爆ぜろ!魔法少女いちごちゃん
空白の幽霊 その1
 日差しは日を追うごとに強くなり、気づけば夏のただ中に居た。
 夕食後のリビングでみんなしてテレビを眺めている。
番組は、夏になるとよくやる心霊番組だ。大体こう言うのは夏休みの時期と被るくらいの日に放送されるが、かなりフライングしている。
 外では、生暖かい空気の中を雨がポツポツ降り始めていた。
「......なんか、宇宙人系のやつの方が面白いね」
 大牙が率直な感想を述べる。
 私も、こう言う番組を見るとどうしても「でも合成なんでしょ」と思ってしまい、素直に楽しめない。
「まぁ九割がた偽物ですよ......」
 海月さんがみかんの皮を剥きながら言う。
「て言うことは一割は......」
 画面から顔を逸らしながらも、ちらちら覗いていたいちごちゃんが呟く。
「あらあら、今日は私と寝る?」
 叔母さんがからかうように言うが、いちごちゃんは首を横に振る。
「小鳥ちゃんがいるから大丈夫......」
 ちらっとこちらを見る。
「......やっぱちょっと頼りない」
「意地でも叔母さんの部屋に行かせない」
 いちごちゃんの肋骨もほぼ治った。あれからそれなりに時間は経ってるから当然だ。
 まだ電車での行方不明者は後を絶たない。
 あれからは、ベッドで寝るのが当たり前になって来て、布団も片付けてしまった。
 しかしながら流石に暑い。
二つの熱源があるわけだから、そりゃそうだ。
 その所為でなかなか寝付けないでいる。
 不意に背中を細い指につつかれる。
慣れない感触だったから驚いたが、すぐに小さな声が聞こえる。
「起きてる......?」
 体の向きを変える。
目の前にはいつも通り、いちごちゃんの顔があった。
 私も小さい頃こう言うことがあったからよく分かる。
 ちょっと怖い番組を見たときに限って行きたくなるのだ。
「トイレ?」
 いちごちゃんが黙って頷く。
その表情から、本当に怖いんだろうなと容易に伝わってきた。
 いちごちゃんの手を引いて部屋を出る。
 薄暗い廊下に出ると、雨の音がよりはっきり耳に届いた。
 この家は二階にはトイレが無い。
なので一階に降りる必要があるのだが......。
「電気が点いてるみたい......」
 その階段からは、一階の明かりが差し込んできていた。
「電気が点いてるなら怖くないよね」
「点いてても怖い!」
 私の言葉を「一人でも行けるね」と言うニュアンスで捉えたようでやや食い気味で言う。
 実際、電気が点いてて全く知らない人がいたらお化けよりずっと怖い。
「別に置いてったりしないよ」
 足並みを揃えて階下へ向かった。
 一階では、いつものリビングルームで叔母さんがお茶を飲んでいた。
 私たちに気づいた叔母さんが、笑う。
「あら?二人ともトイレ?」
 いちごちゃんが頷く。
「私は付き合わされてるだけですけどね......」
 「去年まではその役は私だったわ。そんなに怖いなら、なんで見るのかしらね」
「叔母さんは、こんな時間にどうしたんですか?」
 叔母さんがティーカップに口をつける。中身は多分紅茶だ。
「苦手なの」
「は?」
「実は私もあの手の番組苦手なのよ。だから今夜はずっとここで過ごすつもりだったけど......これはこれで怖いわね。明るければ大丈夫だと思ってたわ」
 いちごちゃんが、寝巻きの袖を引く。
「ん?トイレ行かないの?」
「ダメよ、ちゃんとトイレの前まで連れて行ってあげないと......」
 そう言うことか。
ここで漏らされたらたまらないので、早々と部屋を出た。
 階段の奥。
階段脇の通路を通った先にトイレがある。さらにそこを右に行くと浴室だ。
 階段の脇に入ると、再び暗闇に包まれる。
と言っても、四歩ほどでトイレの前だ。
 いちごちゃんがトイレに駆け込む。
中からは、お決まりの「まだそこに居てね」と言う台詞がくぐもった声で発せられた。
 用を足し終えたいちごちゃんが、トイレから出てくる。
「私が起きてて良かったね」
 実際、寝てたら起きない自信があった。
 再び来た道を戻る。
階段の軋む音がいい演出になってるなと思った。
 部屋に戻り、布団に潜る。
「一回じゃ済まないかもしれないから、そこんとこヨロシク......」
 私もいちごちゃんも結局なかなか寝付けなかった。
 夕食後のリビングでみんなしてテレビを眺めている。
番組は、夏になるとよくやる心霊番組だ。大体こう言うのは夏休みの時期と被るくらいの日に放送されるが、かなりフライングしている。
 外では、生暖かい空気の中を雨がポツポツ降り始めていた。
「......なんか、宇宙人系のやつの方が面白いね」
 大牙が率直な感想を述べる。
 私も、こう言う番組を見るとどうしても「でも合成なんでしょ」と思ってしまい、素直に楽しめない。
「まぁ九割がた偽物ですよ......」
 海月さんがみかんの皮を剥きながら言う。
「て言うことは一割は......」
 画面から顔を逸らしながらも、ちらちら覗いていたいちごちゃんが呟く。
「あらあら、今日は私と寝る?」
 叔母さんがからかうように言うが、いちごちゃんは首を横に振る。
「小鳥ちゃんがいるから大丈夫......」
 ちらっとこちらを見る。
「......やっぱちょっと頼りない」
「意地でも叔母さんの部屋に行かせない」
 いちごちゃんの肋骨もほぼ治った。あれからそれなりに時間は経ってるから当然だ。
 まだ電車での行方不明者は後を絶たない。
 あれからは、ベッドで寝るのが当たり前になって来て、布団も片付けてしまった。
 しかしながら流石に暑い。
二つの熱源があるわけだから、そりゃそうだ。
 その所為でなかなか寝付けないでいる。
 不意に背中を細い指につつかれる。
慣れない感触だったから驚いたが、すぐに小さな声が聞こえる。
「起きてる......?」
 体の向きを変える。
目の前にはいつも通り、いちごちゃんの顔があった。
 私も小さい頃こう言うことがあったからよく分かる。
 ちょっと怖い番組を見たときに限って行きたくなるのだ。
「トイレ?」
 いちごちゃんが黙って頷く。
その表情から、本当に怖いんだろうなと容易に伝わってきた。
 いちごちゃんの手を引いて部屋を出る。
 薄暗い廊下に出ると、雨の音がよりはっきり耳に届いた。
 この家は二階にはトイレが無い。
なので一階に降りる必要があるのだが......。
「電気が点いてるみたい......」
 その階段からは、一階の明かりが差し込んできていた。
「電気が点いてるなら怖くないよね」
「点いてても怖い!」
 私の言葉を「一人でも行けるね」と言うニュアンスで捉えたようでやや食い気味で言う。
 実際、電気が点いてて全く知らない人がいたらお化けよりずっと怖い。
「別に置いてったりしないよ」
 足並みを揃えて階下へ向かった。
 一階では、いつものリビングルームで叔母さんがお茶を飲んでいた。
 私たちに気づいた叔母さんが、笑う。
「あら?二人ともトイレ?」
 いちごちゃんが頷く。
「私は付き合わされてるだけですけどね......」
 「去年まではその役は私だったわ。そんなに怖いなら、なんで見るのかしらね」
「叔母さんは、こんな時間にどうしたんですか?」
 叔母さんがティーカップに口をつける。中身は多分紅茶だ。
「苦手なの」
「は?」
「実は私もあの手の番組苦手なのよ。だから今夜はずっとここで過ごすつもりだったけど......これはこれで怖いわね。明るければ大丈夫だと思ってたわ」
 いちごちゃんが、寝巻きの袖を引く。
「ん?トイレ行かないの?」
「ダメよ、ちゃんとトイレの前まで連れて行ってあげないと......」
 そう言うことか。
ここで漏らされたらたまらないので、早々と部屋を出た。
 階段の奥。
階段脇の通路を通った先にトイレがある。さらにそこを右に行くと浴室だ。
 階段の脇に入ると、再び暗闇に包まれる。
と言っても、四歩ほどでトイレの前だ。
 いちごちゃんがトイレに駆け込む。
中からは、お決まりの「まだそこに居てね」と言う台詞がくぐもった声で発せられた。
 用を足し終えたいちごちゃんが、トイレから出てくる。
「私が起きてて良かったね」
 実際、寝てたら起きない自信があった。
 再び来た道を戻る。
階段の軋む音がいい演出になってるなと思った。
 部屋に戻り、布団に潜る。
「一回じゃ済まないかもしれないから、そこんとこヨロシク......」
 私もいちごちゃんも結局なかなか寝付けなかった。
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