爆ぜろ!魔法少女いちごちゃん

空空 空

激走!電車型魔獣!その4

「ねぇ?小鳥ちゃんって、もう明日から学校来るの?」
 ベッドの上から、いちごちゃんが話しかけてくる。
部屋の数が足りないようで、私はいちごちゃんと同じ部屋に配属されたのだ。
 渡された布団をベッドの横に敷きながら答える。
「うん。明日から」
「そっかぁ。なんか大変だね」
「そうでもないと思うよ」
 いちごちゃんが電気を消す。
「でも、今日は早く寝たほうがいいね」

 朝。
目を覚ますと、掛け布団がいちごちゃんに入れ替わっていた。
意識のない人間の重さを、こんな形で知ることになるとは思わなかった。
 目だけを動かして、状況を確認する。
部屋の明るさと、下の階からテレビの音声が聞こえることから、まず間違いなく朝だろう。
 体を動かすべきか否か、少し迷う。
 動かしたら、起こしちゃうよね......。
 起こしたらマズイかどうかはともかく、体を動かさないことを選ぶ。
「......」
 そう決めた途端に、血液の流れが遮断された腕の痺れが気になりだす。
「..................」
 なんだこれは。誰か助けてくれ。
その願いが届いたのか、階段をゆっくり登ってくる足音が近づく。
 開けられたドアから、外側のまだ冷たい空気が流れ込む。
「起きてください、二人とも。一体何時だと思ってんですか」
 入ってきたのは、海月さんだった。
「あの......これ」
 姿勢で、いちごちゃんを指して、どうすればいいか、回答を求める。
「そんなの、蹴っ飛ばして構いませんよ......。私も今から、隣の部屋のやつを蹴っ飛ばしに行きますから」
 そう言い残して部屋を出ようとするが、途中で止まり、付け足す。
「ああ......そうでした。あなたの制服は、まだ用意出来ていないので、今日は前の学校の制服でいいそうです」
「え......」
 ドアが閉じる。
 とりあえず、申し訳程度にいちごちゃんに蹴りを入れてから立ち上がる。目は覚ましてないみたいだ。
部屋の隅に置いたリュックサックを開く。
 アルバムと筆箱が入っていた。
と言うかそれだけ。
 隣の部屋から、容赦なく蹴られた人間の断末魔が響く。
「どうしよ......。制服持って来てないじゃんか」

 四人で話しながら、通学路を歩く。周囲には、似たような制服の生徒のグループがいくつか見られた。
「かたじけない」
 大牙に向かって手を合わせる。
「いやぁ、ボクのが合ってよかったよ」
 あの後、制服ならいちごちゃんの予備があるという話になったが、サイズが小さすぎて、結果的に大牙のを借りることになった。
サイズは問題ないが、学年が違うから襟や袖に入っているラインの色が違う。
一年生は赤、二年生は青、三年生は緑だそうだ。
私が今着ているものには青いラインが引かれている。
いちごちゃんが赤で、大牙と海月さんが青だ。
 海月さんが先輩なのは納得だが、正直大牙は同い年だと思ってた。
「明日までには用意出来ると思います。今日はなんとかそれで凌いでください」
「ワケありだし、先生に言えば全然大丈夫だよ。同じクラスには私もいるしね」
そう言ういちごちゃんの顔は、何故か自身に満ちていた。

 自己紹介後の休み時間。
転校生の洗礼を今まさに受けている。質問ぜめだ。疲れるけれども、そんなに悪い気はしない。
 そんな中、いちごちゃんが私の側に駆け寄ってくる。
「いいなー、人気者だ」
「人気者って言うか......」
 いつかこの熱も冷めるので、今のうちに味わっておくことにした。

 全ての授業を終えて、なんとか放課後を迎える。
 これは、想像以上に......。
「疲れたぁ......」
「おつかれぇ」
 机に突っ伏していると、いちごちゃんが覗き込んできた。
「......帰ろっか」

 朝来た道を、いちごちゃんと逆向きに進む。
「大牙は再テストで、海月は委員会だって」
「再テスト?」
「漢字の小テストだって」
 成績が良くないのか、テストの難易度が高いのか......違ったら申し訳ないが、多分前者だろう。
「みんな揃ったら、作戦会議するよ」
「作戦会議......?」
「とりあえずの目標は、電車の魔獣をやっつけることだね」
「あぁ......」
 なんで、いちごちゃんたちは自らこんなことをしているのだろう。
少し不思議に思った。
「そんなに心配はいらないよ。幸さんは、命の心配はないって言ってたけどさ、実際私結構強いから!」
 歯を見せて笑う。
 よく笑う子だなって思った。
 それに釣られてか、私も笑う。
「いちごちゃんって......実はちょっと自身過剰?」
「そんなことないやい!」
 そう言って膨れる。
小動物みたいで、可愛いと思った。

 雰囲気作りの為か、部屋を限界まで暗くしてある。
みんな神妙な面持ちでテーブルを囲む。海月さんが、こう言うのに水を差さずに乗っかっているのが意外だ。あるいは、メンバーの扱いに慣れているだけかもしれない。
「これより作戦会議部の活動を開始する!」
 大牙が、少し作った声で始める。
「と言うわけで部長、どうぞ」
 あ......話し始めたのに、大牙が部長ってわけじゃないのか。
「前回では、魔獣の移動が実際の列車の移動に符合していると言う仮説を立てました。そして昨日の出現。調べてみましたが、全く関係のない場所に出現しています。つまり完全に魔獣の気まぐれです」
「なるほど......?」
 あまり話を聞いてなかったのか、いちごちゃんがよく分かっていなそうなまま納得する。
「時間とかもバラバラなんですか?」
 会議っぽく、手を挙げて発言する。
「私たちも接敵出来たのは三度だけ、どれもまぐれです。しかし私たちが遭遇したのはどれも休日の夕方でした。そして四度目のいちごの遭遇。あれはご存知の通り平日の夕方です。しかし電車の乗客が消えるのは夜にも起きています」
「えぇと......?」
「今言えるのは、朝には一度も起きていないらしいと言うことです」
 それだけじゃどうにか出来そうもない。
「そう言えば、いちごちゃんはあのときなんで居たの?」
「んえ?私?」
 自分に質問が来るとは思ってなかったらしい。
「あぁ、それならねぇ」
「はい、そうですね」
 大牙と海月さんが顔を見合わせて言う。
「「戦闘狂だから」」「ですね」
 「え?」
「いちごは戦闘狂ですから、ブランクに居る時間、魔獣と遭遇する機会がやたら多いんですよ」
「ちょっと待って、私そんな評価だったの......」
「一人で戦って、骨折ったことだってあったじゃないですか」
「え?そうなの?」
「ん......まぁ。でも、なんかさ、こう......時々、気配みたいなの感じない?」
「ない」
「ないですね」
 結局、タイミングの特定すら出来そうにない。
 だが、それでも海月は言葉を続ける。
「私たちは魔獣の気配など微塵も感じません。ですが、なにせ私たちにも手がないです。考えても仕方ないなら、試せるものをやっていきましょう」
 策は無いに等しい。
けど、このままじゃ埒が明かない。
私は魔法少女の力について詳しいことは知らない。ただ、遺物と同じで魔法少女にも分からないことばかりだと叔母さんが言っていた。
なら、気配みたいなのが分かっても不思議じゃないのかもしれない。かなり楽観論だけどね。
「じゃぁ、これにて会議終了かな」
 大牙が締めに入ろうとする。
「あ、ちょっと待って」
 そこを引き止める。
「あ、全然関係ない話なんだけど。海月さん、料理は人足りてますよね」
「?......問題ないとは思いますが」
 いちごちゃんたちを見て、笑う。
「だってさ......後で掃除当番のじゃんけんでもする?」

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