PBJ プロフェッショナルバンディットジン

新種の蛇

第1話 「盗族とガキと酒」

今から50年前、世にはこう名乗る人々が居た。その名は「盗族(バンディット)」。
『盗む一族』…己の願いに命を掛けた異能力の権力者達だった…

そして半世紀の年月を経て今再び、「盗族」が蘇ろうとしていた!

第1話「盗族とガキと酒」

「ああぁ!!今日も飲みくれだあぁ!!」
ジン・ワイノ、26歳。彼は盗族として旅を続け、今日も酒場を求めて彷徨っていた。身長は177cmと大柄で、赤い髪をしていた。
「ったく!盗族なんてやってらんねぇよ!!」
ジンが酒に酔い、大声で叫ぶ。
「(おいおい、盗族(バンディット)だってよ。)」
ジンの大声を聞いていた、喫茶店でコーヒーを飲んでいた二人組がコソコソ話す。
「(まだ居たのか…数十年前に廃れたかと思っていたが…)」
「(それより、これからどんな盗族が出てくるのやら…)」
「(きっとド肝抜くやつらかもしんねぇぜ?)」
「(まさかな。)」

「酒だ!酒だ!酒だあぁ!!」
ジンがまだ酔いを保ちながら、酒場に入る。聞いていた周りの人達にはクスクス笑う人や、ビックリして小さくなっている人もいた。
「威勢が良いのね。」
店員と思わしき女性がジンに話しかける。
「よお姉ちゃん!疲れちまったから酒一杯持ってきてくれ!」
ジンが酒を頼んでから3分程すると128cmくらいの小柄な男の子が一杯のジョッキビールを俺に向かって運んでくる。
「おじさん、どうぞ!」
その男の子は笑顔でジンにジョッキビールを手渡した。
「おおボク!ありがとな!名前なんてんだ?」
「ルテロ・ボルボック、8歳!」
「ルテロか。良い名前だな!」
「今、店の手伝いをしていたんだ。」
「いつもやっているのか?」
「うん!皆『ルテロちゃん』っていう風に呼んでいるんだ!」
「そうか。」
「おじさん疲れているとか言ってたけど、何かあったの?お仕事?」
「ん?そこまで知りたいのか?」
ジンは好奇心に質問してきたルテロに対し、自分が盗族である事を喋ろうとした。
「うん、知りたい!」
「おじさんはな…(PB(プロフェッショナルバンディット)を目指してる盗族なんだよ!)」
ジンは周囲の人に自分が盗族であることを知られないように静かな声で喋った。
「バンディッt…」
ルテロが喋ろうとした所をジンは手でルテロの口を押さえた。
「ムグッ…!ウウウ…!」
「(しぃ!大声で喋るな!)」
ジンはルテロから手を離す。
「(何で?)」
「(ここで盗族であることを知られたら大変な事になる。一気に酒場なんかパニックになる。何故なら盗族の中には虐殺を行う奴が沢山居るからだ。まぁ俺はそんな事はしないから安心しろ。)」
「(とか言いつつも、『盗族なんてやってらんねぇ!』なんて言ってたけどね。)」
「…それは(汗)」
ルテロに図星を突かれてしまった。しかも8歳のガキにからだ。
「(でも、なんでおじさんは盗族になったの?)」
ルテロは、何故ジンが盗族となったのかウズウズした様子になって気になっていた。
「(俺は…妹を助けたいんだ…)」
「?」
ルテロは訳が解らずに首を傾げた。
「(どうして?)」
「(俺の妹であるユワは、盗族の一人に殺されたんだ…)」
「(え…)」
真剣な眼差しで話すジンに、ルテロは驚きとショックが混じったような感情になった。
「(だから俺はそいつに復讐する意味でも、盗族になった。そして今、こうして旅に出ている。)」
「(そうだったんだ…)」
「とまぁ、おじさんはこういう仕事をやっているんだ。仕事というよりは遊びだがな。」
「でも、僕すごいおじさんの旅に興味があるんだ!」
ジンは「こいつは何を可笑しな事を言ってるんだろう。」と当然ながら疑問が生じた。
「どうしてだ?」
「僕ね、人生で一度きりでも良いから旅をしたかったんだ!」
「ルテロ、気持ちは解るが旅とはいえお前にはあまりにもきつい…」
「でも、おじさん一人でしょ?」
「まぁ…そうだが。」
「一人より二人の方が楽しいよ!それに僕、どんな困難が有っても絶対に退(ひ)かない!」
「本当か?」
ジンはルテロを見つめる。しかし、真剣な眼差しで答えたルテロを見て両目を瞑りながらフッ…と笑う。
「よし、そこまで言うなら決まりだ。親父さんとお袋さんの事心配なら手紙でも書いてきな。それに、旅なんか金と明日のパンツで十分だ。余計な荷物は持ってくるなよ。」
「やったー!」
「ただ、マジで『ボクもうお家に帰る ︎』なんていう風に尻尾巻いて逃げんなよ?」
「解ってるよ!」
「そういえば、言うの忘れてたな。俺はジン・ワイノ、26歳だ。」
「ジンかぁ、呼びやすいな!」
「だろ?」
ジンとルテロが約束を終えると、酒場の出入り口からドタバタと男性が助けを求める叫びが聞こえてきた。
「お…お前ら!大変だ!盗族だ!」
「なにっ!」
ジンが顔色を変える。同時に周囲の人間も騒(ざわ)めき始める。
「盗族なんてまっぴらだ!俺は逃げるぜ!」
酒場に居たスキンヘッドの20代後半ほどの男性が急ぎ足の如く酒場を出て行こうとする。
「やめろ!その入り口から離れろ!!」
ジンが呼び止めるも、男性はそれを無視するかのようにまっしぐらに出ようとした。すると出入り口のドアを銃弾が男性ごと貫通した。
「ぎゃああああああああ!!」
男性は絶叫の末、ぐったりと重くなった。そして、ドアを蹴飛ばして破壊し左手にはメリケンサック、右手には狩猟用の散弾銃を持った大柄なヒゲの濃い男が乗り込んでくる。
「ふぅー!気分が良いぜ!酒場に入るとよォ!!」
大柄な男は床に倒れていた男性の身体を横へと思い切り蹴飛ばす。
「おいおい!!清掃係はいないのか!酒場くらい清潔に保ってくれよ!」
それを見ていたルテロは気分が悪そうな顔をして泣きそうになっていた。
「(ひどい…)」
「(大丈夫だルテロ!心配するな、俺がぶちのめしてやる。)」
ジンはルテロをこれ以上心配させないように慰めた。
「(でも!)」
「(俺はあいつと同じ盗族だ。勝てない訳はない。)」
大柄な男はホルダーに散弾銃をしまった後、席へと座り肘をついた。
「ああ…姉ちゃん!ビール一杯くれよ!」
大柄な男はすぐさま運ばれてきたビールを一瞬の内にたいらげる。
「プハァァッ!!たまんねぇぜ!!」
「そりゃたまんねぇだろうな!」
ジンが男に向かい話す。
「ああ?何だてめぇは?」
「お前、盗族だろ?」
ジンが男に盗族であるかどうかを話すと、机を思い切り叩きながら怒鳴り始めた。
「それがどうしたぁッ!!」
「酒場ではもうちょっと静かにしな。特にお前みたいなやつはな。」
「てめぇ舐めてんのか?俺が盗族だからって何が知りたいんだ!」
「俺も、盗族だ。」
大柄な男はゲラゲラと笑い出す。
「ダァーッハッハッハッ!!面白れえ!俺とお前が盗族同士だから勝負しろって事だろ?」
「そうだ。」
大柄な男は笑い顔から一変して憤怒の表情を見せる。
「舐められたもんだな…ええッ!?」
大柄な男はジンの首を絞め上げる。
「…。」
「ヒッヒッヒッ!!痛ければ痛いって言って良いんだぜ!!ヒーロー気取りで強がんねぇでよ!」
「その程度か?」
ジンはグググッと締め上げた男の両手を握る。
「うぉぉお!!(何てパワーだ!!)」
「その手を、離しなッ!!」
ジンは男の手を振り払う。
「ヘヘッ!この力が通用しない…ならばっ!!」
男はズボンのポケットから小さな瓶を取り出す。
「小瓶?」
「そうさ。この小瓶の中には、アルコール濃度96%のスピリタスが入っている。俺が自らブレンドして作り出した酒さ…」
「多趣味な野郎だな。」
「そして、このブレンドした酒は俺の『酒乱(ドランク)』の能力と身体能力に凄まじくマッチする…この酒を一滴飲んだだけでも、貴様に勝ち目は無い!」
男は酒を一滴、二滴と飲み始めた。
「フゥ…力がみなぎるぜ!!忘れてたが、俺の名前はドゥース。冥土の土産に覚えときな!!」
「やってやるぜ!!」

続く

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