元王太子は気ままに暮らしたい

こうじ

男爵令嬢の決意

 僕が身元を言った瞬間、彼女はガタガタ震えだして汗を掻き出した。
「も、申し訳ありませんでしたっ!!」
「あっ、土下座しなくていいからっ!! 貴族が平民に土下座したらおかしいでしょっ!?」
「で、でもリゼル様の人生を壊して仕舞って・・・・・・、知らなかったとは言え本当に申し訳無く・・・・・・。」
「もう昔の事だから落ち着いてっ!! 僕は気にしてないからっ! 貴女は当事者じゃないでしょっ!?」
 何とか彼女を宥めさせた。
「でも、彼女に妹がいたのは知らなかったよ。君の事は彼女から聞いた事無いから。」
「私は姉や家族とは仲が悪くて・・・・・・、いない者として扱われて来ましたから。」
 彼女、『レイン・レンクス』はポツリポツリと境遇を語り出した。
 小さい頃から家族からは虐待を受けてきた彼女は逆らえない性格になっていた。
 特にエマからは激しい苛めを受けてきたらしい。
 そのエマが弟の作戦に協力して僕に近づいて来た。
 そして、成功して宰相の息子と付き合い結婚、レンクス家は男爵家から伯爵家へとランクアップした。
「最初は両親も浮かれていたんですが国の財政が苦しくなって来ていて・・・・・・、ある時姉から言われて・・・・・・、私は役に立てる、と思って・・・・・・。」
「でも、やっている事は下手したら反乱罪に問われるかも知れないよ。まぁ、皇太子にも問題はある、と思うけど。」
 下心あって近づいて来てるんだから、ばれたら重罪になりかねない。
「はい・・・・・・、だからどうするべきか悩んでいて・・・・・・。」
 これはもう乗り掛かった船だ。
「レインさんはどうしたいんですか? このまま皇太子様を騙して皇太子妃の座を座りたいんですか?」
「そんな事はしたくありませんっ! 私から見ても皇太子様と婚約者の『レイチェル・ハート』様はお似合いのカップルです。」
「だったら、貴女自身が自然にフェードアウトしていくべきだと思いますよ。下手な荒波は起こさない方が良いんです。」
「でも、そうなると私は家族に何をされるか・・・・・・。」
「そんなに大事なんですか? 話を聞いたら貴女の人生を邪魔しているようにしか見えないんですが。」
「え・・・・・・?」
「レインさんの人生はレインさんの物です。貴女の人生の邪魔をする様な輩はさっさと切り捨てた方が良いですよ。」
「私が・・・・・・、切り捨てる・・・・・・?」
「はい、此方から捨ててやるんです。僕も最初は捨てられた、と思いましたけど今は『捨ててやった』て思ってるんです。僕がいなくなってから国の財政は苦しくなったでしょ? 僕が口煩く言ってきたからなんです。『国民の生活重視』、『贅沢禁止』を掲げて来ましたから。」
「リゼル様て、本当に国の事を考えていらっしゃったんですね・・・・・・。」
「でも、思いは伝わらなかったみたいですけどね、でも、この3年間で色んな経験をしたお陰で自分が如何に狭い世界で生きてきた事がわかりました。レインさんも今の自分を捨ててみたらどうですか?」
「・・・・・・。」
 彼女は黙っていたけど僕の思いは伝えた。
 後は彼女の行動次第だ。   

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