自由気ままな最強パーティ!

水無月空

三十七話 俺とミーク

 ここは、森の奥深く。
 とても、暗い。葉と葉の隙間から差し込む
 木漏れ日がほんの少しの明かりをもたらす。
 そこにある獣道をもう少し進むと見えてくる
 神殿。私はここで、今の両親に発見された。
 そして、佑くんと出会った。
 今は、もう佑くんは遠い人。
 私が冒険に誘ったのは・・・。
 こんな事にはなる予定じゃなかった。
 もっと、佑くんとっ・・・。


「会議中に失礼します。陛下に伝令です。」
 かくかくしかじかと話を聞いた。
「はぁ?!ミークがいない、だと!?」
「そのようですね。」
「ちょっと、連れ戻してくる。」
 俺は思いつくところを駆け回った。
 途中途中に愛音や嶽、買い出し中のリコ。
 ルナは王族としての公務が忙しそうだったが。
 みんなにあった。
 みんなはミークがいなくなったことは
 まだ知らなかった。


 ミークはどこにもいなかった。
 思いつく場所はもう、ない。
 ・・・・・・いや、ある。
 ミークが見つかったと言われる、
 エルフの神殿。俺らの故郷のすぐ近く。
 ここから約1000㎞の場所。
 ミークのテレポートなら十分届く距離。
 俺の足なら休憩入れて3時間
 まだ、間に合う。
 今は夕方5時過ぎ。帰りはミークのテレポートで 
 夕飯までには間に合う。大丈夫だ。
 急げ。全力を尽くして。


「おぉーい、ミーク!どこだぁ?」
 神殿内を探索していると、地下室にミークはいた。
 神殿で一番綺麗な場所だと思った。
 植物が植えられ、中央には地下水が流れている。
 また、植物の中には薬草や毒草が混じっている。
 その部屋の隅、木でできた机と椅子、本が置いてある
 その机にミークは眠っていた。
 うつぶせて寝ていたので起こしに向かうと、
 机と、ミークの頬に涙の跡。
「おい、ミーク。起きろ、帰るぞ。」
「んむぅ・・・なっ!?佑くん?」
「あぁ、帰るぞ。帰りはテレポートを頼む。」
「う、うん。どうしてここが・・・。」
「それより、お前。どうしたんだよ。」
 ミークの言葉を遮るように俺は聞く。
「だって、私は。もっと・・・佑くんと一緒に
 冒険したかった。こんな、佑くんが遠くに
 行ってしまうとは思ってなかった。
 もっと、私は楽しいものを想像していた。」
「そうだったのか。」
「身勝手かもしれない。でも、でも!」
「分かった。分かったから、泣くな。」
 泣かないで欲しい。
 ミークの涙だけは、どうしても見たくない。
「俺は、どうすればいい?ミークはどうして欲しい?」
「私は・・・。」
 俺は国民とミークを天秤にかける。
 絶対的に国民の方に傾く。
 なのだが、俺自身のなにかがそれを拒む。
「もっと、佑くんと一緒にいたい。」
 その一言を聞いて1つ決心した。
「ミーク、聞いて欲しい。」
「なに?」
 国王をやめるのは国民に迷惑だ。
 しかも、演説であんだけの大口を叩いたのだ。
 申し訳が立たない。だけど、ミークといる時間を
 仲間たちと一緒にいる時間を増やしたい。
「ミーク、俺と・・・。」
 俺は、国王。今ならある程度の事は
 俺が自由に決められる。それだけの権力がある。
「結婚してくれ。」
 森のざわめき。神殿内を駆け抜ける風。
 地下なので、肌寒い。だが、暖かいランプの灯。
「・・・・・・はい。私を貰ってください。」
 一瞬の思案。その後返ってきたはっきりした言葉。
 俺は、乾燥した唇を湿らせる。
 彼女もまた同じだったようで舌で舐める。
 少しずつ近づく目と、鼻と唇。
 目をつぶると今までの思い出。
 そして、これからの未来を想像する。
 実現できるかな。というところで
 目を開く。すると頬を紅色に染めたミーク。
「帰ろうか。」
「そうだね。」
 声が神殿内でこだまする。
 静かな森は黙ったままで、木々の間から見える
 瞬く星は祝っているかのごとく光っている。
 そこに、18節のテレポートの詠唱。
 詠唱を切り詰めることなく1つ1つ丁寧に発音している。
 もう二度とこいつに悲しい思いをさせたくないなぁと思う。
「じゃぁ、いくよ。テレポート。」


「ただいまぁー。」
「「「「おかえりなさいっ!二人とも。」
「遅かったな。」
 帰り着いて玄関にはみんながいた。
 そして俺は愛音に、ミークはリコに目隠しをされ
 大広間に連れていかれるとパッと手を離される。
 たくさんの装飾と大きなケーキが目に入る
 さながらウェディングケーキのようだ。
「おめでとう、お兄ちゃん!」
「は?なんで・・・?」
 俺はひたすら困惑した。
「やー、この子たちがどうしてもって言うから
 私のテレポートと疑似空間であなたたちの
 会話を聞いてたのよ。」
 なんてことをしてくれたんだルシファーは。
 その後、恥ずかしがりながらも婚約の事を
 話した。何というか、すごく死ぬかと思った。
「あ、佑くん。早く男に戻ってね。」
「あっ・・・!」

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