本ノ森

真名 蓮

詞ノ葉ノ森2

手を引かれ続けること10分。その10分間は、ドキドキが止まらなかった。
 そして到着した場所は、本屋の『森本』だった。
「さぁ、ファンタジーの世界に行こうか!」
「え? それって一体……」
 『森本』の自動ドアが開いた。
少し生暖かい風が前から吹いた。普通、冷房の冷たい風のはず。
眼前の光景は、1度見た事のある幻覚。
「これって森ですか? ここって本屋ですよね?」
「うんどちらでもあるかな」
「どういうことですか?」
「本屋でもあり森でもあるんだよ」
「そうなんですか」
そのリアクションに詞葉さんは無反応だった。ただ前を向いて真っ直ぐ歩いてる。通い慣れた道をただ歩いてるようだった。
歩き続けると、視界が急に明るくなった。
そこには、とても大きな巨木があった。樹齢は、とっくに100年を超えてるだろう。
「あの……」
詞葉さんは振り返らずに話し始めた。
「ここはね、記憶の森って言うんだよ。他の導きの森とか」
「そうなんですか……なんのために?」
「私もよくわかんないよ」
「そうですか」
振り返って、
「1人で居たい時とか、ゆっくり本を読みたい時に、私はここに来るね、お気に入りの場所だよ」
とニッコリと笑った。
「僕もここ使ってもいいですか?」
「いいよ! 使っても、でも忘れなで欲しい事があるんだ」
「何ですか?」
「この大樹には、触れないでね」
「はい……」
人間ダメと言われると実行したくなるんだよなと思う結翔。
「結翔くん。ここで話そ」
「はいッ!」
結翔の返事に、詞葉は優しく微笑んだ。

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