3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

二百五十二話 フリーズランド12

吹雪姫が手を合わせると同時に
地面が揺れ始める。


「!?」


タチアナと隼人は腰を低くして
体勢が崩れないように身構えている
と、その揺れの正体が姿を現した。


バシュッ!バシュッ!


吹雪姫の後ろの地面が
白い雪を撒き散らしながら
噴水のように吹き上がる。
そして、ゴゴゴッと不穏な
音をたてて更に地面が揺れる。


隼人がその揺れの正体に
気づいた時、既に彼の口は開いていた。


「タチアナ! 逃げろ!!!
雪崩だ!!!!!」


隼人の叫び声を聞いてタチアナは


「チェイン!」


と素早く魔力を集め始め、
僅か五秒の間に


「シャドーウォール!」


を展開した。


しかし、丘の上から襲い
かかってくるその雪崩は、
タチアナと隼人に直撃した。


「っ!!!!」


タチアナはその雪崩を一瞬だけ
シャドーウォールで防ぐことが
できたが、即座に展開したためか
三秒ともたず、シャドーウォールは
破壊された。


視界を覆うあまりにも強大な
雪崩を前にして、タチアナは
死を覚悟した。


「タチアナ!」


そのとき、隼人が自分の前に
現れ、自分を庇うかのように
抱き抱えてくる。


「はや──」


タチアナは意識を失う直前で、
隼人の名前を呼ぼうとしたが
そのまま意識は途絶えた。












容赦なく自分たちを飲み込む
雪崩の中で隼人は、離さぬように
タチアナを抱きしめる。
ここでもしタチアナを見失えば、
タチアナは雪に埋もれてしまって
見つけることが困難になる。
そう思いながら、隼人は
必死に自分が雪崩の
中で転げ落ちていくのを
感じていたのだった。
















「死んだかや?」


丘の頂上で雪崩が丘を
下っていくのを眺めながら
吹雪姫は呟いた。


「キュイッ!」


「ガゥ! ガゥ!」


すると、隼人達がいなくなって
安心した動物達が吹雪姫の
元に駆け寄ってくる。


「ちゃんと隠れておったかや?」


「キュイ!」


「そうか、そうか。じゃが
油断は禁物じゃ。あやつらが
まだ生きていれば、ソナタらに危険が
及ぶかもしれぬ。もうしばらく
隠れていてくりゃれ?
今からわらわが確かめてくるで
ありんす。」

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