本ノ森

真名 蓮

プロローグ

 僕は、親と喧嘩して家を飛び出した。
息が切れても走り続けた。とても暑い、走り出す前から、汗をかいていた。Tシャツが汗でくっついて気持ち悪い。
「暑い……」
とにかく涼しみたくて、冷房が効いた所へ入った。
「いらっしゃいませー」
心のこもっているか分からない声で、出迎えられた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
呼吸を整えて、顔上げると大きな棚がずらりと並んでいる。
 「本屋か、初めて1人で入ったな」
 子供の頃、親と行ったきり本屋には行っていなかった。漫画も雑誌も勿論小説も買わない。
本屋とは無縁の生活を送っていた。
この店の広さと本の数、棚や静かで落ち着く空気に圧倒され頭を支配していた怒りと罪悪感は、どこか行ってしまった。
「本屋ってこんな凄いとこだったけ?」
1人で入ったことがない上に、無数にある本達はさらに好奇心をそそる。
 何を読もうか……堅苦しくて頭を使うのは、読みたくないな。
大きな本棚を睨んで長考していると、右から優しい声が鼓膜を震わせた。
「何をお探しですか?」
綺麗な女性店員が声をかけてくれた。ここで働いてるのには、勿体ない。学生さんかな?
「えーっと、この店で1番読みやすくて面白い本をいくつか教えてくれませんか」
「……そうですねー、お好みのジャンルとかありますか?」
「いや、あまり読まないので。ないですね」
 「そうですか、それなら男子に人気なアクション系とかは?」
 「じゃぁそれで」
 「金色のKATANA」
 「ありがとうございます」
ページを開けると、一瞬でその世界に呑み込まれた。

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