【胸糞注意】な勇者請負人、そして神々、時々ドラゴン

ウロノロムロ

勇者請負人

この勇者
ただの勇者という訳ではない。


数多あまた存在する異世界を
勇者として転移
流浪して渡り歩き、
その世界が抱える
問題やトラブルを解決して回る
勇者請負人と呼ばれる者である。


とは言えこの気性、
性格であるために
異世界が抱える
問題やトラブルを
まともに解決したことはない。


大概その過程や
プロセスが無茶苦茶で、
事態がより酷いことになったり
悪化したりして、
目的を達成しても
後味が悪い結果で終わるという
トラブルメーカーのような存在。


現にこの世界に勇者として
やって来たというのに
早速トラブルを起こし
人々を困らせている。


こうした人材でも勇者として
派遣されてしまうぐらい
勇者協会も人材不足ということ
なのであろうか。




多くの場合は、人々が
勇者の助けが欲しいと願った時に
請負うけおう形で勇者が現れるのだが、
たまに神々から依頼されることもある。


しかし神々も騙したり
利用したりするような輩が多いので、
痛い目に合わないように
注意しなければならなかった。




こうした勇者請負人は大勢おり、
大体勇者として一度魔王を倒すなどの
ミッションをクリアした勇者達が
セカンドキャリア、セカンドライフとして
請負人になることがほとんど。


くだんの勇者も一度
魔王を倒してはいるが、その世界は
ほぼ半壊状態になってしまっている、
いわくつきの勇者。


この話はそうした
大勢いる勇者請負人達と
その転移した異世界を
語って行くものでもある。


-


さて、いきなり勇者に
王政廃止を迫られた王であるが、
勇者に考える時間が欲しいと頼み、
しばしの猶予をもらう。


その間、何度となく
王族の間で話し合い、
貴族等を交えて会議が開かれたが、
一向に結論が出そうな気配はなかった。


王だけであるならいざ知らず
貴族まで絡んで来るとなると
当然自己保身や権利、利権に
目が眩む者達が出て来る訳で、
こんな話し合いで決まる程
物分かりがいいのなら、
とっくに民主化されていても
全く不思議ではないから、
当然の反応だと言っていいだろう。


ついには、民のためを思って
王政と貴族制の廃止に賛同する
推進派メンバーが
毒殺されるという事態にまで発展する。


そうした内部の権力争いですら
勇者の狙いであったのかもしれない。


この勇者は目的のためなら
本当に手段を選ばない。


-


こうした混乱のさ中、
一人の王女が勇者に一矢報いる。


王女の名はフィアナ、
美しく品格があるだけでなく
まだよわい十四歳にして非常に聡明で、
今まで全くこの世界に
概念すらなかった
勇者が言う民主主義を
よく理解していた。


「あなたが強いのは
よくわかりましたけど、
だからあなたが
勇者だと言うのはおかしいわ。


あなたが王や貴族を否定するのなら、
あなたも民によって
勇者として選ばれるべきです。


そうでなければ、
生まれつき王族や貴族である者達と
変わらないではないですか」


勇者は思案する。


自分は過去に一度
魔王を倒した実績があって
この世界に勇者として来た訳だが、
確かにこの世界の国民から見れば
突然勇者だからと言って現れた
よそ者に過ぎないし、
それに納得いかない者もいるだろう。


この世界の国民に
勇者信任投票でもさせれば
それでよいのか?


それはそれであまり面白くない。


何故そこに面白い要素が
必要なのかはよくわからないが、
この勇者は生来のカオス属性なので、
面白くなれば何でもよいのだ。


魔王などは誰が倒してもいい、
むしろ面倒臭いぐらいにも思っている。


「よし、わかった。
では勇者総選挙を開催するとしよう」









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