爆ぜろ!魔法少女いちごちゃん
激走!電車型魔獣!その7
 「脱臼って、一回なったら癖になりやすいらしいよ」
 大牙が、自分のやったことから目を逸らして言う。
「まじか......」
 帰還してから、とりあえず全員病院に行くはめになったが、私と海月さん意外は特に問題ないみたいだ。
 入院って程ではないが、私の肩には未だに痛みが残り、海月さんは腕の骨にヒビが入ってしまったそうだ。正直、海月さんはちゃんとした治療が必要なのではと思う。
「もう......。みんな、あんまり張り切りすぎないで頂戴ね」
 叔母さんが言う。
その表情は、私たちが帰ってきたばかりの時と違い安堵の色が濃い。
 リビングの扉が開き、海月さんの濡れた頭が覗く。
「お風呂上がりました。あと幸さんだけです」
「分かった。ありがとう。海月ちゃんもよく休むのよ」
「はい。すみません」
 そう言って、二階へ上がっていった。
「さて、二人ももう今日は寝なさい。疲れたでしょ」
「「はーい」」
 私と大牙の声が重なる。
いちごちゃんは帰ってからずっと部屋に籠りきりだった。
 部屋に入ると、ベッドに横たわったいちごちゃんが額に手を当て照明を見つめていた。
視線はそのまま、独り言のように呟く。
「私さ......魔法少女になったから、何か出来ると思ってたんだ。でもさ、結局誰も助けられないで、みんなにも迷惑かけて......」
 声が水分を失い、ボソボソしていた。
 かけるべき言葉が分からずに、とりあえずベッドに腰掛ける。
腰がゆっくりと沈んでいく。
「私は、そう言う姿勢とかって、すごいと思うよ。私なんか今まで見捨てて逃げてたし......。誰かを守れる力があったって、本当に誰かを守るために戦う決断をするのって難しいと思うし」
 結局、私は何が言いたいんだ?
自分で言っていて見失う。
「私のこの力で、誰か守れるのかな」
「私は守られたよ」
「............」
 人を慰めることは、存外難しい。
そもそも、慰めることでどうにかなるかも分からない。
そう分からないんだ。
私は、いちごちゃんを慰めて、そしていちごちゃんにどうなってもらいたいのか、なんでいちごちゃんを慰めてるのか分からない。
 誰かの為とか、正直実感が湧かないし、私が本当に言いたいことは何なんだろう。
 ただ、いちごちゃんが悲しそうな顔をしているのは、なんとなく嫌だった。
 おもむろに立ち上がり、電気の紐を引っ張る。
照明が消えるが、外の光で薄っすら明るい。
 そして、ベッドの横に敷いた布団......ではなく、ベッドに飛び込む。
 いちごちゃんが驚いた様子でこちらを窺う。
 そのほっぺたを掴んで、輪郭を歪ませる。口角を無理矢理持ち上げる。
「ひゃめへよ」
 そのいちごちゃんの言葉で手を離す。
「き、急に何?」
「分かんない」
「え......?」
「分かんない!」
 それが、私が唯一完全に理解している事だから、自信いっぱいに叫ぶ。
「分かんない......けどさ、やっぱりいちごちゃんはすごいんだよ!きっと」
「なにそれ......?」
「いちごちゃんがしたいことが何かは知らないけど、いちごちゃんなら出来ると思うんだ。分かんないけど!」
「なにそれ......」
 そう言って、いちごちゃんはちょっと呆れたように笑った。
 いちごちゃんに身を寄せる。
「今日はベッドで寝ようかな......」
「べ、別に......いいけど......」
 まだぎこちないいちごちゃんを、そっと抱き寄せた。
 「大牙、ちょっといいですか?」
「ん?なぁに、みっきー?」
  さっきまで寝ていたようで、眠たそうに目を擦る。
 魔獣のことで、話したいことがあった。
「あの魔獣ですが、今まで電車を襲っていたものとは別個体な可能性があります」
「えぇ?うそぉ......」
「今まで出没していた魔獣は、電車を破壊していませんでしたが、今回の魔獣は電車を破壊しました」
「......気まぐれじゃない?」
 そう言う大牙の表情は、凄く嫌そうだ。気まぐれではないだろうと、本人もそう思って言っているのだろう。
「だとしたら......どうしよう?」
「とりあえず、いちごにだけは黙っておきます。まだそうだと決まったわけでもないので、深く考えるのはやめておきましょう。今は体を休めるときです」
「なら、そんな話すんなよぉ」
「すみませんね」
 大牙なら、はなから深く考えたりするわけないので、適当にあしらって部屋を後にした。
 「朝ですよ」
 その声に叩き起こされる。
「全く......。そろそろ暑くなってくるって言うのに......。その様子なら、いちごも心配なかったかもしれないですね」
 寝起きの回らない頭で、その様子ってどの様子?と考える。
薄く目を開けると、答えはそこにあった。
いちごちゃんの寝息が、首筋を撫でる。
「いちごちゃん......朝だって」
 あくびをして、体を起こす。
 いちごちゃんも、私の動きを呼び水にもぞもぞ動き出す。
 ここに来るまでは、日曜日は昼に起きるのが当たり前だったので、やっぱりまだ頭が働かない。
 あくびを噛み殺しながら、いちごちゃんと階段を降りていった。
「おはよー」
 リビングに入ると、大牙が話しかけてきた。
「おはよ。大牙が朝起きてるなんて珍しいね」
 カップを手に持った海月さんが、椅子に座る。
「大牙は日曜の朝に決まって見る番組がありますから、そのときだけのこのこ起きてくるんです」
 そう言って、大牙に鋭い視線を送る。
「出来れば、毎日そうしてもらいたいですがね」
 少しずつ、平常運転になっていくのを感じる。
昨日みたいなことがあっても、日常はまだここにあった。
 そのことが、なんとなく嬉しかった。
 大牙が、自分のやったことから目を逸らして言う。
「まじか......」
 帰還してから、とりあえず全員病院に行くはめになったが、私と海月さん意外は特に問題ないみたいだ。
 入院って程ではないが、私の肩には未だに痛みが残り、海月さんは腕の骨にヒビが入ってしまったそうだ。正直、海月さんはちゃんとした治療が必要なのではと思う。
「もう......。みんな、あんまり張り切りすぎないで頂戴ね」
 叔母さんが言う。
その表情は、私たちが帰ってきたばかりの時と違い安堵の色が濃い。
 リビングの扉が開き、海月さんの濡れた頭が覗く。
「お風呂上がりました。あと幸さんだけです」
「分かった。ありがとう。海月ちゃんもよく休むのよ」
「はい。すみません」
 そう言って、二階へ上がっていった。
「さて、二人ももう今日は寝なさい。疲れたでしょ」
「「はーい」」
 私と大牙の声が重なる。
いちごちゃんは帰ってからずっと部屋に籠りきりだった。
 部屋に入ると、ベッドに横たわったいちごちゃんが額に手を当て照明を見つめていた。
視線はそのまま、独り言のように呟く。
「私さ......魔法少女になったから、何か出来ると思ってたんだ。でもさ、結局誰も助けられないで、みんなにも迷惑かけて......」
 声が水分を失い、ボソボソしていた。
 かけるべき言葉が分からずに、とりあえずベッドに腰掛ける。
腰がゆっくりと沈んでいく。
「私は、そう言う姿勢とかって、すごいと思うよ。私なんか今まで見捨てて逃げてたし......。誰かを守れる力があったって、本当に誰かを守るために戦う決断をするのって難しいと思うし」
 結局、私は何が言いたいんだ?
自分で言っていて見失う。
「私のこの力で、誰か守れるのかな」
「私は守られたよ」
「............」
 人を慰めることは、存外難しい。
そもそも、慰めることでどうにかなるかも分からない。
そう分からないんだ。
私は、いちごちゃんを慰めて、そしていちごちゃんにどうなってもらいたいのか、なんでいちごちゃんを慰めてるのか分からない。
 誰かの為とか、正直実感が湧かないし、私が本当に言いたいことは何なんだろう。
 ただ、いちごちゃんが悲しそうな顔をしているのは、なんとなく嫌だった。
 おもむろに立ち上がり、電気の紐を引っ張る。
照明が消えるが、外の光で薄っすら明るい。
 そして、ベッドの横に敷いた布団......ではなく、ベッドに飛び込む。
 いちごちゃんが驚いた様子でこちらを窺う。
 そのほっぺたを掴んで、輪郭を歪ませる。口角を無理矢理持ち上げる。
「ひゃめへよ」
 そのいちごちゃんの言葉で手を離す。
「き、急に何?」
「分かんない」
「え......?」
「分かんない!」
 それが、私が唯一完全に理解している事だから、自信いっぱいに叫ぶ。
「分かんない......けどさ、やっぱりいちごちゃんはすごいんだよ!きっと」
「なにそれ......?」
「いちごちゃんがしたいことが何かは知らないけど、いちごちゃんなら出来ると思うんだ。分かんないけど!」
「なにそれ......」
 そう言って、いちごちゃんはちょっと呆れたように笑った。
 いちごちゃんに身を寄せる。
「今日はベッドで寝ようかな......」
「べ、別に......いいけど......」
 まだぎこちないいちごちゃんを、そっと抱き寄せた。
 「大牙、ちょっといいですか?」
「ん?なぁに、みっきー?」
  さっきまで寝ていたようで、眠たそうに目を擦る。
 魔獣のことで、話したいことがあった。
「あの魔獣ですが、今まで電車を襲っていたものとは別個体な可能性があります」
「えぇ?うそぉ......」
「今まで出没していた魔獣は、電車を破壊していませんでしたが、今回の魔獣は電車を破壊しました」
「......気まぐれじゃない?」
 そう言う大牙の表情は、凄く嫌そうだ。気まぐれではないだろうと、本人もそう思って言っているのだろう。
「だとしたら......どうしよう?」
「とりあえず、いちごにだけは黙っておきます。まだそうだと決まったわけでもないので、深く考えるのはやめておきましょう。今は体を休めるときです」
「なら、そんな話すんなよぉ」
「すみませんね」
 大牙なら、はなから深く考えたりするわけないので、適当にあしらって部屋を後にした。
 「朝ですよ」
 その声に叩き起こされる。
「全く......。そろそろ暑くなってくるって言うのに......。その様子なら、いちごも心配なかったかもしれないですね」
 寝起きの回らない頭で、その様子ってどの様子?と考える。
薄く目を開けると、答えはそこにあった。
いちごちゃんの寝息が、首筋を撫でる。
「いちごちゃん......朝だって」
 あくびをして、体を起こす。
 いちごちゃんも、私の動きを呼び水にもぞもぞ動き出す。
 ここに来るまでは、日曜日は昼に起きるのが当たり前だったので、やっぱりまだ頭が働かない。
 あくびを噛み殺しながら、いちごちゃんと階段を降りていった。
「おはよー」
 リビングに入ると、大牙が話しかけてきた。
「おはよ。大牙が朝起きてるなんて珍しいね」
 カップを手に持った海月さんが、椅子に座る。
「大牙は日曜の朝に決まって見る番組がありますから、そのときだけのこのこ起きてくるんです」
 そう言って、大牙に鋭い視線を送る。
「出来れば、毎日そうしてもらいたいですがね」
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