3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

二百五十三話 フリーズランド 13

パチパチと音をたてながら燃える火が
消えてしまわないように、
小枝をくべていく。


「......ん......」


すると、隣に寝かせていた
タチアナがようやく目を覚ました。


「起きたか。」


「......? ここは......」


まだ寝ぼけているのかぼーっと
した目でこちらを見てくる。


「近くに洞窟があってな。
今はそこで身を隠してるんだよ。」


タチアナを雪の中から掘り出した後、
俺は急激に冷えた体を暖めるため
どこか密閉された場所を探し、
運良くこの洞窟を見つけた。
中に入ってみると何故だか
小枝が何十本も保管されていた。
おそらく昔、俺と同じように
遭難してここにたどり着いた者が
いたのだろう。
その形跡なのかもしれない。


「洞窟?」


寝起き後は弱いのかタチアナは
未だにぼーっとしている。


「寝ぼけてるのか? さっきまで
俺たちは吹雪姫とかいうやつと
戦ってたんだぞ。」


「!!! そ、そうだった!!
それで奴は!?」


急に目をカッと開いたタチアナは
今すぐ起き上がろうとするが、
俺はそれを止める。


「落ち着け。あの魔族の居場所は
わからんが、多分俺たちはまだ
見つかっていない。それに、
今は体を暖めるのが先だ。」


「......そうだな......君の判断が
正しい。」


タチアナは少ししゅんとして
焚き火の前に座る。


「......私は君に助けられてばかり
だな......」


「どうした、急に。」


「いや......ジュラ島の時や
呪覆島の時といい、君は私を
何度も助けてくれた。
なのに......私は......君の前では
常に弱者だ......情けない。」


「弱者ね......」


俺は弱くなった火に、残り少なく
なった小枝をくべながら、
タチアナの落ち込んだ顔を見る。


「もうすぐ、俺はこの世界から
いなくなるだろうからこのさい
はっきり言うけど、俺はお前がうら
やましいよ。」


「え?」


「タチアナ、お前は俺が持ってない
ものをたくさん持ってる。」


「お世辞ならよせ。」


「お世辞じゃない。お前は
強さもリーダーシップも頭脳も
持っている。それに......」


「それに?」


「タチアナ、聞きたいことが
あったんだ。」


「聞きたいこと?」


「なんでお前はその若さでこの船に
リーダーとして乗ったんだ? 
それに人から聞いたんだが、
この討伐隊を提案したのは
お前だって言うじゃないか。
なぜそこまでするんだ?」


「......簡単なことだ。」


すると、タチアナは少し恥ずかし
そうな顔をして俺に目を向ける。


「笑うなよ......」


「笑わねぇよ。」


タチアナは自分が恥ずかしがって
いるのに気づき、深呼吸を一度して
口を開いた。


「私はヒーローになりたいんだ。」

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