幸せの鮮血
6話 白のひと時
思い出すのは2年前。
私が15歳の頃。
「シャンザ!あなたは逃げなさい!」
「どうして?」
「とんでもないやつに目をつけられたのよ…!まったく…誰がこんな依頼を…!」
「それを今嘆いてももう変わらない。とにかく逃げることだけを考えるんだ。」
「どういう事?シャルおばさん。」
「いい?シャンザ。よく聞きなさい。私達は今殺し屋に命を狙われているの。」
「殺…し屋?」
「ええ。それも凄腕の。」
「そんな…。」
「だが情報が早く入ったおかげで何とかなりそうだ。今夜のうちにでも逃げるぞ。シャンザ、必要なものだけ持ってくるんだ。極力荷物は一つにまとめなさい。」
「う、うん…。」
シャンザは急いで自室へと向かう。
そして必要なものだけをカバンに詰め込む。
カタ…
「あれ?窓開けっ放し…。」
「ん?ああ…そう言えばターゲットじゃない女の子がいるって言ってたな…。」
「!」
ベランダに人影があった。
純白のコートにフードを被っており、目だけが不気味に赤く光り輝いていた。
「さて…殺したいところだがお前は殺すなとの依頼なんでね…。」
「え…あ…ああ…」
シャンザは恐怖のあまり腰をつく。
「下か…ちっ…やっぱり情報が出回ってやがったか…。逃がすかよ…。」
その場から男は姿を消した。
それから何分たっただろう?
私は怖くて…怖くてずっと布団を被って震えてた。
部屋に誰かが入ってくる音。
「おい…邪魔したな…。」
「え?」
シャンザが布団から出るとベランダから飛び降りる男の姿があった。
シャンザは恐る恐る下階へ向かう。
「っ…!」
そこでシャンザは息を飲む。
そう…綺麗だったのだ。
肉親ではなく血の繋がらない人間だ。
しかし家族のように接してくれた人達である。
それでもシャンザが最初に感じたのは感動だった。
飛び散った血は壁に真紅の花を咲かせていた。
それはまるで絵画のような光景だった。
そこで我に返る。
「おばさん…おじさん…。」
何も感じない訳では無い。
それでも涙は出てこなかった。
何より目の前の芸術に圧倒されてしまったのだ。
「綺麗…。」
月明かりに照らされた2人の鮮血は自然の力と合わさり総合芸術となっている。
これがわたしと白虎の出会い…。
──
この学校に来てしばらく経った。
テストの時期がやってきた。
「サチトくん。勉強の方は進んでる?」
「心配ないよ。遅れてた分はシャンザのおかげで何とかなりそうだしね。」
「良かった〜。分からないことあったらなんでも聞いてね!」
「ああ、ありがとう。」
「ふふ…そろそろ休憩してお昼ご飯にしよーよ。」
「もうそんな時間か…そうだね。行こうか。」
「ううん、今日私お弁当作ってきたんだけど…。」
「へえ…。」
「だ、だから…サチトくんの分も…。」
「え?俺の分も?」
「迷惑…だったかな?」
「い、いや、俺は買って食べるつもりだったしありがたいよ!」
「そ、そっか!良かった〜。」
通りであくびばっかしてた訳だ。
「今度は同じEランクを餌付けしようという訳か…。」
そこに待たしても鼻につく声が聞こえる。
「アレン…。」
「ふん…弁当などEランクにはピッタリな質素なものだな…。」
「っ…」
「はあ…うるさいな…お前ら見てると飯不味くなるんだけど…。」
「あぁ?!なんだとてめえ!」
取り巻きが胸ぐらを掴んでくる。
「お前誰?」
「俺はこの国の伯爵トーリマキ家のアレンノだ!」
「ぶっ…アレンの取り巻きってか…。」
「てめえ…うちの名を侮辱する気か?」
「ちげえよ。お前ん家の名を笑っただけ。」
「同じことだろうがクソ野郎!」
アレンノはサチトに殴り掛かる。
「おいおい、伯爵家のお坊ちゃまがこんなところで問題起こしていいのか?」
サチトは難なく避ける。
「てめえ…ふざけんじゃねぇ!」
アレンノはイラついたのかシャンザの机を蹴り倒す。
「あ!お弁当が…!」
「知るかよ!」
そしてそのお弁当を踏みつけた。
「へっ!こんな生ゴミ俺が捨てて…」
「おいクソ野郎…足どけろ。」
「あ?」
「聞こえなかったか?足どけろっつってんだよ」
「はは…昼飯無くなったのがそんなに悲しいかぁ?!だったらこうしてやるよ!」
アレンノはさらにお弁当を踏み付けようとする。
バキッ!
「がっ!!」
アレンノは後ろに吹き飛んだ。
「伯爵家のお坊ちゃんは飯を作る大変さが分からねえみたいだな…。」
「サ、サチトくん!」
「て、てめえ…!」
サチトはアレンノに近づき髪の毛を掴み持ち上げる。
「いいか?食べ物を粗末にすんじゃねえ。増してはシャンザが早起きして作った弁当だ。この世界には食べ物を食べたくても食えない奴だっているんだ。シャンザは眠い目を擦りながら作ってくれた…。…てめえみたいなクズが踏みつけていいものじゃねえんだよ!」
そのままアレンノを殴り飛ばした。
「ふぅ…。」
「サチトくん…。」
「さてと…。」
サチトは腰を曲げ、お弁当を丁寧に拾っていく。
「サ、サチトくん!何して…」
「うまそうなサンドイッチだな…早速いただくよ…。」
「サチトくん?!」
サチトは踏みつけられぐちゃぐちゃになったサンドイッチを口に運ぶ。
「んん…美味いな…。」
「む、無理しなくていいんだよ?!」
「無理なんかしてないよ…。こっちの方が食堂とかで食うよりずっと美味い。」
「…っ…サチトくん…。」
「まあ今回はこんなぐちゃぐちゃになっちまったけど…また作ってきてくれるか?」
「うん…!絶対作る!」
そう言ってシャンザは目元を擦りながら微笑んだ。
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私が15歳の頃。
「シャンザ!あなたは逃げなさい!」
「どうして?」
「とんでもないやつに目をつけられたのよ…!まったく…誰がこんな依頼を…!」
「それを今嘆いてももう変わらない。とにかく逃げることだけを考えるんだ。」
「どういう事?シャルおばさん。」
「いい?シャンザ。よく聞きなさい。私達は今殺し屋に命を狙われているの。」
「殺…し屋?」
「ええ。それも凄腕の。」
「そんな…。」
「だが情報が早く入ったおかげで何とかなりそうだ。今夜のうちにでも逃げるぞ。シャンザ、必要なものだけ持ってくるんだ。極力荷物は一つにまとめなさい。」
「う、うん…。」
シャンザは急いで自室へと向かう。
そして必要なものだけをカバンに詰め込む。
カタ…
「あれ?窓開けっ放し…。」
「ん?ああ…そう言えばターゲットじゃない女の子がいるって言ってたな…。」
「!」
ベランダに人影があった。
純白のコートにフードを被っており、目だけが不気味に赤く光り輝いていた。
「さて…殺したいところだがお前は殺すなとの依頼なんでね…。」
「え…あ…ああ…」
シャンザは恐怖のあまり腰をつく。
「下か…ちっ…やっぱり情報が出回ってやがったか…。逃がすかよ…。」
その場から男は姿を消した。
それから何分たっただろう?
私は怖くて…怖くてずっと布団を被って震えてた。
部屋に誰かが入ってくる音。
「おい…邪魔したな…。」
「え?」
シャンザが布団から出るとベランダから飛び降りる男の姿があった。
シャンザは恐る恐る下階へ向かう。
「っ…!」
そこでシャンザは息を飲む。
そう…綺麗だったのだ。
肉親ではなく血の繋がらない人間だ。
しかし家族のように接してくれた人達である。
それでもシャンザが最初に感じたのは感動だった。
飛び散った血は壁に真紅の花を咲かせていた。
それはまるで絵画のような光景だった。
そこで我に返る。
「おばさん…おじさん…。」
何も感じない訳では無い。
それでも涙は出てこなかった。
何より目の前の芸術に圧倒されてしまったのだ。
「綺麗…。」
月明かりに照らされた2人の鮮血は自然の力と合わさり総合芸術となっている。
これがわたしと白虎の出会い…。
──
この学校に来てしばらく経った。
テストの時期がやってきた。
「サチトくん。勉強の方は進んでる?」
「心配ないよ。遅れてた分はシャンザのおかげで何とかなりそうだしね。」
「良かった〜。分からないことあったらなんでも聞いてね!」
「ああ、ありがとう。」
「ふふ…そろそろ休憩してお昼ご飯にしよーよ。」
「もうそんな時間か…そうだね。行こうか。」
「ううん、今日私お弁当作ってきたんだけど…。」
「へえ…。」
「だ、だから…サチトくんの分も…。」
「え?俺の分も?」
「迷惑…だったかな?」
「い、いや、俺は買って食べるつもりだったしありがたいよ!」
「そ、そっか!良かった〜。」
通りであくびばっかしてた訳だ。
「今度は同じEランクを餌付けしようという訳か…。」
そこに待たしても鼻につく声が聞こえる。
「アレン…。」
「ふん…弁当などEランクにはピッタリな質素なものだな…。」
「っ…」
「はあ…うるさいな…お前ら見てると飯不味くなるんだけど…。」
「あぁ?!なんだとてめえ!」
取り巻きが胸ぐらを掴んでくる。
「お前誰?」
「俺はこの国の伯爵トーリマキ家のアレンノだ!」
「ぶっ…アレンの取り巻きってか…。」
「てめえ…うちの名を侮辱する気か?」
「ちげえよ。お前ん家の名を笑っただけ。」
「同じことだろうがクソ野郎!」
アレンノはサチトに殴り掛かる。
「おいおい、伯爵家のお坊ちゃまがこんなところで問題起こしていいのか?」
サチトは難なく避ける。
「てめえ…ふざけんじゃねぇ!」
アレンノはイラついたのかシャンザの机を蹴り倒す。
「あ!お弁当が…!」
「知るかよ!」
そしてそのお弁当を踏みつけた。
「へっ!こんな生ゴミ俺が捨てて…」
「おいクソ野郎…足どけろ。」
「あ?」
「聞こえなかったか?足どけろっつってんだよ」
「はは…昼飯無くなったのがそんなに悲しいかぁ?!だったらこうしてやるよ!」
アレンノはさらにお弁当を踏み付けようとする。
バキッ!
「がっ!!」
アレンノは後ろに吹き飛んだ。
「伯爵家のお坊ちゃんは飯を作る大変さが分からねえみたいだな…。」
「サ、サチトくん!」
「て、てめえ…!」
サチトはアレンノに近づき髪の毛を掴み持ち上げる。
「いいか?食べ物を粗末にすんじゃねえ。増してはシャンザが早起きして作った弁当だ。この世界には食べ物を食べたくても食えない奴だっているんだ。シャンザは眠い目を擦りながら作ってくれた…。…てめえみたいなクズが踏みつけていいものじゃねえんだよ!」
そのままアレンノを殴り飛ばした。
「ふぅ…。」
「サチトくん…。」
「さてと…。」
サチトは腰を曲げ、お弁当を丁寧に拾っていく。
「サ、サチトくん!何して…」
「うまそうなサンドイッチだな…早速いただくよ…。」
「サチトくん?!」
サチトは踏みつけられぐちゃぐちゃになったサンドイッチを口に運ぶ。
「んん…美味いな…。」
「む、無理しなくていいんだよ?!」
「無理なんかしてないよ…。こっちの方が食堂とかで食うよりずっと美味い。」
「…っ…サチトくん…。」
「まあ今回はこんなぐちゃぐちゃになっちまったけど…また作ってきてくれるか?」
「うん…!絶対作る!」
そう言ってシャンザは目元を擦りながら微笑んだ。
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コメント
LLENN_p
↓↓いや突き合っちゃダメよ
付き合わなきゃ
かつあん
サチト優しいぃぃぃ!
シャンザちゃんかわえぇぇぇ!
シャンザちゃんみたいな人が弁当作ってきて欲しいな...
ばけねこ
はよ突き合えばいいのに
イルネス
サチトかっけぇ!シャンザかわえぇ!