【胸糞注意】な勇者請負人、そして神々、時々ドラゴン

ウロノロムロ

勇者総選挙

勇者総選挙を開催することになり、
王女フィアナは、他の候補者達は
自分が集めて来ると言い張った。


不正をおそれてのことだろうか、
この勇者への信頼の無さが伺える。


一体どうするつもりなのか、
勇者にも興味があるところではあった。


今回の勇者召喚にあたり
他の勇者候補であった者達を
王女は部下に集めさせ、
これを勇者総選挙に立候補させる。


他に勇者の候補が居て
この勇者を選んだと言うのなら、
確かに国王は無能と
言わざるを得ない。


「そうなれば、
俺も本気を出さないとな」


他の立候補者を見て
張り切る勇者だったが、
こいつが本気を出すと
全くロクなことがない。


確かに勇者は本気を出したが、
本気で思いっ切り間違えた方向に
どんどん暴走して行くことになる。


-


そもそも勝つためには
どんな手段も選ばない勇者に
選挙などをやらせれば
どんなことになるのか、
大体の察しは付くと言うものだ。


そう、思いっ切り不正しまくった。


献金と称して人々から金を集め、
それを軍資金に
投票権がある者達を金で買収し、
選挙活動に関する法もなく
選挙管理委員会もいないのをいいことに
半ば脅しのような不当な選挙活動や
不正投票を当たり前のようにやってのける。


それぐらいやれば
選ばれるのは当然のことで
勇者は総選挙で一位となり
晴れて正式な勇者となった。


その勇者のやり方を
余すところなく見ていた王も貴族も
ただただドン引きするばかり。


「民主主義がこんな制度だなんて、
思っていたのと全く違う……」


王女フィアナに至っては
絶句するばかりであった。


勇者総選挙の結果として、
この異世界に民主主義は
思いっ切り間違った形で伝わった。


-


勇者の言を受入れられ、
王政は廃止され
民主主義が導入されはしたが、
それも事実上名ばかりで
これまでと大きな変わりはなく、
ある意味では
もっと酷くなったかもしれない。


王と貴族は、大統領と議員に
肩書が変わったに過ぎなかった。


名誉、名声を欲しいままに
献金と称し金を集め、
賄賂、汚職をやりたい放題、
さらには税金を搾取し、
自らの私腹を肥やし、
富と財を成して行く。




王女フィアナは悲嘆に暮れて
泣きじゃくる。


「民の為の理想的な
政治体制だと思っていたのに……
まさかこんなに醜いものだなんて……
民主主義なんて汚らわしいっ!!」


まだ汚れを知らない
清廉潔白な生き方で
理想を求める王女には、
勇者が示した行動は
到底受入れられるものではなかった。


その一方で、
国王や貴族達は大喜び。


「生意気なのは気に入らんが、
これまでの武力による力の支配ではなく、
これからは金の力による支配の時代だと、
そう言いたかったのだな。


さすが勇者の言うことは違うものだな」




その後、勇者はしれっと
魔王を倒して帰って行ったが、
後には民主主義の悪しき部分、
賄賂、癒着、汚職、不正が蔓延する
退廃的な金満政治だけが残った。


金持ち達だけで
すべての事柄を決め、
すべてを金で解決しようとする国家が。




この不遜の勇者が
張り切って本気を出すと、
いつも最後はこうした
残念な結果となってしまう。


とりあえずまた一つ
異世界を間違った方向へと歪めた勇者、
異世界を転移して回る
流浪の冒険は続く。











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