手が死にかけの爺では
少女も可哀想というものだ。


それ以前にこれは
児童へのセクハラという
最悪な事案ではないのだろうか。




「ところで、子作りって
一体何をするんです?」


テトは汚れの無い
純真な瞳で勇者を見つめる。


「何するかも知らないで
恥ずかしがってたんかいっ!」


こんな状況で性教育などが
まともに行われている筈もなく、
この子達がこれから成長し
子供をつくったとしても
この劣悪な貧困の中では
乳幼児の生存確率は極めて低い。


『こいつら絶対、
種として滅びる運命だろ』


この世界の人間達を
種として存続させようと思うのならば、
何か策を講じなければならない。


-


そもそも何故勇者が
突然こんなことを
言い出したかというと、
この世界にいる人間の死滅が
勇者の敗北条件として
確定したからである。


昨晩久しぶりに
人間の集落に戻って来て
安眠していた時、
枕元に気配を感じて勇者は目を覚ます。


はじめ敵襲かと思い
咄嗟に身構えた勇者だったが、
よく見るとそこには
勇者が転移する時に会った
女神の姿があった。


おそらく女神は実体ではないのだろう、
半透明で青白く輝いている。


「あの、最近
疑問をお持ちのようでしたので、
ちょっと回答にまいりました……」


転移の女神は相変わらず
気弱そうで自信なさげだ。


「この世界の人間が死滅した場合は、
バッドエンドということで、
ゲームはクリア出来ますが、
あなたの負け確ですから……」


「ちょっ、待てっ!
お前舐めてんのかっ!?
そんなのはじめから無理ゲーじゃねえか」


突然のルール追加にいきどおる勇者。


「そういうことで、
よろしくお願いしますぅ……」


女神はそう言い残すと
とっとと消えて行った。


勇者からすれば騙されたというか、
途中でミッションのクリア条件が変わった
クソゲーではないかという思い。


「クソゲーにもほどがあるわっ!」


叫ばずにはいられなかった。




という訳で勇者は
この世界の人間を死滅させない方法を
考えなくてはならなかった。











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