3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

二百八十七話 到着4

「......アッケナイナ ......」


謎の化け物二体と遭遇した
二人は、武器の無い状態で
どうにかこうにか抵抗を
していたが、ルドルフは
金棒で殴り飛ばされ、
サッちゃんは蜘蛛のような
化け物に締め付けられて
足腰を負傷してしまった。


コレジャ、オラッチノ、ペットノ
データガ、トレナイ......


「オマエラ、ブキヤルカラ、
スコシハ、タタカッテミセロ。」


そう言って、腹部にある
ポケットの中に、忍ばせておいた
人間達の武器を雑に落とす。


「......後悔しますよ......」


ルドルフはあばら骨を何本か
やってしまったが、そんな
体でも弓を拾った。


「......」


サッちゃんもまた、這いつくばりながら
回復魔法専用の杖に手を伸ばす。


「戦う気ですか?」


「当然です。」


「お荷物だけは勘弁してくださいよ。」


ルドルフは巧みに弓をくるくると
回して巨人に照準を合わせる。


「ハント!!」















「ヒール!!」


サッちゃんの回復魔法により、
みるみるうちにルドルフの折れて
しまったあばら骨が治っていく。


「......はぁはぁ......何とか......倒せた......
次はあなたですよ! 天井に張り付いて
いる魔族め!」


武器を手に入れたルドルフは、
サッちゃんの回復魔法の援護を
受けつつ、ギリギリのところで
二体の化け物を倒すことに成功した。


「さぁ! 降りてこい!」


二体の魔族を撃破し、自信のついた
ルドルフはマッドサイエンを挑発する。
その一方で、回復魔法を連発したこと
により、魔力が限界に来ていた
サッちゃんはもうヘトヘトだった。


けど......あと一体だけなら、私達で
何とか......


サッちゃんは今にも膝を着いてしまい
そうな体に鞭を打つ。


しかし、サッちゃんのその考えは
一瞬にして崩れ去った。


「......ジャ、ツギハ、イッキニ
ジュッタイ、イッテミヨウカ。」


それを聞いて絶望する二人の背後には、
この世の物とは思えない化け物集団が
じーっとこちらを見つめていた。












「ぐっぁ......ぁあ!」


翼の生えた化け物に首を締め付けられる
ルドルフは、何とか抜け出そうと抵抗を
続ける。


「モット、シメロ。デモ、コロスナヨ。」


が、殺人兵器と化した化け物達は
マッドサイエンの指示通り、
ルドルフを痛め付ける。


このままじゃ僕は......


死の危険を感じたルドルフは、
今まで散々馬鹿にし続けてきた
サッちゃんに助けを求めようと
力尽きて倒れてしまっている
彼女に目を移す。


「......ドウシタ。サケベヨ。
タスケテッテ。アレハ、オマエヲ、
カイフクサセル、チカラガ、
アルンダロ。」


ルドルフの視線で感づいた
マッドサイエンは、


モット、ツヨクシメツケロ。


と、化け物に指示を出す。



「......ぁあ!」


嫌だ......回復魔法なんかに......
助けを求めるなんて......
何もできない、誰も救えやしない......
きっとあの時みたいに......
自分には無理だと言って......
僕を見捨てる......


「ナンデサケバナイ。
シニタイノカ? 
モット、イタイオモイ、サセテヤル。
ヤレ。」


ルドルフの首を絞めていた化け物は
ルドルフを地面に叩きつける。


「ぐはっ!!」


が、これだけで終わるはずがなく、
鋭く尖った足の爪をルドルフの
太ももに突き刺した。


「あああっ!!」


ルドルフはあまりの痛みにうめき声を
上げたが、化け物は更にその爪を
抜かずにそのままゆっくりと横に
ずらしていく。
それでようやくルドルフは
この化け物が自分の足を
切り落とそうとしているのに
気づいた。


「ホラ、サケベ。」


このまま......散々痛め付けられた挙げ句、
僕は殺されるのか......
嫌だ......
こんな化け物みたいになりたくない!!


「......けて......助けてください......」


ルドルフは自分が今、あの時からずっと
避けてきたことをしているのだと
思いながら


倒れたままのサッちゃんに助けを
求める。


あのときと同じように。


必死に助けてと、声を張り上げて。


その声が届いたのか、サッちゃんも
必死に顔を上げる。


だが、ルドルフは彼女の表情を
見て悟った。


ああ......あの時と一緒だと。


何で僕はこんなにも無様に助けを求めて
しまったのだろうと。


彼女に僕は救えないとわかってた
はずなのに。


回復魔法士なんて無能だって
痛いほど知ってるのに......


そんな涙を浮かべて、戦意の喪失した顔を
見るくらいなら、やっぱり助けなんて
求めなければよかった。

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