3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

二百十一話 仲間の捜索9

唐突な彼女の呼び止めに
思わずびくっとしてしまう。


「な、なんですか?」


俺はびくつきながら、振りかえると
意外にも呼び止めた本人である彼女
の方がどうしていいのかわからず
おどおどしていた。


「あ、あんた......あんた......えっと......」


言葉を探しているのか
彼女は目を泳がせている。


「あんたの私物どこよ!」


結局絞り出した言葉が
これだった。


「私物? そんなこと聞いて
どうすんですか?」



「え!? ど、どうするも何も......
そ、そう! 昨日の夜食糧庫から魚が
盗まれたらしいから、私が今一人一人
私物を検査してるのよ!」


と、もう無茶苦茶なことを
言い出す。


「さ、魚? そんなの誰も盗んで
ないでしょ......」


「は、は!?  本当よ! 何!?
怪しいわね! もしかして
あんたが盗んだんじゃないの?
ちょっとここにあんたの荷物全部
持ってきなさいよ!」



ああ......なるほど。俺のセルフカードを
狙ってんのか......



「まあ......わかりましたよ。
そこまで言うんだったら
今持ってきますよ。」



「え!? ちょ、ちょっと、
私も一緒に行くわ!あんたが盗んだ魚を
隠すかもしれないし。」


「え!?」


うわ......マジかよ......結構本気だな......
てか、俺のセルフカードを見たいん
だったらもうちょっと他のやり方
無かったのかよ。よりにもよって
俺を魚泥棒の犯人に仕立てあげる
なんて......今時魚なんか盗むやつ
なんか......ってあれ? なんかペルー
すっげぇ焦ってね? めちゃくちゃ
瞳孔開いてすごい汗かいてんじゃん。


「おい、ペルー。お前まさか......」


「ピッ!? ピピピッ!」


ペルーは俺に違うんです!
と必死に首を横にふる。
あ、こいつやったな......
そう言えば昨日の夜、
俺が話してるときに
魚食ってたもんな......


「おい......」


「ちょっと、何そこに
つったってんのよ。早く
進みなさいよ。」


本来であれば、ここはがつんと
ペルーを叱ってやりたいとこだが、
今はそうもいかず、早くあんたの
荷物があるとこに連れてけと
彼女に無理やり食堂から
引きずり出される。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


「は? 何よ。」


一応聞く耳は持っていたのか
俺の腕から彼女は離れる。
それを見て俺はにまぁと笑った。
というのも、俺にはこの場を切り
抜ける為の切り札を用意してある。
転生を繰り返すこと早百年以上。
こういうふうに、自分のレベルや
正体を明かせと強要されることも
しばしばあった。
そんな幾多の困難を切り抜けてきた
必殺技が俺にはある。


「な、なによ。その顔。」


俺の自信に満ち溢れた表情を
見て、彼女は少し身構える。


だが、無駄だ。
誰にもこれは止められまい!


そう心の中で勝ち誇って、
俺は彼女にこう言った。
 

「すみません。う○こに行っても
いいっすか?」



「は? 駄目よ。」



えぇ......

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