3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

二百八十五話 到着2

「タチアナ! まだだ! 止めを刺せ!!」


ズボッと魔王からナイフを抜いた
タチアナに、カクバは叫んだ
が、その必要は無くタチアナは


「石化切烈!」


と、容赦のない斬撃で魔王の
首を切り落としたのだった。


バタ......と首の無くなった魔王の
体はその場に倒れる。


「イン......フェルノ......」


すると、魔王が自己再生能力を
持っていることを知らないタチアナの
代わりに、ヨーテルが完全に魔王の
体と頭を燃やし尽くした。


「これで......」


今度は間違い無く、跡形も無く燃やし
尽くした。


ヨーテルは有るだけの力を
全て出し尽くして、膝を着いた。
そんな彼女にタチアナは


「すまない......遅れてしまった......」


と、駆け寄った。


「ほんとよ......ほんとに遅いわよ......」


けれど、これでようやく ......


そう思ったヨーテルに、再びあの声が
聞こえた。


「悪くない剣さばきよ。
まだこれほどの力を持った人間が
おったとは......どれ......顔を見せて
みよ。」


完全に燃やし尽くしたはずの
魔王は、体に何一つとして傷を
負っているようすは無く、
堂々と玉座に座ってタチアナを
見ていた。


「!!  フハハハッ!!
ようやくか......てっきり
ラーバは我に嘘を申した
と思っていたが......安心したぞ。」


魔王はタチアナの顔を
見た途端にやけに上機嫌になったが、
そんな魔王にタチアナは
一切興味を示さず、辺りをキョロキョロ
していた。


「ヨーテル。」


「?」


「私より先に彼は来なかったか?」


「彼?」


「隼人のことだ。君も知ってるだろう。」


「? あいつならあんたと一緒にフリーズ
ランドに行ったんじゃないの? 」


「......どこに行ったのだ......隼人......」


隼人がまだ魔王と敵対していないのと、
カクバ達が魔王城で魔族に全く
出会わずに、玉座の間に来れたのは
とある出来事が関係していた。


時を遡ること約一時間程前......


【魔王城 地下 人間室】


「喜べ、マッドサイエン様のご指名だ。」


「さっさと歩け。」


檻の中から出されたルドルフと
サッちゃんは目隠しをされたまま、
五体の魔族に連行されていた。


どうにかして逃げ出さないと、僕も
あんな醜い化け物に!!


ルドルフの脳裏にはこの人間室に
連れて来られる道中で目撃した、
人間達の哀れな姿が過っていた。


くそ......せめてこの目隠しのマスクと
手錠が外れれば......


ルドルフがそう思っていた時、
魔王城がグラッと揺れた。


「なんだなんだ! 地震か!?」


実はこれ、カクバ達が魔王城に
攻め込む前、ヨーテルが
一発強力な魔法を魔王城に
お見舞いしたのが原因だった。


ドタバタとルドルフやサッちゃん、
そして二人を連行していた五体の
魔族達が倒れる。


「ぁいったぁ......」


その時、サッちゃんはまあまあの
勢いで地面に頭をぶつけたが、
その拍子に目隠しのマスクが片目
だけピロッと外れた。


あ! 鍵!!


サッちゃんの目の前
には同様に頭をぶつけて気絶した
魔族がいた。運の良いことに、
その魔族の腰には何本か鍵がある。


「いってぇ......なんだ今の揺れは......」


「糞......頭が......」


幸いにも、他の四体はまだ自分が
鍵を見つけたことに気づいていない。
サッちゃんは手錠で縛られた手を
ぐーっと近づけて何とか鍵を
盗み取る。


私の手錠は無理でも、ルドルフさんの
手錠は外せる!!


サッちゃんは魔族達に気づかれない
ように、そっとルドルフの手錠に
一本目の鍵を差し込む。


違う......


二本目......これも違う......


じゃあ、残ったこれが!!


と、ここでサッちゃんはミスを
犯してしまった。
手錠の鍵がこれだとわかった嬉しさと、
自身も手が手錠で縛られている為、
上手く手錠の鍵穴に差し込むことが
できずに、あろうことかルドルフの
腕にぶっ刺してしまった。


「痛!! え!? な、何!?」


そうなると、当然の如くルドルフが
悲鳴を上げる訳で......


「なんだ? お、おい! お前何して
んだ!」


「こいつ鍵持ってるぞ!!!」





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