牧之原智花は人を殺さない

もやもや

「ちょっと毘沙門天」
 智花はお腹を出して眠っている毘沙門天のさすりながら言った。
「仕事行ってくるからね」
 毘沙門天は商店が合っていない視線で智花をみた。
「ん……今日も人間の魂をいっぱい抜いてくるんだっけ」
「違う。魂じゃなくて寿命。それに私魂抜いたことないから」
 毘沙門天は起き上がり伸びをした。そしてのっそのっそとのんびりと餌のえさのあるところに向かった。
「でもさ。ひと月のノルマって人間の一年分の寿命だよね。智花は毎日何人くらいの人間から寿命をとっているの?」
 餌の入っているお椀に口を点け二、三口食べたところで一旦食べるのを止め智花に尋ねる。
「基本的に一人一日って決めてる」
「じゃあ毎日大体十人以上の人間の寿命もらっているってことか。毎日毎日面倒くさくない?」 
「しょうがないじゃない。……あまり寿命をとっちゃたら、その人の影響でちゃうし……」
 智花はそっぽを向き、黒くて長い髪の毛を触りながら答える。
「まあ僕としては、毎日ご飯が食べられれば問題ないんだけどね」
 毘沙門天は再び餌を食べ始めた。
「ったく……。じゃあ行ってくるから……」
 智花は餌を食べ続けている毘沙門天に言い残し、部屋を出た。

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