異世界転移に間に合わなかったので、転生して最強になろうと思う!

八百森 舞人

大事にするもの程、傷がつく!

    「どこに……は、聞いた方がいいか?」


 怖っ! 和樹がこんな問い方をするときは大体生き埋めとかの脳内イメージが有るときだ。怖っ!


 「普通に教室……だな。生き埋めとかではない。断じてそんな事しないからな!?」


 「? 何故分かった……? ま、さておき。運ぼうにもどうやって運ぶ? ざっと百人はいそうだが……」


 「運ぶのは俺だから心配しなくても良い。和樹はこれで纏めてくれ」


 と、俺はアイテムボックスから長めの縄を数本出す。


 「俺、結構不器用なんだが……レトも手伝ってくれよ?」


 「悪いけどそれは無理っぽい……お楽しみだ」


 俺は耳に入ってきたため息を右から左へ受け流し、強化した視界に集中する。

 人が通れる程まで溶かしきったのだろう。すでに水魔法を使っていた生徒は休憩している。


 ……あ、誰か出てきた。


 「くくっ」


 「どうしたんだよ、なんか怖いぞ……」


 和樹が心配している様な声で訊ねて来る。

 確かに和樹には距離が離れていて、人が何か集まってるのか? 位にしか見えないだろう。俺は一度強化を解き、和樹を手招きする。


 「ちょいと失礼」


 「ん? 何だ」


 俺は和樹の目に手を被せ、魔力操作で手のひらからうまい具合に放出させる。


 「よし、これで良いだろ、見えるか?」


 「む……砂みたいな粒が見える……」


 違うぞ和樹。わざわざ地面を観察させる為に強化した訳じゃ無いからな。後、もう俺から魔力が離れているから……時間制限あるから!


 「違う、こっちだ」


 俺は和樹の頭をつかみ、向こうが見える位まで捻る。ボキッって言ったけど、多分大丈夫だろう。


 「おい! 少しは優しさと加減を身に付けろ。一瞬死ぬかと思った」


 大丈夫なようなので、俺も再度目を強化して確認する。

 ……お! 中から二人出てきた。凄い地団駄を踏んでいる。


 「どうよ和樹、これが俺の実力よ」


 「何しでかしたんだよ、あ、一人倒れた……頭に血が昇って気絶した様だが……ちょっとした衝撃映像だぞこれは……あ、ピントがずれて来た……」


 「ここまでだな。何時こっちまで来るか分からないし、麻痺が解けている筈なのに、動かないこっちも心配だ。早く運ぶ必要があるな……」


 和樹の目から俺の魔力が切れたようだ。俺も強化を解除して、縄で纏める作業を進める。もう半数は麻痺が解けて動ける筈なのに、動かない……動けない様子だ。縄で一人一人繋げながらよく顔や肌を見ると、青白い者がほとんど。体温も下がって来ていた。


 「……おそらく魔力欠乏だな。貧血と同じような症状だ」


 と、和樹が言う。少し驚いた。和樹が前話していたのは王城での訓練の話ばかりだったので、そこまで知識は無いかと思っていた。


 「よく知ってるな……ちっ、ちょっとヤバイか……?」


 数人だが意識が飛びはじめている。貧血及び魔力欠乏のしんどさが分かる俺としては意識が飛んでしまうと再び魔力が戻るまでの倦怠感や苦痛や吐き気など、あまり味わいたくないし、一時的にだが魔法が使えなくなるリスクも知っている。だが、人数が人数だし、片っ端からポーションを飲ませていくのも時間が足りない。せめて俺に範囲回復できるヒール系の魔法が使えたら……。


 「よし! こっちは出来た」


 和樹の方は終わった様で、俺の方もあと一人……よし、終わった。


 「『パワー・フルブースト』!」


 「……っ!?」


 全身に魔力を張り巡らせ、強化するパワーのフルブースト、レジストのフルアーマーは魔力の消費こそ並み程度だが常に放出し続けるし、気力が凄い勢いで削られる。特にパワーはレジストより消耗が激しい。既に防御系の魔法は全解除しているが、教室まで運び終えても倦怠感は大波となって襲うだろう事が確定している。


 「『アース・プロテクト』『ウォーター・バリア』」


 縄を起点にぐったりしている生徒達をアース・プロテクトで球状に網目を走らせ固く固定し、水のクッションをつける。


 いくら重ね、束ねて纏めていると言っても百人居る。直径四、五メートル位はあるだろうか? 通常なら転がすのも一苦労な大きさ、重さだが、全身を強化している俺は軽々と、持ち上げる事が出来る。ある意味魔法による強化の真髄と言えるだろう。純粋な魔力による強化は魔力量によってはクレーターを余裕で生成できるのだから。


 「嘘だろ……」


 通常なら到底不可能な――前述した通り、持ち上げる――事が目の前で起こり、和樹は唖然と……否、呆然と立ち尽くす。


 「うぉぉぉりゃぁぁあ!」


 そして俺は、持ち上げたそれを砲丸投げの様に押し飛ばす。


 俺は和樹の立ち尽くす様子を見るのもそこそこに置き土産代わりの警告をする。


 「和樹……すぐにここから離れた方がいい。あと一分も無い内に、クラス棟から直接ポーションを持ってきた敵の集中砲火を受ける」


 「は……え……な、ちょ、ちょっと待てレ――」


 「じゃあ、お先に。『エア・プロテクト』『バースト』っ!」


 俺は先に飛ばした生徒の治療をするため、今にも倦怠感で気絶するように寝てしまいそうな体を無理やり動かし、返事の帰せず、一瞬で数百メートルを飛んだ。戦っている内に意識せずに深追いしていたらしい。これが相手の作戦なら称賛したい。

 ……が、クラスメイトの半数以上を犠牲に……いや、囮に使うのはあまり好感が持てない。むしろ不快だ。俺がポーションを残していたら今頃、相手は味方ごと俺らを撃っていただろう。そりゃ、囮役にされる側は堪ったものじゃないし、士気も最悪だったのだろう。疲弊もするし、今か今かと怯えるので、戦力としても活躍出来ず、恐怖心やストレスを増幅する負の連載だな。動けなかったのも頷ける。が、精神的な物に留まるのなら良かったが、それが間接的な原因で気絶するのだから、よっぽどだろう。


 俺は入口に引っ掛かり、止まった所へ追い付き、ウォーター・バリアは解除、固定していたアース・プロテクトは通れるように変形させ、一人一人を包む形にする。勿論呼吸出来るように顔は出している。


 すると、後ろから熱を感じる。十中八九和樹が狙われているだけなので、冥福を祈って特に振り返る事もなく、百人を重ねた行列を引きずりながら進む。

 まあ、和樹には鎧がある。鎧の名は『暴食』。魔法を食べる事ができるのを、俺は朝、自らが放ったファイアー・ボール(見た目だけの威力ゼロ)が吸収されたのを目撃している訳で、何らかの制限があるとしても、まあ和樹だから大丈夫だろうと思っている訳だ。

 ……ので、決して見殺しにしたつもりはない。


 「レ、レト君!? その人達は……」


 「ロイルか。説明は順にするから、今はヒールを」


 「分かった……『ライト・ヒール・フルオール』」


 ロイルが使った回復魔法は上位の範囲回復。俺も含まれているようで、少しだが、詰まっていた息が抜けた気がする。

 やはり、この人数じゃあ一発で全回復どころか半分回復出来ればいい方だ。

 ロイルが膝をつく。流石に上位範囲回復はハードらしい。


 「助かる。少し楽になった」


 「う、うん……はぁはぁ……で、でもやっぱり少しきついかな……」


 俺はアイテムボックスから魔力回復ポーションを出し、ロイルに渡す。今ので少しは時間が出来た。俺も回復ポーションと気付け薬を飲む。回復ポーションは効力もだが、味はましにしてあるので、飲めるはずだ。地球では気付け薬と言えば通常は嗅ぐ物なのだが、俺手製の調合で、害のない植物の根から作ってあるので、飲用できる。が、効果の反面、とてつもなく辛い。しかも残る。レミルに渡したのも同じ物だったが、なるほど確かに俯くのも分かる。


 「ありがとう……っ! これ、飲みやす……って大丈夫!?」


 「だ、大……丈夫。」


 水を含んで少しましになったが、辛いのは残っている。だがまぁこれでこそ気付けという物だろう。違ったら嫌だな……。


 少し意識がはっきりした所で、アリスとドラヴィスも駆けつけて来た。


 「ひゃ、レト君!? 大丈夫!?」


 「これは……一体」


 二人とも未だ青白いとまではいかなくとも、血の気のない肌の人が山になっているのを見て、一瞬凍りつく。

 少し回復出来たので、三人に相手クラスの生徒だが、見捨てられず、治療するために連れてきたと話す。


 「なるほど……僕も回復魔法で手伝いたいけど……」


 「駄目だ。ポーションで回復しているとは言え、気力までは癒せないし、こいつらみたく倒れるのが落ちだ。だが、人手は欲しい。ドラヴィス、確かレミルとハイデ姉妹のどっちかが水魔法を扱える筈だ。二人に水魔法で守りを固めるよう言ってくれ。俺、アリス、ロイルは三つの教室に別れて治療。移動させてからポーションを渡す。ドラヴィス達はここで和樹と合流して、キューテも集めて四人で俺らの手伝いを頼みたい。和樹にはこれを渡してくれ」


 「了解だ。すぐさま召集を掛けよう」


 俺はドラヴィスに体力回復ポーションを渡してどこかへ向かったのを確認し、再び力を入れて百人を引きずり、階段を上る。当然と言えば当然なのだが、アリスとロイルを抱えていた時より何倍も重い。が、少しずつ、一段一段上る。


 「レト君……凄い」


 「流石……いや、ここまで運んでこれたんだから驚いてはいられないか……『ライト・ヒール・オール』」


 実は投げましたと言えば二人は更に驚くだろうと思っていたら、ロイルが回復魔法を使った。


 「おいロイル! 駄目だと言っただろ!」


 「いや、僕にはこれぐらいしか出来ないし、気休め程度かも知れないけど、さっきより弱いし、効果も期待できないけど、回復魔法使いとして、僕に出来る精一杯をやりたいんだ!」


 「ロイル……分かった。無理だけはするな……よし、この教室から教室三つに三十数人を運ぶ。縄を切るから一人ずつでも運んでくれ」


 普段使っている階段から一番近い教室ではなく、その隣の教室の前で止まる。普段使っていないので、椅子や机がない教室だ。


 「わかった、頑張るよ!」


 「了解、僕は一つ奥へ運ぼう。アリスちゃんは手前の教室に――」


 「いや、ロイルもアリスと手前から頼む。俺は奥二つに運ぶ」


 多分それが最速だろう。少ししんどいが、頑張り時だ。


 「ぁ、レト君は大丈夫なの?」


 アリスが少し顔を除き混む様に見てくる。ここでしんどい顔をしていればアリスは心配するだろう。俺は出来るだけ笑顔で「大丈夫だ」と言った。


 「ぅん……分かった。無理しちゃ駄目だよ」


 そういって一歩さがる。俺はしゃがみ、ナイフを取り出して縄を切り始める。

 無理しちゃ駄目……か。アリスからしたら俺がロイルを倒れないか心配するのと同じように、心配してくれているのだろうか?


 切り終えた後、俺は三十人を引っ張って階段から四番目の教室へ。縄で繋がってはいるが、全員が仰向けになるように寝かせる。

 同じようにもう一つの教室へも運び、寝かせる。アリスとロイルも終わった様で、額に汗が滲んでいる。


 「次にポーションだ」


 俺は奪った箱入りのポーションを出す。相手生徒が動けない要因は二つ。一つは魔力が無くなりかけているから。もう一つは精神的に追い詰められていたから。

 今できる事は魔力を回復させる事である。……ここで、ドラヴィス、キューテ、マインが合流。和樹は逃げ切れたは良いが、ポーションを飲むと意識を失ったらしい。とりあえずポーションさえ飲んでいたら大丈夫だろう。


 「ポーションは一箱百本。上の段に五十、下に五十だ。全員に飲ませたら一度様子見、気絶している生徒はロイルが治せ。いいか? ロイル」


 「ああ。僕に出来ることなら!」


 よし、今回は暴走していない様だ。


 「念のため、二人一組だが一人は戦闘要員で。憔悴しているとは言え、敵だ。俺とアリス、ロイルとドラヴィス、キューテとマインだ。以上、何かあったら呼べ」


 各々が了解と言い、手に持てるだけのビンを持ち、運ぶ。あっという間に一箱は空になった。アリスはくまさんにも手伝ってもらい、今は各自に水を飲ませてまわっている。意識はそれぞれあるようで、互いに小声だがアリスと会話もしている。


 「おい、レト……」


 廊下から声を掛けられた。勿論和樹さんである。俺はアリスに一声掛けて廊下に出る。


 「大丈夫……じゃないよな……置いてってごめん」


 制服はビリビリになり、生傷が見え、間接部分には特に焼け焦げた穴がある。


 「いや、大丈夫だ。それよりお前も服、背中だけビリビリだぞ?」


 あ……え、許された? ん? それより服って……。

 首を捻り、背中を見ると、小さい切り傷が無数に、なんなら俺も出血してたわ。


 絶対バースト失敗してたじゃん……。いや、納得したわ。後ろ歩いてたアリスとロイルは見えてた訳で、多分それに対しての無理しちゃだめだよだったのだろう。笑顔はやせ我慢と受け取られ、逆効果だったのだろう。


 「マジか……」


 俺が落ち込んでいると、ロイルも一段落したのか廊下に出てきた。


 「それ、気づいてなかったんだ……大丈夫、血はついてるけど、傷はさっき僕がヒールした時に塞がってるから……」


 「ロイル、多分レトは傷じゃなくて服がボロボロだった事に気づいて羞恥に悶えてるんだ」


 「違うわ!」


 最後以外は合っているのに、全然違う……。


 「うーん、替えは先生が持ってるかもだけど、職員室を覗いても居なかったからな……あ、一階の僕の部屋、臨時で医務室にしてるんだけど、救急セットとか包帯とか色々かき集めた中に白衣があったからそれでいいんじゃない? ほら、破れてるのは背中だけだし……」


 「それだ! ロイル部屋って二番目だよな! 取って来る!」


 「い、行ってらっしゃい」


 白衣……いいね! なんかロマンがある。


 階段を飛び下り、半開きになっている扉を開ける。と、すぐそこの棚に白衣が掛けられていたので取る。


 そのまま出て行こうとするが、部屋の中に居た人物と目が合う。

 さて、誰でしょう? ヒント、生徒はレミル、アインを除き、上にいる。二人もドラヴィスが誘導した筈だ。ロイルは先生は職員室には居なかったと言っている。


 以上から推察すると、ロイルが居ない間に侵入した事でフェーン先生ショタコン説が生まれるが、残念ながら……いや、喜ばしい事にフェーン先生では無かった。

 その人物は本来、学園には入れない筈の第三者の筈だ。


 その人物は見知った顔だった。


 「やあ、久し振りだね、レト君。元気そうで何よりだ」


 その人物は……。



 「な……どうしてここに居るんですか……タシューさん」


 俺の先生だった。


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