3521回目の異世界転生 〜無双人生にも飽き飽きしてきたので目立たぬように生きていきます〜

I.G

百二十九話 一方海では3

「サッちゃん隊長! 早く治療を!」


頭を撃ち抜かれた者を、知り合いだった
職業者が必死に、サッちゃんの元に
抱えてくる。


「これは......もう......」


頭を撃ち抜かれた者を見たサッちゃんは、
その者がもうすでに死んでいることを
告げる。


「そんな......」


連れてきた職業者は絶望に
打ちひしがて、その場に膝をつく。







「おいこれ、この船、何かに
運ばれてるんじゃないのか!?」


「そんなわけないだろ。」


「じゃあ、なんで海は荒れてないのに
こんなスピードで船は移動してるんだ!」



「なら、試しに海に潜って
確かめてみればいいだろ!」


狼狽している職業者達は
ついにはそんなことを言い出した。


「落ち着くのじゃ、お主ら。」


「長老!」


その言葉だけで、騒がしかった
船がしんと静まりかえる。


「長老、これは一体どうなってるん
ですか!?」


一人の職業者が長老にしがみつく。


そんな彼に長老は目もくれず、
辺りの状況を把握する。


頭を撃ち抜かれ即死した職業者。


穏やかな海である方向に移動している
船。


切断された錨。


長老は自身の持っていた方位磁石に
目をやる。


「......やはり......」


「え?」


「やはりお主らは、そちら側に
加担するのじゃな......」


「長老?」


しがみついてる職業者が何度尋ねても、
長老はぶつぶつ独り言を呟いている。


「長老。この状況は一体なんなのですか?」


長老が来るまで指揮をとっていた
ルドルフが長老の元に駆け寄ってくる。



「僕達は一体どうすれば──」


「ルドルフ君。」


ずっと考え込んでいた長老が
ようやく口を開いた。



「はい。」


「わしは今から瞑想に入る。
あとのことは君とヨーテルちゃんに
任せるからの。」






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