消滅の魔女と四英傑 〜天才少女、異世界へ降り立つ〜

酒粕小僧

召喚魔法

校庭には、クリス、ライチェス、ミュラーが召喚魔法をする為に集まっいる。


ちなみにアシュナは修行中である。


「どうして、僕まで?」


ライチェスはアシュナとの時間を奪われかなり不満だった。


「ついでよ、ついで、ミュラーと一緒にいたからちょうど良かったわ。あんたならこいつの足りない部分を補填出来るからね」
「ちょっと待て!!最後のはどういう意味だ!!」


ミュラーはクリスの物言いに異論を唱える。


「あんただけだといい加減な事しか教えないからね。ライチェスがいてくれるだけで安心感が違うわ」
「あ、あれに関しては人間の扱う魔法だから詳しく知らなかっただけだ!!今回のこれは俺達、龍人が扱う魔法だ。流石に間違えた事は教えん!!それに関しては信頼して欲しい」
「信頼してないから、私が最も信頼してるライチェスに間違いがないか見てもらうんじゃない」
「お、お前、そこまではっきりと言わなくてもいいだろ!!」
「信頼されたきゃ行動で示しなさい。あんたは口だけだからこうなったのよ」
「うぐぐ」


あまりの理不尽な物言いにミュラーは返答できなくなる。


「確か、魔力を放出して召魔を呼ぶんだったわね」
「どちらかと言うと瞑想に近いな。魔力を放出し、自分自身との対話によって自分自身の召魔が呼び出される。この魔法は最初がかなり苦労する。才能があろうとなかろうと関係ないものだからな。龍人でも扱える者が少ないのは挫折する者が多いからだ。百年以上かけても出来ない者もいるからな」
「確か、魔力量によって召魔の強さが違うんだったわね」
「それは間違いない。だが、必ずしも望む力を持っているとは限らないがな」
「つまり、出て来るまではどんな力を持ってるか分からないってこと?」
「そうなるな。全ては本人次第というわけだ」


ミュラーはクリスよりもライチェスに警戒していた。
何気に一番油断ならないのが、ライチェスだと分かっているからである。


「もしかして、ミュラーの召魔であるガルファルグは、嵐の権化なのかな?」
「流石に鋭いな。俺のガルファルグは嵐を発生させる事から止めることまで出来る。だが、あれでもかなりお茶目な奴だ」
「お茶目で街一つ吹き飛ばされたらたまったもんじゃないわよ」
「そんなこともあったな」
「あったの!!」


クリスは半分冗談のつもりで言ったが、まさか本当に吹き飛ばしたとは考えていなかった。


「まぁ、ガルファルグの話はいいだろ。どうだ?怖気付いたか?」
「やってみるけど、まずはライチェスにやってもらうわ。こいつならやってくれる」
「僕は解説じゃなかったんですか?」
「諦めろ言って聞くような奴じゃないのは、お前が一番よく知ってるだろ」
「その通りなんだけどね。仕方ない・・・出来なくても文句を言わないで下さいよ。僕自身もやった事がないんですから」
「あんたに出来れば、こいつの説明は正しくて出来なかったら、こいつの説明が悪かったということになるわ」
「どうしてそうなるんだ!!」


ミュラーはクリスの理不尽っぷりに異論を唱えるがクリスは何食わぬ顔で答える。


「ライチェス、逆に考えるのよ。出来ない者はどうして出来ないかをおそらくそれが『召喚魔法』を取得する方法よ」
「それを考えても仕方ない事だと思うがな」
『こいつはどうして上から目線で失敗から何も学ぼうとしないのかしら、本当に残念な奴ね』
「先生、とりあえずやってはみますが、失敗してもミュラーが悪い訳ではなく、僕が未熟だからいけなかったと念頭に置いて下さいね」


ライチェスはミュラーに対するクリスの扱いがあんまりなので、ミュラーを擁護する。
ライチェスは『召魔』を呼び出す為に魔力を放出しながら、瞑想を始める。


「それで、『召魔』って自分自身との対話で呼び出されるということは、自分の分体みたいなものなの?」
「分体というよりは全く異なる存在だが、自分自身と最も近い力の化身が呼び出されるというのが一番近い表現だな。当然、例外も存在するから一概にそうとはいえん」
「あんたの『召魔』が正にそうよね」
「そうだ、だからライチェスの場合、全く読めん」
「こいつの場合は愛の化身が出てきそうなものだけどね」
『そうなったら、こいつにとってのネタになるのは間違いないだろう。ライチェスが『愛の神徒』なのを秘密にしてる理由が分かる気がするな』


ミュラーはライチェスの気苦労する理由が分かって、同情するしかなかった。


ライチェスが『召魔』の呼び出しを始めて、一時間近く経とうとしていた。


「ねぇ、そろそろ一時間経つけど全然来る気配がないわね」
「そもそも、一発で来るようなものじゃないし、一時間程度で来るものでもない。一日中やっても来ない時は来ないからな。この魔法は最初に呼び出すまでが一苦労なんだ」
「ちなみにあんたはどれくらいかかったの?」
「二ヶ月近くだな。早い者だと一週間で獲得した者もいると聞く」
「気長に待つしかないのね」


クリスは退屈そうにライチェスを見守り続け、更に一時間が経過するとライチェスが動き出す。


「うん、これは一度や二度じゃ無理ですね」


ライチェスはあっさりと諦め口調で言う。


「随分と潔いわね」
「でも、何となくこの魔法がどういうものか分かりました。それを込みで一度や二度では無理だということです」
「ミュラーの説明ではやっぱり足りないところがあったのね」
「足りないというよりミュラーの話す通りにしか説明出来ないんです。これはやってみるのが一番分かります。呼ぶというより呼びに行くという表現が一番しっくり来ます。そもそも、こちらから頼むのに呼び出すというのは違います。これに失敗する者はここなのかと思われます」
「どういう事?」
「この魔法が常に魔力を放出して呼び出す理由は、おそらく、意識を召魔の世界もしくは召魔の意識下に持って行くのに必要なのだと思います。その魔力の波長に合う魔物に呼びかけ続けることで、最終的に召魔を呼び出すんです。確かに魔力を餌と表現するのは言い得て妙だと思います。自分の魔力を餌にして釣りをする感じが一番近い表現です。かなり酷い表現ですが、そうとしか言えません。結局、実際にやってみるのが一番早いです」
「要するに呼びかけに応じた『召魔』が召喚される訳ね」


クリスはライチェスの説明の方がミュラーよりも分かりやすかった。


「今晩、アシュナが寝てからやってみるわ」
「あまり室内でやるのはオススメはしない。デカイのが出たら大事になるからな」
「あんたに心配される筋合いはないわ」


クリスはミュラーにだけはそれに関して心配されたくなかった。


「⋯⋯何をそんなに焦っている?」
「何が?」


ミュラーはクリスが、『召喚魔法』をやるから手伝いなさいと言われて来たのもあるが、こんなに早く頼まれる事になるとは思わなかったし、早く出来るようになろうと頑張る事はいい事だが、ミュラーにはクリスが焦ってらように見えた。


「やはりクレイガルドの一件で逃げた事がそんなに気にしているとは思えなかったのは俺の気のせいでは、なかったか」
「あの女はある意味で私の天敵ね。私の『消滅』がほぼ意味がないのよ。次から次へとゴーレムを生み出されるし、あの無限増殖を何とかしないと到底太刀打ち出来ないわ。あのショタコンに次会ったら、絶対に捕まえてやるんだから!!」
「その絡繰の正体はおそらく『土着神』の力だな。その神の神徒は『土着神』の呪いの肩代わりを何らかの形で受ける。だが、その代償の代わりとして大地の眷属たるゴーレムを地脈を流れる魔力を使い無限に引き出す力を有している。それと自身も地脈の力を借り入れる事が出来る」
「呪いを肩代わりさせるって、神徒がろくでなしなら、その神様もろくでなしなのね。その神は何の神様なの?」
「『祟の神』だ。別名『土着神』とも呼ばれる大地の神様だ。他の四神ほどではないが力がある神様だ。一応、龍人の中でも信仰をしている者がいる」
「『祟の神』ね。四神しかいないから神徒も四人しかいないと思っていたけど、まだいるとしたら意外と『愛の神』もいそうね」


クリスの言葉でライチェスの表情が微妙に引きつっている。
それは当然の如く、自身がその『愛の神徒』であるからだ。
その反応を見たミュラーはライチェスに任せろと目配せする。


「もしいたらどうする気だ?」
「こいつをその神徒にしてもらう。これで完全な。愛の戦士の誕生よ」
「そんな下らない理由で神徒にさせる訳ないだろ」


ミュラーは呆れながら返答する。


「そうかしら?他の神徒より一番お似合いだと思うけど?」
「そもそも、『神徒』は相応の資格がなければなれるものではないんだ。その資格があるかを確認する試練を突破した者が『神徒』となる資格を得る」
「それは面倒くさそうね。そもそも愛なんて私から一番縁遠いからその試練を受けることさえ許されないわね」
「試練はその神か神徒が許可を出せば可能だが失敗が許されるのは三回までだ。それ以降はその神の試練は受けられん。当然、『神徒』は他の神の試練を受ける事は出来ない」
「私は『智の神』にしか興味ないし、『神徒』とかも興味ないからなる気はないわ」


クリスの目的は、『智の神』に会って忘れてる記憶を戻してもらう事である。


「さて、本題に戻るが実際どうなんだ?」
「アレは確かに子供達は助けられたから結果から見れば私の勝ちよ。でもね、私はアレを勝ったと思っていないわ。いや、実際には負けていたわね。万全な状態じゃなかったなんて言い訳にすらならないわ。戦いはどういう状況で行われるか分からないもの。いつでも万全な状態で戦えるとは限らない。だからこそ、そんなのは言い訳になどならない。運が悪かったなんていくらでも後から言えるわ。必要なのはその時が来た時に備えておく事よ。だからこそ、力をつける必要性を感じたわ」
「そうか、なら『召喚魔法』を憶えるより手っ取り早く強くなる方法を教えてやろうか?」
「あんたが言うからにはどうせろくでもない事なんでしょうけど、一応聞いておくわ」
「魔人の『儀式魔法』と鳥人の『結界魔法』も使えるようになっておくべきだ」


クリスはミュラーが魔の民だから魔の民を推してるとしか思えないが、クリスの戦闘スタイルはどちらかといえば魔法使いなので強ち間違いではないのかもしれないと思ってしまった。


「『儀式魔法』に関してはジェニス、『結界魔法』に関してはリカルドに聞くのが一番早い」
「二人共、先輩よね。どうして呼び捨てなの?」
「残念ながら、年齢的な意味で言うと俺は大先輩だ。そして、それに関してはお前がいうな!!」
「それもそうね」


クリスは基本的に歳上だろうが偉人だろうが敬意を払わない口調なのでミュラーも突っ込まずにはいられなかった。


「その前に予習としてライチェスから教えてもらってから教えてもらう事にするわ」
「まだ、僕を解放してくれない気ですか?」


ライチェスとしては一分でも早くアシュナに会いたいんだなとクリスは思った。


「安心なさい、二人の為に依頼をもらって明日公休にしてるから」
「聞いてませんよそんな事」
「この前キープした奴、詳細はアシュナが揃ってから説明するわ」
「分かりました。それで我慢しましょう」


ライチェスが渋々納得するとクリスはライチェスの説明を受ける。

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