3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

百六十七話 三日月島32

「この隼人という男だ。」


「は? こんな糞人間に──」


「止めろって! ビール。
言ったろ? この人間には逆らうなって。」


ワインはビールの口を塞ぐ。


「おい、タチアナ。まさか俺をあてに
してるんじゃ......」


「当然だ。レベル999の回復魔法士
をあてにしない愚か者がどこにいる?」


「あのな......タチアナ......人魚姫様
が眠っているのは海の中だぞ?
一体、3メートルも泳げない
人間がどうやってそこに行くんだよ。」


「......そ、そうか......確かに......考えて
みればそうだな......」


タチアナはしっかりしているように
みえて案外、ネジが一本外れて
いるのかもしれない。


「すまない。今のは忘れてくれ。
よし、先を急ごう。隼人。」


「は、は!?」


タチアナは困惑している
ビールとワインを
ほったらかしにして、
俺の手をぐいぐい引っ張るのだった。












「おい、ついてくるなよ......」


「黙れ、俺達が糞人間の
言うことを聞く義理はない。」


俺とタチアナが幹部の場所を
探している間、後ろから
ビールとワインが俺たちの
後を追ってきた。


元々この二人は
人間が脱走したことを幹部に
知らせようとしていたが、
俺達がその幹部を
倒そうとしているのを知ったため、
幹部の居場所がばれないように
俺達の動向を監視しているのだろう。


「曲がり角だ。」


タチアナはそう言って、
どちらに進むかと尋ねてくる。


「そうだな......右か?」


ちらっと俺はビールとワインの
表情を確認する。



「左だな。」


「や、止めろ! そっちは!」


「左か......」


タチアナもビールとワインの
全く出来ていないポーカーフェイスに
呆れていた。











「ここで間違い無さそうだな。
隼人、準備はできているか?」


それから俺たちは10分たらずで
明らかに、他の洞窟と外装から
違う石壁の扉の前にたどり着いた。


「大丈夫だ。」


「た、頼む、頼むから!」


ワインは泣きながらに
俺の腕を引っ張り、
そのワインを、
そんな無様なまねはよせと、
ビールが引っ張っている。


「では、開けるぞ......」


タチアナはそう言って、石壁の
扉に手をかけた、その時。


「グアアアアアア!!!!!!!」


中からこの世のものとは
思えない、断末魔が聞こえてきた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品