牧之原智花は人を殺さない

もやもや

15

何かあったらこれで知らせろ。このペンは宙(そら)で書いたものをこちらに瞬時に送ることができる。まあメールやチャットみたいなものだと思ってくれ」
「スマホとか電気とかそういうのはないの?」
「そんなものはない。そうだな……文明レベルは日本の歴史でいえば室町時代くらいだと思ってもらうと分かり易いかもしれん」
「室町……時代……」
 智花は全身から力が抜けていくのを感じた。
「なんとかなるんでしょ」
 毘沙門天が話しかけてくる。
「なんとからなない気がする……」
熊野は事務官に話しかけられていた。何やら一言二言耳打ちをされている。
「準備ができたようだ。じゃあ頑張ってこいよ」
 智花はけだるくなった身体に鞭を打ち、アステリアと現世を繋ぐ穴の中へ一歩踏み出した。

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