消滅の魔女と四英傑 〜天才少女、異世界へ降り立つ〜
クリス・スロットは人を試す
クリスはエリックから事の顛末を聞いた。
ゲイズ達は一般生徒にも特別生と同じ待遇を求めたのだという。
「ふーん、私には理解しかねるけどね。でも、一般生徒でも努力をした者は認められるべきだと私は思うわ。何も努力もせずに自分達の権利を求めるのは、我儘というものよ。真に優遇されるべきは特別生でも一般生徒でもなく、一生懸命努力したものじゃない?」
クリスは、面倒なので極力努力はしたくないのである。
むしろ、今まで向こうで寝る間も惜しみ頑張り続けたので頑張りたくないのであった。
「そうは言いましても」
「学園の方針というのは分かってるわ。だから、今回の件はおかしいのよ。普通なら、貴方の方じゃなく学園長のところに行くのが筋ってものじゃないかしら。どうして学園の方針を生徒会が一任されてると思ったのか。いや、違うわね。最初から狙いは学園長だったのかもしれないわ」
クリスはエリックが学園長の孫だというのは知っている。
それを人質にして交渉しようとしたのだ。
『でも、おかしいわね。こいつらのこの動きからして、人質にして学園長と交渉する気なんて本当にあったのかしら』
クリスが考えているとミュラーから連絡が来る。
「どうしたの?」
「その騒動の黒幕が分かった。副校長だ」
「・・・そういう事、ふぅん・・・」
「どうした?」
「いや、思った以上に面白くなってるなと思ってね」
クリスは上機嫌に答える。
「お前、何か悪いこと考えてるだろ?」
「どうしてかしら?」
「お前の機嫌がいい時は大抵ろくでもないことを考えてる時だからな」
「それは心外ね。それじゃあ私がろくでなしみたいじゃない」
クリスはそれでも機嫌を崩さない。
かなりのご機嫌である。
「実際にそう言ってるんだが」
ミュラーは通信術式の向こうで呆れている。
「まったく、酷い言われようね」
「言われたくないなら、そのすぐ金儲けに走る思考をやめるんだな」
「それは無理ね。お金はいくらあっても困らないもの」
「やっぱり、金儲け絡みだったか。やるのはいいがあまりやり過ぎるなよ」
ミュラーは止めても無駄なのは分かってるのでそう注意するとミュラーは通信を切る。
クリスはミュラーの持ってきた情報で今回の騒動の本当の目的を理解した。
「ということよ」
「そう言われましてもね」
エリックはそれだけでは理解出来なかった。
「とりあえず、副校長を探すわ」
クリスは映し出された映像を確認する。
「・・・やっぱりね」
「やっぱりとは?」
「この映し出してる映像はここ以外どこの部屋も廊下も屋上とかの屋外も全て映ってる」
「それがどうしたんですか?」
「だけど、一つだけ映ってない部屋があるのよ。何処か分かる?」
「何処かと言われましても・・・んっ?」
エリックは映像を全て確認するとあることに気付く。
「まさか、学園長室ですか!!」
エリックは何度か入ったことがあるので憶えていた。
「おそらく、副校長はそこにいるわ」
「どうしてです!!」
「さあ?それは本人に聞くのが一番早いと思うけど、この状況で学園長が丁重な扱いを受けてるとは到底思えないわねぇ」
クリスはエリックを脅すように語りかける。
「た、確かにそうかもしれません」
クリスは学園長がエリックの祖父だと知っている。
だが、彼女はこれはいいビジネスチャンスとしか考えていない。
「さて、犯人も分かった事だし後は任せたわ」
クリスはあえて帰るそぶりを見せる。
「えっ?」
エリックはまさかクリスがこのまま帰ると言い出すとは思わなかった。
 
「何?何なの?その顔は?もしかして、助けてくれるとか思っちゃったわけ?それは頼む相手を間違えてるわ。私は正義の味方でもなんでもないの。助けてと叫べは駆けつける都合のいいヒーローじゃないの。私の味方はいつだって私だったわ。でも、助けない訳じゃないわ」
クリスは自分が正義の味方だとは思っていない。
正義は立場が変われば変わるものだからだ。
エリックにはエリックの正義があるし、ゲイズ達にとってはゲイズ達にとっての正義がある。
それが譲れないから争いが生まれる。
正しさを証明するには勝つしかないのだ。
負ければ悪となるのは当たり前なのだ。
そんな下らない戦いに巻き込まれるのはクリスにとって不本意でしかない。
「な、何をすれば・・・」
エリックはクリスにすがろうとする。
敵の罠にあっさりとかかり、見てる事しか出来なかった。
そんな自分に何ができるものか。
エリックは上手く助けられる気がしなかった。
「五十ゴルド用意しなさい。それで手を打つわ」
「なっ!!」
その金額はミュラーが言っていた昔の『魔力増幅剤』の金額である。
彼等は少なくともこれくらい払って準備をしたのだ。
それくらい出してもらわないと割に合わないのである。
「どうするの?払うの?払わないの?」
クリスは急かすようにたずねる。
こういう詐欺紛いな事は相手に考える時間を与えてはいけないのだ。
「・・・君に人の心はあるのですか?」
「生憎、感情論に持っていこうたって無駄よ。これはそういうビジネスだもの。払うか払わないか、聞きたいのはそれだけよ。それと、私はいつまでもここにいる必要なんてないのよ。即答出来ないようならそろそろ帰らせてもらうわ」
クリスは入って来た扉に手をかける。
「ま、待って下さい!!」
クリスは立ち止まる。
「分かりました。払いますから。学園長を・・・祖父を助けて下さい」
「ふぅん。でも、口約束じゃ信用できないのよね。もし、払えなかったらどうするつもりかしら?」
「その時は何か代わりになるもので代用します」
「具体的に言いなさい」
「この命をかけましょう」
「命と来たか・・・」
クリスは「ふむ」と一瞬考えた。
「貴方の命程度かけられてもいらないわ。そうね、ここを譲ってくれるならやってあげるわ」
つまり生徒会室を自分専用の部屋にしろと言っているのだ。
「!?」
しかし、エリックはその程度でいいのかと驚いている。
「あら?もしかして本気にしてたの?冗談に決まってるじゃない。本当にあるなら欲しいけど、そんなのすぐ集まるからいらないわ」
エリックは呆気に取られる。
つまり、クリスは試したのだ。
エリックはクリスが助ける価値のある人間か。
あのまま、引き止められなくてもクリスは学園長室に乗り込むつもりだった。
「貴方の覚悟見せてもらったわ。貴方が命をかけるというのなら、私も命をかけましょう」
それが彼女のやり方だった。
「あと、これ彼女に返しておいて」
クリスが渡したのは、リュンから取った一ゴルドである。
「なるほど、試した訳か。僕と同じように」
クリスはリュンを使って試したのだ。
ゲイズが救うべき価値のある者か。
ゲイズの作戦を成功させるためにどうしても、クリスが邪魔だった。
その時、クリスは試したのだ。
ゲイズの作戦にいくらかけるのか。
五ゴルドは学生が出すのは不可能である。
クリスはライチェスやアシュナから小遣い事情を聞いていたので知っていたのだ。
ライチェスとアシュナの話だと五十シルバくらいだと話していた。
だから、一ゴルドを出したリュンは大した者だとクリスは思った。
それで、リュンにとってはゲイズはそれ程の価値のある者だと認識した。
だから、『魔力増幅剤』の副作用がどういうものか詳しく聞き治し方があるならとミュラーに教えてもらった。
ミュラーは精神汚染が原因だと言っていた。
しかし、この症状は未だかつて誰も治した事もなく治療法は分からないということだった。
だから、かなり酷い精神汚染を受けていたクジャで試した。
クリスは魔法でレントゲンや心電図、CTスキャン、脳波を全てくまなく確認した。
しかし、何処にも異常が見られなかったのだ。
そして、クリスは気付いた。
向こうではなかった魔力という概念があったではないかと。
魔力とは魂と同じく一部例外を除き普通は目に見えないものだというので何とも言えなかったが、魔力を直接見れる龍人が、増やすのは別として魔力の異常に気付かない訳がない。
なのでこれも違うとクリスは踏んだ。
そういえば、あの羊皮紙の最後の文に強い魔力は強い魂を持つ者に宿ると書いてあった。
アレは最後の決まり文句程度にしかクリスは思っていなかった。
確かに魂に関しては、龍人に見る事は出来ない。
しかし、クリスはもう一つの難問に突き当たる。
そもそも、魂とはなんだと。
ここで、ミュラーの言った精神汚染の意味を理解した。
クリスは元々科学者のため、精神論は信じていなかった。
それこそが盲点となっていた。
精神汚染とはつまり魂の汚染だという事である。
クリスは自身に『魔力増幅剤』を使うことで精神汚染がどういうものかを試してみた。
魔力が元々多い為増えたかどうかははっきりと分からなかったがまるで自分が自分で無いような錯覚をしそうになるのだ。見たことない風景が瞬間的に脳内に入って来る。争いの叫び声が脳内に木霊する。
クリスは精神汚染がどういうものか理解した。
そして、自身の精神にある汚染を取り除く魔法を放ち、さっきのような感覚は消えていた。
クリスはこれを便宜上『精神魔法』と命名した。
それを、クジャに使用すると寝ていても分かる程、表情が穏やかになっていた。
クリスは頭ではなく感覚的に魂というものを理解したのだった。
しかし、クリスにとってこれは準備でしかなかった。
ゲイズを戻し一発ブン殴って、一ゴルドを顔面に投げつけて。
「これがお前の価値だ」と言ってやるつもりだったが、それ以上に面白いネタが上がって来たので、クリスは忘れてしまっていた。
「いや、今思うとそんなはした金いらなかったから返そうと思っただけよ」
「そういう事にしておくよ」
エリックはクリスがどこまで本気なのかは聞かなかった。
聞いてもどうせはぐらかされるのが分かりきっているからだ。
「さて、どうなってることやら。楽しみだわ」
クリスは学園長室に向かう為、部屋を出る。
その顔はかなり邪悪な笑みで、どちらが悪役なのか分からなくなってしまうようだった。
ゲイズ達は一般生徒にも特別生と同じ待遇を求めたのだという。
「ふーん、私には理解しかねるけどね。でも、一般生徒でも努力をした者は認められるべきだと私は思うわ。何も努力もせずに自分達の権利を求めるのは、我儘というものよ。真に優遇されるべきは特別生でも一般生徒でもなく、一生懸命努力したものじゃない?」
クリスは、面倒なので極力努力はしたくないのである。
むしろ、今まで向こうで寝る間も惜しみ頑張り続けたので頑張りたくないのであった。
「そうは言いましても」
「学園の方針というのは分かってるわ。だから、今回の件はおかしいのよ。普通なら、貴方の方じゃなく学園長のところに行くのが筋ってものじゃないかしら。どうして学園の方針を生徒会が一任されてると思ったのか。いや、違うわね。最初から狙いは学園長だったのかもしれないわ」
クリスはエリックが学園長の孫だというのは知っている。
それを人質にして交渉しようとしたのだ。
『でも、おかしいわね。こいつらのこの動きからして、人質にして学園長と交渉する気なんて本当にあったのかしら』
クリスが考えているとミュラーから連絡が来る。
「どうしたの?」
「その騒動の黒幕が分かった。副校長だ」
「・・・そういう事、ふぅん・・・」
「どうした?」
「いや、思った以上に面白くなってるなと思ってね」
クリスは上機嫌に答える。
「お前、何か悪いこと考えてるだろ?」
「どうしてかしら?」
「お前の機嫌がいい時は大抵ろくでもないことを考えてる時だからな」
「それは心外ね。それじゃあ私がろくでなしみたいじゃない」
クリスはそれでも機嫌を崩さない。
かなりのご機嫌である。
「実際にそう言ってるんだが」
ミュラーは通信術式の向こうで呆れている。
「まったく、酷い言われようね」
「言われたくないなら、そのすぐ金儲けに走る思考をやめるんだな」
「それは無理ね。お金はいくらあっても困らないもの」
「やっぱり、金儲け絡みだったか。やるのはいいがあまりやり過ぎるなよ」
ミュラーは止めても無駄なのは分かってるのでそう注意するとミュラーは通信を切る。
クリスはミュラーの持ってきた情報で今回の騒動の本当の目的を理解した。
「ということよ」
「そう言われましてもね」
エリックはそれだけでは理解出来なかった。
「とりあえず、副校長を探すわ」
クリスは映し出された映像を確認する。
「・・・やっぱりね」
「やっぱりとは?」
「この映し出してる映像はここ以外どこの部屋も廊下も屋上とかの屋外も全て映ってる」
「それがどうしたんですか?」
「だけど、一つだけ映ってない部屋があるのよ。何処か分かる?」
「何処かと言われましても・・・んっ?」
エリックは映像を全て確認するとあることに気付く。
「まさか、学園長室ですか!!」
エリックは何度か入ったことがあるので憶えていた。
「おそらく、副校長はそこにいるわ」
「どうしてです!!」
「さあ?それは本人に聞くのが一番早いと思うけど、この状況で学園長が丁重な扱いを受けてるとは到底思えないわねぇ」
クリスはエリックを脅すように語りかける。
「た、確かにそうかもしれません」
クリスは学園長がエリックの祖父だと知っている。
だが、彼女はこれはいいビジネスチャンスとしか考えていない。
「さて、犯人も分かった事だし後は任せたわ」
クリスはあえて帰るそぶりを見せる。
「えっ?」
エリックはまさかクリスがこのまま帰ると言い出すとは思わなかった。
 
「何?何なの?その顔は?もしかして、助けてくれるとか思っちゃったわけ?それは頼む相手を間違えてるわ。私は正義の味方でもなんでもないの。助けてと叫べは駆けつける都合のいいヒーローじゃないの。私の味方はいつだって私だったわ。でも、助けない訳じゃないわ」
クリスは自分が正義の味方だとは思っていない。
正義は立場が変われば変わるものだからだ。
エリックにはエリックの正義があるし、ゲイズ達にとってはゲイズ達にとっての正義がある。
それが譲れないから争いが生まれる。
正しさを証明するには勝つしかないのだ。
負ければ悪となるのは当たり前なのだ。
そんな下らない戦いに巻き込まれるのはクリスにとって不本意でしかない。
「な、何をすれば・・・」
エリックはクリスにすがろうとする。
敵の罠にあっさりとかかり、見てる事しか出来なかった。
そんな自分に何ができるものか。
エリックは上手く助けられる気がしなかった。
「五十ゴルド用意しなさい。それで手を打つわ」
「なっ!!」
その金額はミュラーが言っていた昔の『魔力増幅剤』の金額である。
彼等は少なくともこれくらい払って準備をしたのだ。
それくらい出してもらわないと割に合わないのである。
「どうするの?払うの?払わないの?」
クリスは急かすようにたずねる。
こういう詐欺紛いな事は相手に考える時間を与えてはいけないのだ。
「・・・君に人の心はあるのですか?」
「生憎、感情論に持っていこうたって無駄よ。これはそういうビジネスだもの。払うか払わないか、聞きたいのはそれだけよ。それと、私はいつまでもここにいる必要なんてないのよ。即答出来ないようならそろそろ帰らせてもらうわ」
クリスは入って来た扉に手をかける。
「ま、待って下さい!!」
クリスは立ち止まる。
「分かりました。払いますから。学園長を・・・祖父を助けて下さい」
「ふぅん。でも、口約束じゃ信用できないのよね。もし、払えなかったらどうするつもりかしら?」
「その時は何か代わりになるもので代用します」
「具体的に言いなさい」
「この命をかけましょう」
「命と来たか・・・」
クリスは「ふむ」と一瞬考えた。
「貴方の命程度かけられてもいらないわ。そうね、ここを譲ってくれるならやってあげるわ」
つまり生徒会室を自分専用の部屋にしろと言っているのだ。
「!?」
しかし、エリックはその程度でいいのかと驚いている。
「あら?もしかして本気にしてたの?冗談に決まってるじゃない。本当にあるなら欲しいけど、そんなのすぐ集まるからいらないわ」
エリックは呆気に取られる。
つまり、クリスは試したのだ。
エリックはクリスが助ける価値のある人間か。
あのまま、引き止められなくてもクリスは学園長室に乗り込むつもりだった。
「貴方の覚悟見せてもらったわ。貴方が命をかけるというのなら、私も命をかけましょう」
それが彼女のやり方だった。
「あと、これ彼女に返しておいて」
クリスが渡したのは、リュンから取った一ゴルドである。
「なるほど、試した訳か。僕と同じように」
クリスはリュンを使って試したのだ。
ゲイズが救うべき価値のある者か。
ゲイズの作戦を成功させるためにどうしても、クリスが邪魔だった。
その時、クリスは試したのだ。
ゲイズの作戦にいくらかけるのか。
五ゴルドは学生が出すのは不可能である。
クリスはライチェスやアシュナから小遣い事情を聞いていたので知っていたのだ。
ライチェスとアシュナの話だと五十シルバくらいだと話していた。
だから、一ゴルドを出したリュンは大した者だとクリスは思った。
それで、リュンにとってはゲイズはそれ程の価値のある者だと認識した。
だから、『魔力増幅剤』の副作用がどういうものか詳しく聞き治し方があるならとミュラーに教えてもらった。
ミュラーは精神汚染が原因だと言っていた。
しかし、この症状は未だかつて誰も治した事もなく治療法は分からないということだった。
だから、かなり酷い精神汚染を受けていたクジャで試した。
クリスは魔法でレントゲンや心電図、CTスキャン、脳波を全てくまなく確認した。
しかし、何処にも異常が見られなかったのだ。
そして、クリスは気付いた。
向こうではなかった魔力という概念があったではないかと。
魔力とは魂と同じく一部例外を除き普通は目に見えないものだというので何とも言えなかったが、魔力を直接見れる龍人が、増やすのは別として魔力の異常に気付かない訳がない。
なのでこれも違うとクリスは踏んだ。
そういえば、あの羊皮紙の最後の文に強い魔力は強い魂を持つ者に宿ると書いてあった。
アレは最後の決まり文句程度にしかクリスは思っていなかった。
確かに魂に関しては、龍人に見る事は出来ない。
しかし、クリスはもう一つの難問に突き当たる。
そもそも、魂とはなんだと。
ここで、ミュラーの言った精神汚染の意味を理解した。
クリスは元々科学者のため、精神論は信じていなかった。
それこそが盲点となっていた。
精神汚染とはつまり魂の汚染だという事である。
クリスは自身に『魔力増幅剤』を使うことで精神汚染がどういうものかを試してみた。
魔力が元々多い為増えたかどうかははっきりと分からなかったがまるで自分が自分で無いような錯覚をしそうになるのだ。見たことない風景が瞬間的に脳内に入って来る。争いの叫び声が脳内に木霊する。
クリスは精神汚染がどういうものか理解した。
そして、自身の精神にある汚染を取り除く魔法を放ち、さっきのような感覚は消えていた。
クリスはこれを便宜上『精神魔法』と命名した。
それを、クジャに使用すると寝ていても分かる程、表情が穏やかになっていた。
クリスは頭ではなく感覚的に魂というものを理解したのだった。
しかし、クリスにとってこれは準備でしかなかった。
ゲイズを戻し一発ブン殴って、一ゴルドを顔面に投げつけて。
「これがお前の価値だ」と言ってやるつもりだったが、それ以上に面白いネタが上がって来たので、クリスは忘れてしまっていた。
「いや、今思うとそんなはした金いらなかったから返そうと思っただけよ」
「そういう事にしておくよ」
エリックはクリスがどこまで本気なのかは聞かなかった。
聞いてもどうせはぐらかされるのが分かりきっているからだ。
「さて、どうなってることやら。楽しみだわ」
クリスは学園長室に向かう為、部屋を出る。
その顔はかなり邪悪な笑みで、どちらが悪役なのか分からなくなってしまうようだった。
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