3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

二百五十話 フリーズランド10

「まあ、そんなに落ち込むなよ。
ゴムボートの圧で壊れたんだろ。
タチアナのせいじゃない。」


「......」


死んだ目でコンパスの針を
握っきたままのタチアナを
励まそうと声をかけるが
一向に元気にならない。


「このままでは兄様との約束が......」


ゴムボートがなくなってしまった以上、
俺たちがこの島から脱出する手段は
なくなってしまった。
タチアナは兄ちゃんに無理を言ってまで
ここに来たのだ。
なんとしてでも仲間と合流したい
のだろう。
かと言って俺も特に泳ぐことぐらい
しか考えていなかったし、直ぐに
別の案をタチアナに提案すること
もできない。


「どうするかな......」


俺はうーんと考えていると
あることを思い出す。


「あ、そうだ。この島には
木が生えてたんだし、その木で
筏でも作るか。」


「......木?」


「生えてたろ? ペルーと同じ種の
鳥たちが止まってた木が。」


「おお! その手が有ったか! しかし、
隼人は筏の作り方を知っているのか?」


「ああ。頑丈そうな丸太を10本
ぐらい用意して、その内の八本を
縦に、その上に残りの二本を
横に並べる。あとは紐で何ヵ所か結べば
いい。簡単だ。
紐はそのゴムボートで代用しよう。
タチアナのナイフで細長く切って
いけばいい感じの紐になるだろ。」


「なるほど! ならば早速──」


この島からの脱出に希望が見えてきた
タチアナは目を輝かせ、ペルーと
別れたところに向かうため
走り出した。






 

  





一度通った道のため十五分もかから
なかった。
 だが、ペルーと別れた場所は
丘の上にあるため少々道が
登りだった。
ちらっと隣にいるタチアナを
見ると、流石に彼女も息切れを
していた。


「まあ、こんだけ木があれば
足りるだろ。」


見たところ、把握できる木だけでも
二十本ぐらいはあちこちに
生えている。


「よかった......では、何本か
木を伐採するとしよう。」


そう言ってタチアナは腰に
取り付けていた鞘から
ナイフを取り出す。


ナイフで切れるのか? まあ、
タチアナなら木だろうがその辺の
岩でも切れそうだな......


と、俺はその様子を見守っていると


「貴様らは一体何を
しているのかや?」


後ろから見覚えのない女の声がした。

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