爆ぜろ!魔法少女いちごちゃん

空空 空

空白の幽霊 その5

 「ここは......?」
 目を覚ますと、延々と続く真っ白な空間に居た。
隣には例の少女が横たわっている。
服は至る所が破け、白い肌には血が滲んでいる。火傷もしているようだ。
だが、何よりも目を引くのはその両腕だった。
黒く、ゴツゴツした怪物のような腕。大牙の尻尾と相性が良さそうだ。
 その岩石のような硬質な表面を撫でる。
「これがこの娘の魔法少女としての姿ですか......」
 上を見上げると、空は無く白い天井が広がっていた。
天井の一部が、まるで宝石のようになっている。光の加減で違う色合いにキラキラ輝く。
私の足もとにも、それらしき破片が散らばっていた。
 その破片を、目で追いかけていると、視線は私の大剣にたどり着く。
 破片を踏み砕きながら、大剣の方へ向かう。
私の体には、それらしい損傷は見られなかった。
 四方を見回すが、この空間に果てのようなものは感じられない。
 大剣を拾う。
見た目の割には軽く、手に馴染む。
「さて......どうしますかね」
 相棒である大剣を、手で払いながら上を見る。
「やっぱり、あそこしかなさそうですね」
 大剣を横たえ、飛び乗る。
足の角度を調整し、飛び立とうとすると......。
「あの......あなたは?」
 背後から小さな声がする。
 振り返ると、少女が体を起こし座っていた。
「立てますか?」
 四人目の魔法少女。
見ていると、心の奥が軋む音がした。
 少女が体を揺する。
立とうとしているみたいだが、頭の後ろで結った髪が揺れるだけだ。
「えと......無理、そうです......」
 少女が申し訳なさそうに言う。
「大丈夫ですか?痛い所は?」
 まだ状況の把握が出来ていないようで、少女は困惑の表情を浮かべている。
 大剣から降りる。
地に剣を突き立て、少女に歩み寄る。
「ひとまずは大丈夫です。名前は?」
「わた......私は、紫苑しおんです。四葩 紫苑よひら しおん
 紫苑の側でかがみ、背を向ける。
「乗ってください。ここから出ますよ」
「ここはどこ......何ですか?」
「分かりませんが、少なくともあそこから出られるはずです」
 天井できらめく結晶を指差す。
「あそこから落ちてきたんです」
「あそこから......」
 紫苑が、か細い声で言う。
「あれって、やっぱり魔獣なんですか?」
「そうですね。あなたの気持ちも分かりますよ」
 過去の自分と重ねて語る。
「一度ブランクを抜けたら、私たちについて来てください。あなたの力になれると思います」
「は、はい......」
 傷だらけの体を引きずって、私にしがみ付く。絡みついた腕は硬く鋭く、私の体に食い込んだ。
 紫苑に振り向いて言う。
「今からあそこを目指して飛びます。あなたに与える衝撃を和らげる努力はしますが、まあ多少の痛みは我慢してください」
「う、うん」
 紫苑は、表情を整えて頷いた。

 「どうしよう、塞がってる」
 崩れた結晶は、直ぐに固まり穴を塞ぐ。それを見た大牙が、私に助け船を求める。
 だが、それどころではない。
根を振り回し、更に先程の結晶化攻撃も繰り返している。
その対応で精一杯だ。
 根を斬りはらいながら言う。
「今は私たちが生きることを考えないと......!」
 いちごちゃんが、重点的に目を狙って爆破しているが、怯む様子はない。
攻撃の合間を見つけて、結晶化攻撃をしている。
不可視の何かが放出されているようで、着弾地点は結晶化。おそらく直接命中すれば、命はないだろう。
 大牙は、ただひたすらに結晶に鉤爪を突き刺している。
「硬い......」
 爪では、威力が足りないようだ。
「ここは、一旦引いた方が......」
「でも......!」
 大牙が涙ぐんだ目で、こちらを見る。その目は鋭く、まるで睨むようだった。
 いちごちゃんが、振り乱される根を避けながら、叫ぶ。
「大丈夫!大牙は海月救出に集中して!コイツは私たちだけで大丈夫だから!」
「いちごちゃん!?」
 それは、無茶だ。
「ありがとう、いっちー」
 いちごちゃんの側まで駆け寄る。
「私たち二人でなんて......」
「大丈夫。私に任せて!二人は絶対守る」
 全く......しょうがない人たちだ。
「じゃあ、いちごちゃんは私が守る!絶対!」
「ふふ、ありがとう。だいぶ様になってきたじゃん」
「後で二人とも海月さんに叱られればいい」
 鼻で笑いながら、いちごちゃんと背中を合わせて立つ。
「二人ともごめん!」
 これは後で、私も叱られるな。
 鎌を握る手に、自然力が入る。
 背中に感じるいちごちゃんの体温と、鼓動。
 私たち二人の声が重なる。
私は鎌の刃先を、いちごちゃんは手のひらを魔獣に突き出し、
「「絶対、思い通りにさせないから!」」
 最後にいちごちゃんが付け足す。
「そこんトコ、よろしく」
 魔獣の目が、まるで笑うかのように歪む。
勝機はないが、負けてやる気もない。
 根が風を切る音を合図に、地を蹴った。
 

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